がんかたうるふ 作家さんと大学生~作家さんの周囲の人々~ 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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瀬戸内現パロ。
作家の毛利さんと通い家政婦である大学生の長曾我部君の日常。
別名アニキが毛利を餌付けにする話。
心なしかナリチカ。

今の時点での簡単な時系列

いっしょにかいもの(5月)→日常(6月)→周囲の人々(7月頭)→ふつうの日(1月某日)


となっています。


書いた人:みっしー



 *****
作家さんと大学生~作家さんと周囲の人々~


~ずんだ白玉アイスクリーム~






 梅雨が終わり、本格的な夏が来る直前の、ある日のこと。


「あー…傘もって無いのに降るとかついてねぇな…」
大学での講義を終えた夕方、元親はいつものようにバイト先である毛利宅を訪れていた。スーパーでの買い物を終えて、歩いていた最中、たまたまタイミングが悪く雨に降られてしまったが、すぐに毛利宅に着くことができたのが不幸中の幸いだろう。幸いかばんも眼帯も衣類もそれほど濡れていないので動くのに支障はなさそうだ。
「帰るころにはあがってればいいんだけどな」
そう1人で呟きながら元親は古びたマンションの4階を目指して階段を上り始めた。今日の買い物は先日毛利と約束したとあるものが入っている。先日のやり取りを思い出して元親の口から溜息が漏れた。



「ずんだもちが食べたい」
どこで仕入れてきた情報だそれ。
「テレビで見たぞ」
あんた意外とテレビ見るよな。あれ、仕事は?
「もちに枝豆を合わせるというのが不思議だが、さぞかし美味であろう…」
おい俺の言うこと無視してる?もしもーし?
「そしてテレビで見たがご家庭でも案外簡単に作れるものらしい」
…まぁ枝豆つぶすだけだから結構簡単につくれるぜ
「そこでだ、我はずんだもちが食べたい。よって貴様が作るが良い!!」
ちょっと待てなんで俺が作るの確定なんだよおかしくねぇか?
「我が作れるはずはなかろう」
…ソーデスネ
「…まぁもちの調達までは難しいと思う故、そこまでは言わぬ。ずんだだけでも構わぬ故に作れ」
ずんだだけってのも食べづらいからなぁ、白玉でなら簡単に作れるぜ
「ではそれを所望する」
わかった。でも今度な。今は材料ないし、夜遅いから店も閉まってる。
「…うぬ…わかった。では次に期待するとしよう」
そうしてくれ



 そう言ったのが二日前の話。二日後の今、元親は通常の食材のほかにずんだ白玉の材料も買い込んで毛利宅にやってきたのだった。
「こんちはー…って客か?」
元親は玄関先に見慣れない靴が置いてあるのに気がついた。
そもそもこの家に来客は極めて少ない。月に数回訪れる担当の黒田を除けば皆無と言ってもいいかもしれない。最も元親が知らない間に誰か来ているという事も考えられるが可能性としては低いだろう。なにやらリビングの方から声も聞こえてくる。珍しいな、と思いつつも足を進め、リビングへと繋がる扉を開けた。



「ギブギブギーブ!!毛利さすがにそれはやめろ!!小生でも無理じゃ!!」
「何をいう黒田。大丈夫だその無駄にでかくて頑丈な図体を生かすのは今しか無かろうて。さぁ、 や る ぞ 」



 雇い主が自動掃除機(名前はサンデー)を両手に抱え、床に座る担当編集に殴りかかろうとしていました。
 なにこれ事件現場一歩手前?



「あんたらなにしてんのおおおおおおおお!?」
絶叫する元親の声でようやくその存在に気付いたらしい毛利は、くるりと首だけを動かして振り向くとこう言った。
「長曾我部か。うむ、検証だ」
「青少年んんん!!止めてくれえ!!この男本気でやる気だぞ!?」
冷静な毛利とは対照的に黒田は慌てふためき大変な事になっている。
「黒田、貴様が言ったのだろう?そんなもんが凶器になるわけ無い、と。責任持ってサンデーの一撃を食らうが良い。大丈夫だ、凶器には『なるわけない』と言ったのは貴様だ」
「常識的に考えてそんなもん凶器にするのおかしいだろ!?小生間違ってるか!?」
止める黒田も必死だが、何せ上から殴りかかろうとする毛利の勢いが半端ではない。体格では遙かに自身を下回っている毛利の一撃を防ぐので精一杯だ。


「うぬ、貴様が見誤ったのは毛利への助言の仕方よのう」
そこでようやく元親は見たことのない人物の存在に気がつく。
今では珍しい着物で全身を飾った不思議な人間。目が何とも特徴的な人物はおよそ三十代ぐらいだろうか。会ったことはないはずだ。多分。じっと見ている元親に気がついたのか、その男も視線を元親に移す。
「ほお…主が、毛利の新しい家政婦か」
改めてその視線に晒されるとやはりその目からは何とも言えない迫力がにじみ出ている。低い、掠れた声で尋ねられると、不思議と萎縮してしまう。
「へっ…は、はい。長曽我部元親です。」
その迫力に押されるまま、元親は名も知らぬ客にお辞儀をして挨拶をする。
緊張で固くなっている元親の様子に気がついたのか、見知らぬ客はフォフォと何とも言えぬ笑みを浮かべた。
「そう畏まらんでも取って食いやせぬわ。我は大谷、大谷吉継。毛利の友人で黒田の上司じゃよ。」
「へ…?毛利の友達、ですか?」
今まさに担当編集を自動掃除機で殴りそうになっている男の友達で、
うっかり失言が原因で、自動掃除機で殴られそうになっている男の上司?
「…それは…なんというか…大変っすね」



主に人間関係的な意味で。



そう思った元親の意図が分かったのか、大谷はまたフォフォと特徴的な笑いが浮かべる。
「そうでもない。黒田もあれで余計な一言を言わねば良いものをのう。なまじ目利きが良いだけに気になるのだろう。まぁそれで己の首を締めていれば世話ないわ。まぁ未だに毛利への助言の仕方を心得ていないという時点でまっこと愚か者よ。」
「はぁ…」
なんだろう、この物言いもの凄くどこかで聞いたことあるなぁ。
そんなことを考えていると攻防を繰り返していた黒田から声がかかる。
「そこの2人ー!?呑気に話してないで止めてくれないかー!?小生もう限界だああああ!!!」
「黙れ黒田。己の理論は己の体を張って実証しろ。」
その細身の体のどこに力が秘められているのか、体格の良さでは明らかに圧倒している黒田を軽々いなす毛利に対して黒田はいよいよ根負けしそうになっている。
なんだかとても可哀想になってきた元親は毛利に向かって声をかける。
「おーい毛利ー。サンデーぶっ壊したら、ずんだ作ってやらねーぞ」



それはまさに、鶴の一声だった。



「…それは困る」
言うが早いが毛利は振り上げていたサンデーを床に下ろす。そして黒田に対し、チラリと横目で見つめるとこう言った
「命拾いしたな…貴様」
「いやそもそも悪いの小生か!?」
違うだろ!?と叫ぶ黒田だったが、毛利は既に聞く耳を持たないようだった。くるりと向きを変えて元親の所にまでやってくる。
「…ずんだは今日のおやつになるのか」
「ん?そうだな。メシの後か、まぁアンタ食いたいなら今から作って喰ってもいいけどどうする?」
「今食べる」
「りょーかい」
そんないつものやりとりをする2人を大谷は興味深げに見やる。
「ほほお…そなたは中々に毛利の扱いを心得ておるのう」
「いや、単にメシとおやつ作ってるだけですよ?」
「大谷、余計な事は言うな」
「…まっこと、面白いものよのう」
同時に返答した2人を見て、大谷は非常に楽しそうに、また笑った。







「大谷さんと毛利は、ずっと前からの友達なんすか?」
元親はキッチンにて枝豆を茹で、ずんだの準備をしながらリビングにいる大谷に話かける。
おやつが出来るまでの間、毛利と黒田は本来の予定であった打ち合わせを行う事にして退室した。打ち合わせといえども、魔窟の仕事部屋に人を入れるのかと思ったら黒田を廊下に待機させていた。元親でも通るのがきついあの魔窟を黒田は以前通ろうとして資料の山を崩壊させたとの逸話も聞いたことがある。そのような理由で、黒田は担当でありながら仕事部屋への出入りは禁止されているのだった。
廊下に座る担当とドア越しで打ち合わせする作家。
特に仲が悪い訳では無い。この2人においては平常運転じゃ、とは大谷の談である。
日頃はリビングで行う事もあるらしいが客人である大谷と作業中の元親に気を遣って場を変えたらしい。
「うちあわせ中だったんだろ?何なら仕事終わるまで俺、風呂掃除してるぜ」
ずんだは後でも作れるし、と元親が伝えたところ次のような返答があった。
「掃除は良い。我は早くずんだが喰いたい。即ち、そなたがここで作業した方がよい。早う作れ。」
そのような理由で元親の案は却下されていた。
「大谷、くれぐれも長曽我部に余計な事は言うなよ」
そう念を押しながら毛利は去っていった。その表情はいつになく、眉間に皺を寄せた厳しいものだった。
最も大谷は「おお怖い怖い」とおどけてみせていただけだったが。

 というわけで、現在のリビングには元親が入れた茶をすする大谷とキッチンで調理中の元親しかいないのだった。
「そうさなぁ、大学のころからじゃから軽く10年以上にはなろう。」
「毛利が大学生…」
どうしよう、全くもって想像出来ない。
目の前にいる大谷の学生時代も想像出来ないが、毛利もまず想像出来ない。サークル活動とかしていたのだろうか、ますます想像出来ない。
「ひゃひゃひゃ、ぬしは本当に隠し事が出来ぬ男のようじゃのう」
混沌と化した元親の考えを読んだかのようなタイミングで大谷は、愉快愉快と笑い出す。
「まぁ、これは戯言と思って聞き流してくれても構わぬが…あれは昔から変わらん。己の世界を既に築き上げていたからのう。」
「へー」
「…最も我が毛利と過ごした期間は短いので推測の部分も大きい。あやつは我の3年は先輩だったからな。」
「え…?」
今、一番気になる言葉を聞いた気がする。
目の前の、大谷よりも、年上。
「えええええええ!?って、じゃあ毛利って今いくつなんですか!?」
「なんだ、おぬし毛利の年を知らぬのか…まぁ当時から妖怪だのなんだの言われておったがな」
「妖怪ってなんですかそれ!?」
思わず調理の手を止め、元親は大谷に思わず叫ぶ。大谷はそれに対して楽しげに答えた。
「あやつはな…昔からほとんど顔が変わっておらぬのよ。若く見えるというのは時に不幸よの。いや愉快愉快。」
そう言って大田には実に楽しげに笑う。
人の不幸こそ至福よのう、とうっとりした様子で呟くこの人こそヤバイ人なのではないかと元親は考え始めた。まぁ、あの毛利の友人を自称する人なのだから、一筋縄では行かない曲者なのは言うまでないのだろう。
「はぁ…」
調理中にも関わらず、元親は思いっきりうなだれる。
そうか、毛利のあの若々しさは昔からだったのか。成長期に体格と共に風貌も激変してしまった元親には想像も付かないし、逆にうらやましいとは思うが、本人にとっては大変なのかもしれない。
「…まあ昔のあやつは孤高の存在、とでも言うのかのう。成績は良いし、顔も整っておるし、後輩からしたら常に話題の主じゃった。
ただし周囲に誰も人を置かなかったが。我はたまたま師事していた教授が毛利と同じでなぁ、我ともう1人だけだわな。あやつと関わっていたのは。」
ひとしきり笑い終えた大谷はそう話した後、煎茶をすする。
「へぇ…」
 意外とは思わなかった。
毛利は今でも極力そばに人を置かない。
作家としての業務以外にもマネジメント含めて全部自分でやれているから問題はないのかもしれない。これだけすごい有様になる家なのだからいっそ住み込み家政婦でも雇ったらどうか、と尋ねたところ自分の領域にそこまで踏み込まれるのは好かぬ、と返された。なので彼の中では通い家政婦がギリギリのラインらしい。かつ余計なことを詮索しないで業務をきちんと行ってくれること、それが最初に会ったときに毛利が告げた雇用条件であった。
 3月末に会って、3ヶ月余りが経った今でも解雇されないということは、元親は最低限の業務はこなせていると思っていいのだろうか、とぼんやり考えていた。



「まぁ、このぐらいにしておくか。あやつに怒られるのは怖いからのう…ひゃひゃひゃ」
先程と同じように、全く怖がるそぶりを見せず大谷は笑う。そして一度元親に向き直るとこう言った。
「ああ、ちなみに年齢は我は言わぬ。本人から聞くと良い。」
「わかりました…」
知らなくても良い毛利の秘密を知ってしまった気がして元親に一気に疲れが押し寄せた。
「長曾我部は、毛利が何を書いておるかは知らぬのか?」
今度は逆に大谷から元親に問いかけられる。
ずんだの為に枝豆をさやから取り出し、表面の薄皮を剥きながら元親は答える。
「…知らないっすね。一番最初に会った時に小説家って聞いただけだし、どんな名前で書いてるのかも俺は知らないです。」
最初に会った時に「聞くな」と言われたきり、元親は尋ねていなかった。本人が言いたくない事を無理に聞くこともないだろうと判断したからだ。
「大谷さんから見て、あいつの書く話ってどんなのなんですか?」
元親の問いかけに対し、大谷は持っていた湯飲みを置くと顎に手をかけ、ふむと呟く。
「あやつの書いているものは多彩でな、一言で言い切るのは困難よのう。
強いて言うなれば先ほど言ったとおりの『完璧な世界』かのう。全てが緻密で計算され尽くした作品世界。」
だが、とそこで大谷は言葉を句切る。
「最近は少し変わってきたかのう」
「?作風が…ですか?」
「そうだ。あやつ…毛利の作風が、一部の隙もない完璧な世界が、少しずつ変わっているように我は思う。
…毛利本人は気付いているかわからんが、それはあやつにとっては喜ばしい変化だと思う。」
「へぇ…」
完璧な世界。
そう言われても元親が知る毛利は腐海の森で暮らす駄目人間としての姿が印象的なのでピンとは来ない。
頭は良いし弁も立つが、肝心な所でおかしな言動をする変わり者。
でも決して、嫌な人間ではない。
それが元親の中での毛利元就という男への印象だった。

「…ぬしのおかげかもしれぬがな」
「は?」
薄皮から出した枝豆をすり鉢で潰し、砂糖、塩で簡単に味付けをして水でのばす。そして白玉の準備を始めていた元親に再び大谷は声をかけた。
「毛利の作風よ。…我の気のせいでなければ、春頃からあやつの文章は少しずつ変わってきている。」
「…俺が毛利に何かを出来たとは思えませんけど」
やったことは家事全般、特に料理とお菓子作りだけだ。おまけに学校との兼ね合いで毎日来られる訳では無い。
そんな自分に何が出来たのか、と元親は首を傾げる。
「ぬしは、人の感情には聡いのに、その辺りはまっことにぶにぶのおおにぶの鈍感男よのう…だから良かったのかも知れぬが。我は部外者故、この辺でやめておこう。馬に蹴られるのも勘弁願いたいのでな」
そう言って笑う大谷の顔はとても穏やかだった。
「はぁ」
最も元親は鈍感と言われたことは理解出来たが、何故大谷がそのような顔をしているのかまでは分からなかったのだが。


元親は残りの作業に手を付ける。
白玉粉に水を適量入れて練った生地を沸騰したお湯に入れてゆであげ、ゆであがったものを氷水にさらし、冷めたら水を切っておいておく。
これでずんだと白玉の準備はできた。
これだけで食べても良いのだが、どうせなのでもう一つ加えることにした。
「…確か、買い置きのがあったよな…これだ」
冷凍庫にあったファミリーパックのバニラアイスを器に盛りつける。大き目のスプーンで適当によそってしまう。
さらにその上にずんだ餡と白玉を載せれば完成だ。
「よし、完成。」
あとは、毛利と黒田を呼べば良いだろう。
ファミリーパックのアイスに関しては、今度買い物に行った際に買い足ししよう。
元親はそう決めながら調理を終えた。





「ずんだ…ずんだ…我のずんだはどこだ…!!」
「…あんた、それよそでやるなよ…人間として何か疑われそうだからな!!」
声をかけると毛利と黒田はすぐにやってきた。どうやら打ち合わせも終わったところだったらしい。ずんだの「ずん」と伝えたところで仕事部屋の扉が開き、外にいた黒田に直撃しかけるといった事態が起こった他は平和だっただろう。辛うじてかわした黒田は「直撃しなかった…小生にも運が向いてきたか…!?」と喜んでいたのを元親は見なかったことにした。
大人というものは元親が思っている以上に大変な生活を強いられているらしい。
そして、リビングにて待っていた大谷を加えて4人で甘味を囲むことになった。

「はい。お待ちかねのずんだ白玉アイス」
「…これが…ずんだか…」
 真っ白なバニラアイスの上につやのある白玉とエメラルドグリーンが美しいずんだ餡が載せられている。
「本当に緑色なのだな」
「まぁ枝豆だしな。でも綺麗だろ」
「うぬ」
そう話しながら、毛利はスプーンで一さじすくい、口に運んだ。
そして、例によって『カッ』という擬音が付きそうな勢いでその瞳を見開いた。
「うぉ!!こわっ!!」
「…主がそこまで目を見開くのは珍しいのう」
既に見慣れてしまった元親とは対象的に体全体で驚いた黒田と、ぽかんとした表情を見せる大谷だがその後の毛利の様子を見て更に目を瞬かせる事になる。
「…なんだこれは…あまじょっぱいずんだの餡とシンプルなバニラならではの見事な調和!!…それに加えてこの白玉の触感の見事なこと…美味なり」
心なしかうっとりとした様子まで見せる毛利を前に黒田と大谷は思わず言葉を失う。

―え、これ本当に小生の担当?え、本当に?
―我の友人甘党なのは知ってたけどここまでとは思わなんだー

目の前の二人の困惑が目に見て取れる元親は苦笑する。
「…小豆とは違いさっぱりした甘さなのもまた良し…あずきはあずきで良いがずんだも良し…」
そんな困惑など知ってか知らずか毛利はひたすらにずんだ白玉アイスへの感想を述べている。やはり毛利にとって「甘いもの」への情熱は規格外のようだ。
「本当はもちで包んだり、おはぎにのせて食べるんだぜ。まぁ今日は暑かったから白玉にしたけどな」
元親の解説に毛利は頷き、納得した様子を見せる。
「もち…!!ずんだもちというやつだな…もちつき機を買ったらずんだもち食べ放題…」
「それはやめろ。というか無駄使いすんなよ!!」
またサンデー並みの買い物をされては敵わないと判断した元親は必死に声をかける。毛利が無駄に金を持っているだけに大人買いされると厄介だという事は元親自身の経験からよく理解していたからだ。
「…しかし、ずんだはもちだけと思っていたが、かような食べ方もあるとはのう…まっこと意外なり」
「甘いもんはあまり食わないが、こういうのは良いねぇ」
毛利の衝撃から立ち直ったらしい二人がおやつを食べ始める。
いい年したおっさん二人が並んで甘味を食べるというのもシュールな絵面だ。
「口に合わなかったらすみません。俺、お菓子作りなんて本格的に誰かに習ったわけじゃないんで、結構いい加減なんですよ」
すでに平らげ、ジト目で元親を見つめる毛利に元親は自分が食べ残した分を分け与えながら二人に伝える。
ちなみに食べ残した分を分けているのは、元親自身があまり甘いものを食べないのを見かねた毛利が「残っているのを食わないのならば我によこせ」と言った結果である。作った責任上味を確認したいが、それほど食べられない元親にとっては願ったりの申し出であり毛利にとっては多量に食べられる良い機会というわけだ。
「え!!?習ってないで作れるのか…」
「家庭のおやつというものじゃな。これはこれで良い物よ。長曾我部は学生と聞いたが、実家で作ったりしておったのか?」
衝撃を受けたのかへこむ黒田とは対照的に大谷はふむ、と頷きながら元親に問う。
「ああ。俺んちって、親がずっと共働きだったんで家のことやってたんですよ。あと、年が離れた妹がいたから面倒見たり…おやつは主に妹に作ってやって覚えました。」
高校生になってからはそれに後輩×2が加わったのだがそこまでは言わないでおいた。
元親の答えに納得したように大谷は頷き、そして言った。
「なるほどなぁ…毛利よ、主は良い家政婦を捕まえたな。」
「…ふん…」
未だにずんだアイスを頬張る毛利を見ながら大谷は実に楽しげに笑っていた。



「さてさすがにそろそろお暇するか、長曾我部よ、世話になったな」
「小生も戻るとしますかね…」
おやつを食べ終え大谷と黒田が帰る準備を始める。
毛利はようやくアイスを食べ終え、お茶を飲み干したところだった。
「黒田、再三言うが、われは自動掃除機の動きを参考にしトリックを作れないかと思ったのよ。それを貴様は掃除機自体が凶器だと勘違いしおって…」
「わかったわかった!!それは小生が確かに悪かったよ!!」
 元親が出くわした掃除機殺人事件未遂は、ネタ出しをしていたところ、「そんなもん凶器になる訳ないだろ?」という黒田の発言により、自らのアイディアを全否定された毛利がブチ切れて殴りかかったのがきっかけだったらしい。そして大谷はそれを止めずに見ていた、とそれが元親が後から聞いた話だった。そして自分は、殴りかかられないように気をつけようと心に誓ったのだった。
「なんか大したこと出来なくてすみません」
「なに、中々に有意義だったわ…そういえば、主と会ったのも何かの縁よ。我の名刺だ。受け取れ」
「あ、どうも…って……え……?」
 玄関から出る間際の大谷から元親は一枚の名刺を受け取る。すると受け取った名刺を見た途端に元親の表情が固まり、そしてギギギという擬音を立てそうなぐらい不自然な動きをしながら大谷に尋ねる。
「…大谷さん、この名刺気のせいじゃなければ『よっしー』って書いてあるんですけど…」
「ああ、そちらは趣味用じゃ。本来のはほれ、こっちじゃ。せっかくだから趣味用もやろう」
『彫金工房大谷 よっしー』と愛らしい字で書かれた名刺を見てどん引きした元親だが、もう一枚の名刺を見てさらに愕然とした。
「…あの、これ社長って書いてあるんですけど…」
「長曾我部、こいつはこう見えて出版社の社長だ」
「そうじゃ」
なにをいまさら、といわんばかりな毛利と大谷の態度に元親は思わず頭を抱える。そして今度は黒田がボソっと呟いた。
「小生の勤める会社の社長でありながら、現場に顔を出すことが多い変わりもんだよ、本当に」
「黒田よ、また直属の上司になってやろうか?なに、たやすきことよ」
「全力で断るよ!!あんたの部下だった頃が小生にとっては一番の暗黒期だ!!」
呟きはばっちり大谷に聞かれていたようでヒヒヒと笑いながら大谷が黒田に詰め寄っている。
黒田の上司というか上司過ぎるんじゃないだろうか。
今までのフリーダムな振る舞いから大谷が経営し黒田が勤務し毛利の本を発行するという出版社が無事にやっていけるのか他人事ながら不安になった元親だった。



「大谷さんって会社の社長なんだな…その割には車自分で運転してたけど」
 帰る二人を見送り、元親と毛利は家に戻る。食べ足りないと訴える毛利に本格的な夕食を作るためと、家の各所の掃除を行うためだ。
「ああ、あれはあやつの趣味だからな。止める人間もおらぬ故に乗り回しておるのよ。言っておくが安易に乗るなよ。あれの運転は非常に荒い。」
「だから黒田さん、すんげー顔してたのか…」
折角だから我の車に乗っていけ、と言われた瞬間の黒田に浮かんだ絶望の表情を元親は忘れない。結局なすすべもないまま引きずられ乗り込んで行った黒田の無事を祈るほか無い。
「そういや大谷さんから二枚もらった名刺のうち…趣味用って…なんなんだろう…」
呟いた元親の問いすぐ答えたのは毛利だった。
「彫金と皮細工だ。」
「…は?大谷さんが作るのか?」
元親の疑問系に答えるかのように毛利は頷く。
「大谷は昔から手先が器用でな、細かい細工品を作ることを趣味としているのだ。大した金にはならぬが、多忙なあやつにとっては数少ない息抜きらしくてな。即売会にも行っているらしい」
「はぁ…ってそんなに忙しい人なのにあんなに毛利んちにいて大丈夫なのか?」
長々休憩してお菓子まで食べていったが予定に支障はないのだろうか。
「今日はたまたまだ。他社と打ち合わせの予定が、先方の都合でキャンセルになったらしくてな。」
 数ヶ月に一度、ごくたまにしか来ない割に高確率で黒田と出くわすらしい。
その場合は「何故じゃあああああ」の叫びが家中にこだまする事態となり非常に煩わしい、と毛利は眉間に皺を寄せて答える。
「あの和装って」
「あいつは学生時代からあの格好だ。…袴だったこともあるがな。本人は『趣味じゃ』と言っていたが」
学生時代から和装って凄い目立ったんだろうなぁ、とぼんやり元親は考える。最も、目の前の男も別な意味で目立っていたらしいが。さぞかし騒がれた学生時代だったんだろうなぁ、と思いながら元親は今日の分の仕事をこなすことにした。






「あ、雨止んだな」
 夕食も含めて一通りの仕事を終わらせ、毛利宅を後にした元親は歩いて駅に向かっていた。
「あー…梅雨が開けると、やっぱりいいなぁ…」
雨が上がった直後なのか、夜風は涼しさを多分に含んでいた。思いっきり両手を挙げて体全体を伸ばす。疲れた体にはそれがちょうど心地よい。
「ん…?」
そうしているうちに、元親はリュックに入れていた自身の携帯電話に着信があることに気がつき、急いで手に取る。よく見ると複数着信があったようだが、仕事中だった元親は全く気がつかなかったようだ。
「鶴…?何かあったのか?」
着信は紛れもなく妹のキッズ用携帯電話からであり、何かあったかと慌てて電話を取る。
「もしもし、何かあったか?」
『あー!!おにいちゃんですね!!ずっと出ないからお留守かと思ってました!!』
「…んー…留守と言えば留守…というか鶴…前にも言ったけど携帯はあんまり留守とか関係ねぇからな」
電話口から聞こえる妹の声は以前と変わらぬ明るさを感じさせ、緊迫した状況では無いと思えることに元親は安堵する。
『そうですかぁ?わかりました。今度からきをつけます!!あ、あのですね、おにいちゃん。今年の誕生日は何が欲しいですか?』
「誕生日?」
そうだ、そういえば7月は元親の誕生日だ。
「…別に…欲しいもんは特にねぇな…というか鶴、お前わざわざそのために電話したのか?」
『はい!!おとうさんとおかあさんにもきいたんですけど、やっぱりおにいちゃんにきいたほうが良いかとおもったので!!』
ハキハキと無邪気に答える妹は『本当に無いんですかー?』と再び聞いてくる。
「こっちからは特にねぇな…まぁ食いもんだったら嬉しいけど。」
『むー…わかりました。じゃあおにいちゃんの好きなもの、どーんとおくってもらいますね!!それがことしのプレゼントです!!』
明確な希望が聞かれなかったためか妹は少し不服そうな様子が感じられたが、すぐに気を取り直し、今年のプレゼントをサクサク決めてしまった。
「ああ、頼んだ。わざわざ悪かったな、鶴。」
『ちがいますよ、おにいちゃん。こういうときはありがとうですよ!!おにいちゃんがおしえてくれたんですよ!!』
「そうだったな…ありがとう、鶴姫」
『どういたしまして。それじゃわたし、明日も学校なのでおやすみなさいです。』
「おやすみ、遅刻するなよ」
『はーい』
最後まで賑やかなまま妹と電話を終えた。
電話越しでこのエネルギーなのだから直接会えばその勢いに圧倒されることは間違いない。
「3ヶ月…か」
3月に地元を離れてから妹をはじめとした家族とは会っていない。
懐かしくないと言えば嘘になるが、それ以上に新しい環境に慣れることに必死だった。
「誕生日なんて、俺は忘れててもあいつは覚えてるんだもんなぁ…」
この年になっても祝ってもらうのは気恥ずかしいが、覚えていてもらえた嬉しさもある。
夏休みは少しでも実家に帰ろうか、そんな事を考えながら元親は帰路に付いていた。



 一方その頃、毛利宅では、また別な攻防が行われていた。
「…貴様、余計なことは言わなかっただろうな…?」
『おおこわやこわや、別に安心しろ。主が男女問わず弄び、もって数日で捨てていたことなどは一切話しておらんから』
「…大谷、貴様…」
『話しておらぬと言うておろう、相変わらず主は短気じゃのう。』
「貴様がふざけたことをぬかすからだ」
『…しかしあの長宗我部とやらは、まっこと不思議な男よのう。聞けば三成もあやつに懐いたと聞く。』
「…誰だそれは?」
『竹中の年の離れた従兄弟殿よ。同じ高校の先輩と後輩で、あの三成がまるでひよこのように後を着いていたと竹中からは聞いている。』
「竹中の従兄弟だと?会ったこともないわ」
『じゃろうな。主は基本的に引きこもりじゃろうし。我は何度か会ったことがある。』
「引きこもりは余計だ、大谷」
『フォフォフォ…冗談よ、冗談。それはさておき、主の幸福と主の不幸は紙一重。我はそれを見守らせてもらうぞ、毛利』
「…貴様、何を訳のわからない事を言っている」
『気付かなければ、それもまた良し。それはそれで楽しいものよ。』
ではな、と大谷は一方的に電話を切り、会話は終わった。





数日後、一人暮らしでは消費しきれないであろう食品を背負った元親が毛利宅を訪れ、また一悶着あるのだが、それはまた、別な話である。










○大谷さん初登場。
はんべさん含めて大学時代の先輩後輩トリオです。
今回の話を書く際のメモに書いてあったのは
「ルンバ殺人事件」
「ずんだ」
「ファンシーよっしー」
「フラグ」
だけでした。
私何が書きたかったの…。

次回はちょっと番外編で大学生の高校時代でも書こうかと思います。
読んで下さってありがとうございました。
PR
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
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