がんかたうるふ 月孤譚5章その2 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ようやく出せました。



 *****
「そうか遠ざかったか………すまぬな忠勝、もう一働きしてくれ」
「……………ッ!」
「わかったわかった、三成にはあまりちょっかいをかけぬようにする。儂もまだ命は惜しい、三成になます斬りになれぬ程度にしておくさ……儂が勝てば触っても怒れぬようになるだろうしの」
「………………………!!!!」
「いくら儂でもそこまでは……しないようにするがの。心配するな、三成を泣かすような真似はせぬから。昔から忠勝は三成びいきだな……」
「………………………………」
「そうだな、三成から学ぶことは多くある。出来ればずっと三成を見ていたいな、すぐ側で………そろそろ三成が起きる頃か…………忠勝、儂は戻るぞ。もしもの場合は……

 儂の名の下に、全力を持って止めてくれ。

 そのために何をしても構わぬ」
「………………………………」
「お前には酷な願いになるが、儂が直接出るわけにも行かぬ。信じられるのはお前しかいないのだ、儂はもう三成に悲しい思いはさせたくない」
「……………………! ………………ッ!!!!」
「忠勝は本当に優しいのだな……儂のことは心配するな、三成がいれば………三成さえいてくれれば儂は何にでも耐えてみせるさ」










 一歩部屋から外に出れば、白い靄に全てが飲み込まれているように見えるのだろう。何とか手を伸ばして襖を開ければ、吹き込んできた凍り付くような風と真っ白に染め上げられた奥州の初秋の風景に日毎驚かされる。
 もう少し日が過ぎれば木々の全てが白く凍り付き、純白の森を見ることが出来ると政宗は教えてくれた。大地は雪に覆われ白く染まり、樹木は白く凍り付き。春までの間それに耐え続ける奥州の民は、どれだけ我慢強いのだろう。
 何故か布団に潜り込んできている家康に全力で抱きすくめられ、彼と同じ布団の中でぬくもりを共有していても寒いというのに。
「家康、起きろ! 私は貴様を暖めるために存在しているわけではない!」
 ただし、家康を歓迎しているわけでもない。
 伊達家に家康が泊まっていくと、朝には何故か三成の布団の中にいるのがこの頃の常。一人で寝ていると寒いだの、寂しいだの色々言っているが、結局は肌を寄せていたいのだ、この馬鹿者は。
 そうでなければ、いつもの格好で布団に入ってくるわけがない。こんな朝早くから何をしてきたか知らないが、せめて寝間着に着替えて入ってくれば気がつかないものを。
 一仕事してきたのだ、この男は。
「起きたか三成! 今日は寒いな、奥州は寒いと聞いていたがまさかこれほどとは」
「そんなことはどうでもいい! さっさと私の布団から出て行け!」
「一人で寝ていると寒くてな、三成は暖かいからちょうどいい」
「嘘をつくな、私より貴様の方が暖かいではないか」
「そうか? 儂は三成に体を寄せているのが一番心地よいが」
「これは体を寄せるというものではない! さっさと離れろ!」
 自分を抱きしめて離さない家康の体からわずかに香るのは、何かが焦げた臭いだろうか。火薬を燃やしたのとは明らかに違う匂いに顔をしかめはするが、それを家康に気づかれぬように彼の腕になされるがままに力を抜く。
 そんな自分に家康も気がついているのだろう。頭を肩に押しつけ、互いの表情が見えぬようにしてから、わざと明るくふるまうのだ。
 急に布団に潜り込んでくるようになったのは松永が去ってから、そして寝間着ではなくいつもの服で現れたのは今日が初めて。何かあったのだろうが、それを一応虜囚の身である三成に言うわけがない。
 暗さと悩みを無理に押し隠そうとする家康の痛みと苦しみは、程度は違えど三成にも突き刺さっていた。助けを求める声はなく、憤りの叫びもなく。今朝この山を覆った霜のように、三成の心に静かに降り積もっていくのだ。
 苦しみや悲しみはため込む物でも抱え込む物でもない。吐き出し、呪い、そして思う存分嘆けばいいのだ。
 政宗に言葉で打ちのめされたあの日、三成が一晩中嘆いていたように。
 あれをきっかけに、遅い歩みではあるが三成は徐々に心の整理が出来るようになっていた。大切な人を失った悲しみ、この世に一人取り残された事への絶望。その全てを短くも長いこの時間が包み込み、そして徐々に癒していっている。
 家康が心中に何をため込んでいるかわからないが、誰かが彼の心の重みを取り除いてやれれば。そうすれば家康の今後の道行きも少しは楽になるだろうに。
 そう思った瞬間に、今の自分の状況と立場をふと思い出した。
「何故私が貴様のことを考えねばならぬのだっ! 貴様は秀吉様を殺した仇!」
「いきなり何を言い出すんだ……驚いたではないか」
「いいか、私は貴様のことなど何も気にしてなどいない! 何か思う所があるのなら、私以外の人間に言うことだな。それと、私の布団に入ってくる時はせめて寝間着を着てこい!」
「…………三成」
「なんだ?」
「儂のことを……心配しておるのか?」
 肩に押しつけられていた顔を無理矢理上げると、そこにあったのは初めて見た家康のぽかんとした顔。間の抜けた狸のようなその顔を間近で眺めながら、三成は一瞬の隙を突いた家康の腕から抜け出すことに成功していた。
 布団から転がり出ると、一気に寒さが全身を包み込む。
「…………寒いな………」
 肌を舐めるというよりは染みこんでいくといった方がいい冷気から逃げるように部屋の隅へ移動し、そこに積んであった着替え用の衣類に手を伸ばす。軽くて暖かい毛織物の長羽織は先日松永が贈ってくれたもの。何が面白くて自分に色々と贈り物をするのかはわからないが、もう何も持っていない自分から奪える物などないだろうに。
 いや、一つだけ。
 家康は今日あれが届くと言っていた。
 もう自分の手には戻ってこないだろうと思っていた、宝物の一つ。秀吉を守れなかった自分には持っている資格がない、そう考え佐和山の城に隠してきたのだが。
 もう一度手にとっていいのだろうか、そんな迷いが未だに胸の内にあるのは事実。こんな状況に甘んじている自分を秀吉はどう思うだろう、ましてや敵である家康と同じ布団で(認めてはいないとはいえ)眠っているなど。
「……………秀吉様…………」
 敬愛する主君の名を呼びながら、夜着を肩からするりと落とす。
 手早く全ての布を体から取り払い、寒さに耐えながら政宗のお下がりである着物と袴を身に纏っていると、
「家康………腹でも痛いのか……?」
「いや、少し刺激が……な。三成……もう少しゆっくり着替えてもらえるとありがたいのだが………」
「断る」
 布団の中で体をくの字に曲げてごろごろと転がる家康を一度睨み付け。
 今日戻ってくるらしい『それ』に思いをはせながら、三成は悶え続ける家康に見られないように手早く、それはもう手早く着替えを終わらせた。









「雑賀………孫一…………?」
「久しぶりだな、石田」
 まだ前屈みのまま歩き続ける家康を引きずって、朝食の場となっている政宗の私室へ赴くと、普段とは違うことがいくつかあった。

 一つは客人が二人、自分たちよりも先に食事を行っていること。
 もう一つはその客人の脇に、自分が求めてやまなかった物が置かれていたこと。

 自分たちが入ってきた瞬間に、見事な箸使いで食事を行っていた小十郎の厳しい目線がこちらに飛んでくる。
 朝から事を荒立てるのは禁止。
 その目に含まれた意志を読み取り、豊かな髪を時折耳にかけながら潮汁をすすっている孫一の隣に腰を下ろす。政宗の悪戯か小十郎の用意した試練なのか、三成の使っている箸や椀は彼女の隣の膳に置かれていたのだ。
 ニヤニヤと笑っている政宗に噛みついてやりたい衝動を抑えつつ、こちらを全く気にする様子のない女に声をかける。
「何をしに来た………秀吉様を裏切った………それを私が忘れたと思っているのか、雑賀孫一…………」
「我らは豊臣を裏切ってはいない……何度も言っているが、我らを動かすのは金と契約。契約が切れた以上、豊臣に協力する義理はない」
「貴様には秀吉様のご威光がわからんのか?」
「ご威光だの権力だの……そんなものより金だ。金と我らと契約するにふさわしい力、それを示したからこそ、その男についた。そしてその男は我らとの約定を守った、それだけのことだ」
「…………………………」
 色鮮やかな着物でも着ていれば、蝶や花も逃げ出す美女として求婚者が列をなすだろうに。そのしなやかで美しい体には火薬の匂いが染みつき、髪には飾りの一つも存在しない。
 それでも彼女は美しかった。
 荒々しさと女としての繊細な美しさ、その二つが鮮やかな美貌を更に際立たせているかのようだった。男だらけの室内で黙々と食事を行っているだけでも、周囲を華やがせているような気すらしてしまう。
「それにしてもここは冷える……伊達家は館を補修する金もないのか?」
 口を開けば、無自覚な悪口雑言しか出てこないのが玉に瑕だが。
 ふるふると震える小十郎を政宗が何とかなだめようとしている中、政宗の隣に座っていたもう一人の客人がようやく口を開いた。孫一と三成の会話を聞きながら、まるで孫か何かを見るような暖かな視線を向けてきたこの男。
「久しぶりだな……石田三成」
「貴様…………誰だ?」
 果たして、誰だっただろうか?
 南国の鳥のような派手な衣服と、傍らに置かれた厚手の毛皮。そして、三成が家康との勝負の果てに取り戻した大切な物を毛皮の隣に置き。
「やっぱり忘れちゃってるか……人の顔を覚えないのが欠点だって秀吉も言ってたっけな、そういえば」
「秀吉様の知り合いか?」
「友だちだよ、秀吉の」
「…………前田………慶次か」
 唯一友と呼んだ男、秀吉は彼のことをそう言っていた。
 秀吉に仕え始めた頃確かに何度か会ったことがあったのし、会話を交わした覚えもある。だがこの男はあの時からこんな男だったろうか。
 ゆらゆらと揺れる根無し草のような、どこが頼りない印象を持つ男。
 それが慶次という人間に対する三成の評価であったのだが、今の彼はどうだろう。確かにどこか頼りなげな部分は変わらないが、彼の芯となる部分に何かが刻み込まれたような気がするのだ。
 揺らいでいるように見える表側と、決して揺らがぬ奥の部分。
 関ヶ原の戦は、この男をも変えたのか。食事に集中しているように見える孫一が、無意識なのか慶次へ時折とばす目線には自分の情人へと向ける果てのない愛情と、そして厳しさが同じ割合で同居していた。
「………それを渡しに来たのではないのか? さっさと渡してやれ、このカラスめ」
「食べてからでいいって伊達も言ってるし……まつ姉ちゃんの程じゃないけど、ここの飯も美味いしさ」
「確かに、まつ姉ちゃんには劣るな」
 小十郎の震えが更にひどいことになってきているので、慌てて目をそらす。
 今日は一日小十郎の機嫌は最悪だろう、政宗が上手くなだめてくれればいいのだが。迫りつつ小十郎という名の脅威、そして唐突に現れた客人。
 さて今回の客とはどうつきあっていこうかと箸を手に取りながら考えていると、慶次が何かを思い出したのか豪快に山菜の塩漬けを口に放り込みながら話しかけてきた。
「謙信から手紙を預かってる」
「なんだと!?」
 思わず身を乗り出すと、孫一と慶次以外の人間の視線が三成に一気に突き刺さった。隠し事が出来ないのは昔からだが、さすがにこれはまずかったか。
 政宗たちには近いうちに話すつもりだったが、家康には気づかれるわけにいかない。
 どうすべきか必死に知恵を働かせていると、そんな三成の動揺を察したのか慶次が明るく自然に笑いながら言葉をつなげてくれた。
「謙信がさ、石田がどうなったか気になるから見てこいってさ……随分謙信に気に入られてたんだって?」
「剣の相手は……してくれたな」
「自分は越後を離れるわけにいかないから、かわりに俺に様子を見て来いって。あの謙信がそれだけ言うんだ、よっぽど気に入られたんだろ?」
「…………悪い男では……なかった…………」
 幸村を見届けるため、その言葉と共に軍神が西軍に参加した時は本当に驚いたが。
幸村や自分に稽古をつけてくれただけではなく、細やかな気配りで西軍をもり立ててくれていた。まあ日頃は島津と酒宴ばかり開いていたが、彼がいるというだけでどれだけ兵の士気が上がったことか。
 あの頃は憎しみに突き動かされていたのでよくわからなかったが、多くの人が自分を支えてくれていた。そして今も、三成のために影で多くの人たちが動いてくれている。
 いつ全てが終わるのか、全てにけりをつけることが出来るのかはわからないが。あの戦場を共に駆けた者たちと再会し、また酒宴を行えたら。
 自分は素直に礼を言うことが出来るだろうか。
 下を向いて考え込んでしまう三成を支えるかのように、慶次の言葉は続く。
「それと、秀吉に頼まれてたこともあるんだ。後でちょっとつきあってくれるかな」
「……秀吉様に?」
「ということで、後で石田を借りるから」
「ちゃんと返せよ」
「わかってる」
 満開に咲き誇る花のような慶次の笑顔。
 そこに嘘も偽りもないことをその場にいた人間全てが理解したのだろう、ただ一人を除いて。
「すまぬが前田……儂も同行させてくれ」
「それは断らせてもらおうかな」
「何故だ? 何もないのならば、儂が同行しても……」
「天下人だから俺に言うことを聞かせられると思ってる? 残念だけど、俺には天下人の命令より秀吉との約束の方が大事でね」
 さらりと、だが確固とした意志を示し。
 見事な早さで残りの食事を口の中に流し込み、慶次は一気に食事を終えるとそのまま廻りの荷物を取って立ち上がり、あっけにとられ箸を止めたままの三成へつかつかと近寄ったと思うと。

 いきなり体を抱え、そのまま肩に乗せてしまった。

「な、何をする!」
「じゃあ借りてくから……孫一はどうする?」
「ここにいても退屈だ、つきあわせてもらう」
 じたばたと暴れようとしたのは一瞬、腰を抱え方に担ぎ上げた慶次の手に乱暴な所はなく。むしろ自分をいたわるように優しく、大切な物を扱うかのように担ぎ上げられたことに気がつき。三成は素直に担ぎ上げられたままで、移動することを選択した。
「伊達離せ! 三成が拐かされる!」
「拐かされたら上杉に取り戻しに行けばいいだろうが、とりあえず落ち着け!」
「三成、逃げてくれ!」
「落ち着いてください、徳川どの!」
 後ろで何か凄まじい音と共に家康の叫び声が聞こえるが、それよりも今に三成にとって大切なことはただ一つ。
 慶次が持っているそれをいつ返してくれるか。
 それだけであった。













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自分の書く権現のむっつりぶりに、ちょっと引き気味な今日この頃。
でも石田さんの着替えシーンは全力で見学させていただきたい。
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

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