こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
八章はその七で終了予定。
もうちょっとのびるかもですが。
もうちょっとのびるかもですが。
*****
「身の振り方って……アンタ、ウチの人質って立場を忘れちまったのか?」
「忘れるわけがない。だが今私がここにいるのは正直言えば迷惑だろう」
「実際そうだけどな」
「厄介な事件が起こる前に私とあの女をどこかの寺に閉じ込めるのが貴様の仕事だ。何かあってからでは遅い」
「あの姫さんはともかく、アンタをそんな所に押し込めるわけにはいかない……っと、焼けてるぜ」
「あ、ああ……このまま食べればいいのだな」
深刻な話をしていたはずなのに、目の前に差し出された物の匂いを嗅ぐとつい顔が緩んでしまう。蕎麦特有の香りに焦げた醤油の匂いが合わさり、今朝は朝から何も食べられなかった三成の胃袋を急激に刺激してくれた。
わざわざ三成の部屋に火鉢を持ち込み、政宗が手ずからそばがきを作ってくれると言い出した時は驚いたものだが。挽いた蕎麦を熱いお湯で適度に混ぜ、粘りのあるそれを竹串に刺して焼く動作の滑らかさは彼が日頃どれだけこれを食べているのかを三成に教えてくれた。
自分も誘ってくれればいいのに。
と一瞬思いはしたが、そんなことで政宗に抗議するよりも今は目の前にある重大な問題を片付ける方が先だ。盛大に湯気を立てる竹串に刺さったそばがきにふうふうと息を吹きかけ、ちびちびと囓りながら政宗に話の続きをせかす。
ぱりぱりとした食感に焦げた醤油の味わい、そしてもちもちとした中身が三成の胃の腑を満たし暖めていく。
「あの女を閉じ込めるのは不可能だ。私と共にならどこにでも行くと本人が言っているのなら、私ごと幽閉すればいいだろう」
「それは断る。うちにいるアンタのfanたちが暴れ出すんでな」
「ふぁ……ふぁん?」
「アンタの信奉者ってことだ。気づいちゃいないようだがな、ウチにはアンタの事が可愛くて仕方がないって言うバカどもが多くてな……石田さんを温かく見守る集いなんてのも定期的に開かれてるみたいだぜ?」
「……………………だ、伊達には馬鹿しかいないのか!?」
「ジジイどもの庇護欲ってやつをそそるんだそうだぜ、アンタは」
そんな物頼んだ覚えはない。
伊達家というのは過保護と馬鹿の集まりで、そして情の深い人間のなんと多いことか。山の別邸にいた頃から思っていたが、誰もが押しつけがましいと思う程親切で、そして遠慮なく三成に接してくるのが奥州の人間。
そのおかげで奥州に馴染むことができたのだが、まさか影でそんな集まりが行われていたとは。そばがきを力一杯咀嚼しながら政宗に不審の目線を送っていると、火鉢の縁に刺してあった竹串を取り、彼自身もそばがきを食べ始めていた。
「ま、そういう事情でオレはアンタをここから追い出すわけにはいかない。あの姫さんは確かに厄介だがな……どうにかするしかないだろうよ」
「しかし……」
「オレがそう決めた、誰にも文句は言わせない。当然アンタに言う権利がないのはわかってるよな?」
「わかっている、だが」
「ウチの心配をしてくれるのはありがたい、正直言ってな。だけど俺自身がアンタを追い出したくないってのはわかってくれ………ok?」
そこまで言われてしまっては、三成も素直に頷くしかない。
三成と政宗を悩ませているお市本人が今ここにいないからこそできる話し合いだが、彼女が来てから伊達家の内部がおかしくなり始めているのは事実だった。数日前唐突に来訪し、三成の側にいたいと言い出した彼女に部屋を与えたのは良かったのだが。
相手は第五天魔王とまで呼ばれた女。
毒を含んでいるからこそ甘く感じる涼やかな声は周囲の人間を惑わし、その目を見るだけで人を狂わせる。そんな女が人の出入りの多い伊達の屋敷に住み込めばどうなるのか。政宗は数日でその恐ろしさを理解したようだが、かといって安易に手出しをすればあの力で屋敷の人間に牙を剥きかねない。
あの家康ですら三成の側にいることよりも彼女を早急にどうにかすべきだと考え、一時己の城へと戻ったのだ。別れる際に三成の頬に口づけ、すぐに戻ってくると優しく耳元へと囁いて帰って行って家康のことを思うと自然と顔が熱くなるのだが。
今はそんなことを思い返している場合ではなかった。
三成と一緒ならばどこへでも行くとお市が言うのなら、自分ごとどこかへ幽閉すべき。そう主張する三成に対し、政宗は決して己の意見を譲ることはなかった。
三成も己の臣下もどちらも見捨てる気はない。
鋭くも美しい片眼で三成を睨み付けるように、だが決して目線の鋭さで傷つけぬように。優しくも厳しい政宗の胸中には様々な思いが渦巻いているのだろうが、彼はそれを決して表へ出そうとしなかった。
伊達の当主として、そして三成の現在の保護者として。
全てを己の懐に収め、そして守ろうとする政宗の気概には感服する。だがしかし、自分とお市のせいでこの心優しい人々が住む国を荒らすわけにはいかなかった。
凶王と魔王を住まわす場所は、こんなに暖かくなくてもいいのだ。
どこか山奥にでも二人まとめて幽閉すればいい、一度頷いてはしまったが再度政宗にそう進言しようとしていると、急に襖が音を立てて開かれた。
二人に気がつかれぬように接近できる人間を、三成は一人しか知らない。
「政宗様! 部屋の中でそばがきを作ってはならないと何度言えばわかるのですかっ! それも石田殿の部屋に火鉢まで持ち込んで!」
「あれが石田さんを温かく見守る集いの責任者だ……どうだ、いい男だろ?」
「……………片倉…………」
「何を教えているんですか、政宗様!」
火鉢を閉め切った室内で使うと空気が悪くなるだの、そばがきなんて言えば作ってさしあげるのにだの。小言なんだか甘やかしなんだかわからない何かをぶつぶつと呟きながら、小十郎は忙しく動き続けていた。襖をわずかに開けたり、まだ焼いていないそばがきを器用に竹串に絡ませたり。
常にせわしない彼の目が、ついと三成へと向けられる。
「石田殿はもう少し食べて頂きますので。今朝から何も食べていないでしょう?」
「朝だけだ」
「昨夜もあまり食べていないようでしたが。お市殿は今眠ってらっしゃいますので、石田殿も少し休んでください」
「昨日寝てないのか?」
「あの女は夜になると活発に動くのでな、見張りは必要だろう」
眠っていないわけではないが、夕日が沈むと活発に動き出す彼女を止めるには三成も起きている必要がある。朝日が昇り始めてから少し眠れたのであまり眠気は感じていないのだが、冬の夜は長い。これがあと数日続けばさすがの三成も体が持たなくなるだろう。
小十郎はそれをわかっているのだろう。
そばがきを焼きながら背筋をただし、年若い主君へと向き直ると。
「お市殿には奥州から出て行っていただきましょう」
「……オイ……石田の目の前で言う事かよ?」
「当然石田殿も一緒に出て行っていただきます」
「小十郎、本気か!?」
途端、目を見開いて身を乗り出してきた政宗を完全に無視し、小十郎は懐から一通の書状を取り出し三成へと差し出してきた。
「上杉殿からの書状でございます。真田の忍び……猿飛が届けに」
「……上杉から……何故真田の忍びが……?」
「かなりの急ぎだったようで、上杉の忍びから渡され全速力で届けに来たようです。お市殿がいると聞いて、すぐに逃げ帰りましたが」
「だろうな」
幸村からの書簡ではわかりにくかったが、お市には散々な目にあわされているはずだ。わざわざ彼女と再び顔を合わせたいわけがない。それを小十郎もわかっているのか、苦笑いをしながら三成の手を握り込むかのように書状を乗せてくれた。
勇気づけてくれるような優しくも温かい手の感触。
何故刑部ではなく上杉の名で届けられたのか、もしかして刑部は。じわじわと胸に満ち始める不安を、そのぬくもりが少しだけぬぐい去ってくれた。
焦るあまりに書状を破ってしまわぬよう、震えそうになる指を押さえ込んで開いているので、いつもよりかなり時間がかかる。
だがそこに書かれていたことは、三成が一番恐れている出来事ではなかった。
「用件はなんでしたか?」
「………刑部の体の具合が良くないそうだ……できれば最後に会ってやって欲しいと」
「お市殿と越後まで行くといいでしょう」
「小十郎! 何考えて……っ」
政宗の言葉の続きを押しとどめるように、小十郎の言葉の続きがかぶせられる。
「奥州にお市殿の居場所を用意する気はありません。ですが我々は徳川殿に対する『人質』を手放す気もない……上杉殿でしたら、お市殿の居場所を用意して下さいます。私から一筆書かせていただきましょう」
「………片倉…………」
「しなければならないことを終わらせ、そして奥州へ戻ってきてください。この雪が解ければまた畑を耕す日々が始まります……こちらの畑は別邸より広いので私一人で耕すのは大変です……」
ですから、雪が溶けるまでには『帰って』いらっしゃい。
じゅうと音を立てて、とそばがきに塗られた醤油が火鉢の中へと落ちた。
それと時を同じくして、三成の頭の上を小十郎の手が優しく通り過ぎていく。
「政宗様が何と言おうと、石田殿の帰る場所はここですので」
「オレが文句を言うと思うか? それにいつかオレが言ってやろうと思ってたんだよ……その言葉は」
「私が先に言いたかったので。無礼の程は後ほどお詫びさせていただきます」
嫌みな程に低調に政宗に頭を垂れ、小十郎は三成へと微笑みかける。
この主従は本当に自分に厳しく他人に甘く、そしてお人好しで。人質の立場である三成に、当たり前のように越後に行って刑部に会ってこいと言ってくれるのだ。
そのまま三成が逃げてしまうのでは、そんなことを彼らは考えてすらいないのだ。
三成を信じており、そんな三成に注いだ自分たちの思いの深さを信じている。だからこそあっさりと三成を送り出す言葉を口にし、当然の如く帰ってくると信じている。
そして三成も、ここに帰ってくることを疑っていなかった。
「刑部に会ったら……必ず、戻ってくる」
「お待ちしています。さて、石田殿の旅の準備をしなければなりませんね。政宗様の着物に、長旅に耐えられそうな物があればいいのですが……」
「新しいのを仕立ててやれよ」
「それでは時間がかかります。政宗様と石田殿は背格好が似ておりますので、わずかな直しだけで着られるようになりますので。石田殿、明日の朝までに用意させますので……石田殿?」
「………………………な、なんでもない!」
暖かさと一抹の寂しさ。
それを感じながら三成は少し冷めてきたそばがきを今度は口を開いて、大きく囓り取った。側のほんのりとした甘みと、焦げた醤油の味わい。
そこに涙の塩気も混じって、美味しかったはずのそばがきが複雑な味になってしまったが。
三成を見守ってくれる彼らの笑顔は、変わらなかった。
_______________________________________
頭痛がひどくて自分が何を書いているのか、これは読む人にとって面白い物なのかがわからなくなっている今日この頃ですが……ま、まあ頑張る。
2月のオンリーに新刊出したい…………このままいったら落としそうだけどw
BGM「Double HarmoniZe Shock!」 by KOTOKO to 詩月カオリ
「忘れるわけがない。だが今私がここにいるのは正直言えば迷惑だろう」
「実際そうだけどな」
「厄介な事件が起こる前に私とあの女をどこかの寺に閉じ込めるのが貴様の仕事だ。何かあってからでは遅い」
「あの姫さんはともかく、アンタをそんな所に押し込めるわけにはいかない……っと、焼けてるぜ」
「あ、ああ……このまま食べればいいのだな」
深刻な話をしていたはずなのに、目の前に差し出された物の匂いを嗅ぐとつい顔が緩んでしまう。蕎麦特有の香りに焦げた醤油の匂いが合わさり、今朝は朝から何も食べられなかった三成の胃袋を急激に刺激してくれた。
わざわざ三成の部屋に火鉢を持ち込み、政宗が手ずからそばがきを作ってくれると言い出した時は驚いたものだが。挽いた蕎麦を熱いお湯で適度に混ぜ、粘りのあるそれを竹串に刺して焼く動作の滑らかさは彼が日頃どれだけこれを食べているのかを三成に教えてくれた。
自分も誘ってくれればいいのに。
と一瞬思いはしたが、そんなことで政宗に抗議するよりも今は目の前にある重大な問題を片付ける方が先だ。盛大に湯気を立てる竹串に刺さったそばがきにふうふうと息を吹きかけ、ちびちびと囓りながら政宗に話の続きをせかす。
ぱりぱりとした食感に焦げた醤油の味わい、そしてもちもちとした中身が三成の胃の腑を満たし暖めていく。
「あの女を閉じ込めるのは不可能だ。私と共にならどこにでも行くと本人が言っているのなら、私ごと幽閉すればいいだろう」
「それは断る。うちにいるアンタのfanたちが暴れ出すんでな」
「ふぁ……ふぁん?」
「アンタの信奉者ってことだ。気づいちゃいないようだがな、ウチにはアンタの事が可愛くて仕方がないって言うバカどもが多くてな……石田さんを温かく見守る集いなんてのも定期的に開かれてるみたいだぜ?」
「……………………だ、伊達には馬鹿しかいないのか!?」
「ジジイどもの庇護欲ってやつをそそるんだそうだぜ、アンタは」
そんな物頼んだ覚えはない。
伊達家というのは過保護と馬鹿の集まりで、そして情の深い人間のなんと多いことか。山の別邸にいた頃から思っていたが、誰もが押しつけがましいと思う程親切で、そして遠慮なく三成に接してくるのが奥州の人間。
そのおかげで奥州に馴染むことができたのだが、まさか影でそんな集まりが行われていたとは。そばがきを力一杯咀嚼しながら政宗に不審の目線を送っていると、火鉢の縁に刺してあった竹串を取り、彼自身もそばがきを食べ始めていた。
「ま、そういう事情でオレはアンタをここから追い出すわけにはいかない。あの姫さんは確かに厄介だがな……どうにかするしかないだろうよ」
「しかし……」
「オレがそう決めた、誰にも文句は言わせない。当然アンタに言う権利がないのはわかってるよな?」
「わかっている、だが」
「ウチの心配をしてくれるのはありがたい、正直言ってな。だけど俺自身がアンタを追い出したくないってのはわかってくれ………ok?」
そこまで言われてしまっては、三成も素直に頷くしかない。
三成と政宗を悩ませているお市本人が今ここにいないからこそできる話し合いだが、彼女が来てから伊達家の内部がおかしくなり始めているのは事実だった。数日前唐突に来訪し、三成の側にいたいと言い出した彼女に部屋を与えたのは良かったのだが。
相手は第五天魔王とまで呼ばれた女。
毒を含んでいるからこそ甘く感じる涼やかな声は周囲の人間を惑わし、その目を見るだけで人を狂わせる。そんな女が人の出入りの多い伊達の屋敷に住み込めばどうなるのか。政宗は数日でその恐ろしさを理解したようだが、かといって安易に手出しをすればあの力で屋敷の人間に牙を剥きかねない。
あの家康ですら三成の側にいることよりも彼女を早急にどうにかすべきだと考え、一時己の城へと戻ったのだ。別れる際に三成の頬に口づけ、すぐに戻ってくると優しく耳元へと囁いて帰って行って家康のことを思うと自然と顔が熱くなるのだが。
今はそんなことを思い返している場合ではなかった。
三成と一緒ならばどこへでも行くとお市が言うのなら、自分ごとどこかへ幽閉すべき。そう主張する三成に対し、政宗は決して己の意見を譲ることはなかった。
三成も己の臣下もどちらも見捨てる気はない。
鋭くも美しい片眼で三成を睨み付けるように、だが決して目線の鋭さで傷つけぬように。優しくも厳しい政宗の胸中には様々な思いが渦巻いているのだろうが、彼はそれを決して表へ出そうとしなかった。
伊達の当主として、そして三成の現在の保護者として。
全てを己の懐に収め、そして守ろうとする政宗の気概には感服する。だがしかし、自分とお市のせいでこの心優しい人々が住む国を荒らすわけにはいかなかった。
凶王と魔王を住まわす場所は、こんなに暖かくなくてもいいのだ。
どこか山奥にでも二人まとめて幽閉すればいい、一度頷いてはしまったが再度政宗にそう進言しようとしていると、急に襖が音を立てて開かれた。
二人に気がつかれぬように接近できる人間を、三成は一人しか知らない。
「政宗様! 部屋の中でそばがきを作ってはならないと何度言えばわかるのですかっ! それも石田殿の部屋に火鉢まで持ち込んで!」
「あれが石田さんを温かく見守る集いの責任者だ……どうだ、いい男だろ?」
「……………片倉…………」
「何を教えているんですか、政宗様!」
火鉢を閉め切った室内で使うと空気が悪くなるだの、そばがきなんて言えば作ってさしあげるのにだの。小言なんだか甘やかしなんだかわからない何かをぶつぶつと呟きながら、小十郎は忙しく動き続けていた。襖をわずかに開けたり、まだ焼いていないそばがきを器用に竹串に絡ませたり。
常にせわしない彼の目が、ついと三成へと向けられる。
「石田殿はもう少し食べて頂きますので。今朝から何も食べていないでしょう?」
「朝だけだ」
「昨夜もあまり食べていないようでしたが。お市殿は今眠ってらっしゃいますので、石田殿も少し休んでください」
「昨日寝てないのか?」
「あの女は夜になると活発に動くのでな、見張りは必要だろう」
眠っていないわけではないが、夕日が沈むと活発に動き出す彼女を止めるには三成も起きている必要がある。朝日が昇り始めてから少し眠れたのであまり眠気は感じていないのだが、冬の夜は長い。これがあと数日続けばさすがの三成も体が持たなくなるだろう。
小十郎はそれをわかっているのだろう。
そばがきを焼きながら背筋をただし、年若い主君へと向き直ると。
「お市殿には奥州から出て行っていただきましょう」
「……オイ……石田の目の前で言う事かよ?」
「当然石田殿も一緒に出て行っていただきます」
「小十郎、本気か!?」
途端、目を見開いて身を乗り出してきた政宗を完全に無視し、小十郎は懐から一通の書状を取り出し三成へと差し出してきた。
「上杉殿からの書状でございます。真田の忍び……猿飛が届けに」
「……上杉から……何故真田の忍びが……?」
「かなりの急ぎだったようで、上杉の忍びから渡され全速力で届けに来たようです。お市殿がいると聞いて、すぐに逃げ帰りましたが」
「だろうな」
幸村からの書簡ではわかりにくかったが、お市には散々な目にあわされているはずだ。わざわざ彼女と再び顔を合わせたいわけがない。それを小十郎もわかっているのか、苦笑いをしながら三成の手を握り込むかのように書状を乗せてくれた。
勇気づけてくれるような優しくも温かい手の感触。
何故刑部ではなく上杉の名で届けられたのか、もしかして刑部は。じわじわと胸に満ち始める不安を、そのぬくもりが少しだけぬぐい去ってくれた。
焦るあまりに書状を破ってしまわぬよう、震えそうになる指を押さえ込んで開いているので、いつもよりかなり時間がかかる。
だがそこに書かれていたことは、三成が一番恐れている出来事ではなかった。
「用件はなんでしたか?」
「………刑部の体の具合が良くないそうだ……できれば最後に会ってやって欲しいと」
「お市殿と越後まで行くといいでしょう」
「小十郎! 何考えて……っ」
政宗の言葉の続きを押しとどめるように、小十郎の言葉の続きがかぶせられる。
「奥州にお市殿の居場所を用意する気はありません。ですが我々は徳川殿に対する『人質』を手放す気もない……上杉殿でしたら、お市殿の居場所を用意して下さいます。私から一筆書かせていただきましょう」
「………片倉…………」
「しなければならないことを終わらせ、そして奥州へ戻ってきてください。この雪が解ければまた畑を耕す日々が始まります……こちらの畑は別邸より広いので私一人で耕すのは大変です……」
ですから、雪が溶けるまでには『帰って』いらっしゃい。
じゅうと音を立てて、とそばがきに塗られた醤油が火鉢の中へと落ちた。
それと時を同じくして、三成の頭の上を小十郎の手が優しく通り過ぎていく。
「政宗様が何と言おうと、石田殿の帰る場所はここですので」
「オレが文句を言うと思うか? それにいつかオレが言ってやろうと思ってたんだよ……その言葉は」
「私が先に言いたかったので。無礼の程は後ほどお詫びさせていただきます」
嫌みな程に低調に政宗に頭を垂れ、小十郎は三成へと微笑みかける。
この主従は本当に自分に厳しく他人に甘く、そしてお人好しで。人質の立場である三成に、当たり前のように越後に行って刑部に会ってこいと言ってくれるのだ。
そのまま三成が逃げてしまうのでは、そんなことを彼らは考えてすらいないのだ。
三成を信じており、そんな三成に注いだ自分たちの思いの深さを信じている。だからこそあっさりと三成を送り出す言葉を口にし、当然の如く帰ってくると信じている。
そして三成も、ここに帰ってくることを疑っていなかった。
「刑部に会ったら……必ず、戻ってくる」
「お待ちしています。さて、石田殿の旅の準備をしなければなりませんね。政宗様の着物に、長旅に耐えられそうな物があればいいのですが……」
「新しいのを仕立ててやれよ」
「それでは時間がかかります。政宗様と石田殿は背格好が似ておりますので、わずかな直しだけで着られるようになりますので。石田殿、明日の朝までに用意させますので……石田殿?」
「………………………な、なんでもない!」
暖かさと一抹の寂しさ。
それを感じながら三成は少し冷めてきたそばがきを今度は口を開いて、大きく囓り取った。側のほんのりとした甘みと、焦げた醤油の味わい。
そこに涙の塩気も混じって、美味しかったはずのそばがきが複雑な味になってしまったが。
三成を見守ってくれる彼らの笑顔は、変わらなかった。
_______________________________________
頭痛がひどくて自分が何を書いているのか、これは読む人にとって面白い物なのかがわからなくなっている今日この頃ですが……ま、まあ頑張る。
2月のオンリーに新刊出したい…………このままいったら落としそうだけどw
BGM「Double HarmoniZe Shock!」 by KOTOKO to 詩月カオリ
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
@3missiy3をフォロー
うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
@uzumi1250をフォロー
ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
カテゴリー
カウンター