がんかたうるふ ヤンデレに愛されているらしい友人宅に遊びに行ったらプロポーズを目撃した話 (現パロ・毛長) 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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六月企画第二段の続き。
ヤンデレ毛利さんとそんな彼の愛情に全く気がつかない長曽我部君と周囲の人々の話。結婚するというか結婚に関連しただけのはなしになった。


書いた人:みっしー

 



 *****
 
 
 
 始まりは、隣家に子供が産まれたと聞き、祖母とお祝いに伺ったことだった。
 病院から退院したばかりだという赤子はとても小さく、弱そうで、でもとても暖かかった。
 
『元就君の方が年上だけど、よろしくね』
 
あやつの母君から言われたその言葉が、きっかけだった。
 そのときたまたま、写真好きな祖父からもらったカメラを持っていた。だから自分で撮ったらどうなるのか、ちょっとした好奇心だったのだ。
 断りを入れて、写真を撮らせてもらおうとして、フレーム内に子供を納める。すると何故だろう。
 
 フレームの中央に写るその子供が、とても神々しいものに見えた。
 
 それは光の加減であったり、着ていた服であったり、様々な要因が重なって見えたものかもしれない。だけれどもあの日からずっと、守らなければならないと思っていた。自分が守らなければ、あの小さな生き物はすぐにも消えてしまいそうで、不安だったのだ。
 
 
 
「俺の家?来てもいいけど…突然なんでだ?」
「まぁまぁ、いいじゃないか!」
 本日の最終講義を終えた元親は、うなだれたり妙に楽しげだったりする友人に囲まれながら自宅への帰路を目指していた。
 元親の自宅は大学から非常に近い。徒歩で着いてしまう。元々家族で住んでいた自宅からも通学圏内ではあるのだが異常に寝坊しがちな元親の身を案じた両親の案で一人暮らしすることになったのだ。その話を聞いたのはだいぶ前のことになるが、実際に訪れるのは初めての事だった。
「そのためだけに部屋借りて生活費も出すってどんだけぼっちゃんなのさ…」と佐助が呆れ顔でコメントしていたが、政宗が補足するように言う。
「だってなぁ…こいつ高校の時、かなりの確率で一時間目の途中から来てたぞ。酷いときは昼からとか…」
「よく卒業できたね…それ」
 うんうんと互いに頷く政宗と佐助はのんきに前を歩く四人をみるのだった。
 
 元親の部屋は非常に大学に近い。しかし仲間内での溜まり場にはなっていない。それは、元親の背後にいるヤンデレこと毛利の存在を危惧した政宗が暗に言い聞かせて止めたからだ。あれの存在さえなければ良い溜まり場だっただろうに、と政宗はたまに口にする。それだけ毛利が恐ろしいのだ。
 そして時折思うのだ。
 長曾我部元親にとって、毛利元就とはどんな存在なのかということを。
 
 
 
「…ままま…まま」
「…相変わらずなにを言っているかはわからぬな」
 隣家に回覧版を届けに行ったところ、ちょこんと出てきた元親があまりに楽しそうに元就の足にくっつくものだからそれに押されて遊んでいくことになってしまった。
 元親は一才と数ヶ月になった。まだ明確な言葉は話さないが元気に歩き回り、言葉になる前の発語、いわゆる軟語を口にするようになった。
 両親と、そしてとりわけ顔を合わせることが多い毛利家の人間にことのほか懐いている。中でも子供同士だとわかるのか、元就と遊ぶことを好んでいる。遊ぶといっても人付き合いが不得手な元就は楽しいことを何か出来るわけではない。だというのにこの子どもは明らかに元就と遊ぶことを好んでいるように見えた。暇さえあればカメラをさわっている自分と遊んでなにが楽しいのかと思うが、好まれていること自体は嬉しかった。
「だー」
 その元親は最近お気に入りらしい車の絵本を元就に教えるかのように指さししている。
「これが最近の貴様のお気に入りなのか?」
「だー!」
 元親が指さしたのは郵便局の車だった。救急車や消防車パトカーなど各種車両が載っている中、どういう訳かこれがお気に召しているらしい。
「…なぜだろうな。何でこれを選んだんだと聞きたくなるのは我のエゴなのだろうか…」
 微妙なセレクトである。だが幼い元親がそれを知る由もない。
「う?」
 きょとんと首を傾げる元親は、全体的に色素が薄い。生まれつき、こういう人間が生まれやすい家系なんだということは元親の父から聞いた。
 元親はその血筋を色濃く受け継いだようで髪は白に近い銀色。そして目は右が青く左目のみが赤かった。
「あばばー」
 なにも知らぬ元親は元就に顔を触られ無邪気に笑う。
 元就は思う。
 今はまだいい。だけれども、成長するにつれ他者と違うこの色は周囲から異端の目で見られるだろう。周囲に入れない、いや入らなくてもかまわないと言う元就が集団の中での異物扱いされているように。
「…お前は、笑っていろよ」
 
 この子には、泣き顔は似合わない。
 
 元就の言葉に気づいているはずはないのだが、それでも元親はとてもとても楽しそうに笑った。
 
 
 
「散らかってるけど好きにしてくれ」
 そう言う元親に案内されてやってきたのはごく普通の単身者向けマンションだった。促されるままに入室するが、政宗だけはちょっと電話をかけたいとのことでまだ入ってはいなかった。
 初めて入る元親の家と言うことで家康と三成は好奇心旺盛な様子を隠せず、きょろきょろと周囲を見渡す。
「おお!戦車がたくさんあるぞ!」
「…これはロボットか?」
「そりゃあ趣味で作ったプラモ」
 部屋の一角にあるスチール棚の上には所狭しとプラモデルの完成品が並んでいる。手先が器用な元親らしいといらばらしい趣味である。
 その二人に遅れて足を踏み入れた幸村は「ほほう」と感嘆の声を上げた。
「元親殿!これならば片づいている方でござる!まことに散らかった部屋というものは足の踏み場が全く無く、家人に怒られてようやく人として住める場になるものでござる!」
「…そりゃ、あんたの部屋でしょうが!」
 そんな幸村の背後からびしっとツッコミが加えられる。犯人は間違いなく、佐助だった。
「うお…!…今日は佐助からのつっこみがいつも異常に厳しい気がするでござる…」
 叩かれた頭部を抑えながら佐助を見やる幸村に、佐助は溜息混じりで答える。
「あんたの天然と脳天気は長所でもあるけど短所でもあるんだよ…」
 佐助がそう呟いたとき、一度閉まったはずの玄関のドアが開く。姿を現したのは電話を終えたらしい政宗だった。手にはなにやら紙袋を持っている。
「あ、政宗も来たのか?」
 冷蔵庫の中身を確認していた元親、その背後で貰ったらしい魚肉ソーセージに齧り付く家康、板チョコに齧り付く三成とさして広くはない冷蔵庫前の隙間に男三人が陣取っている図は中々にシュールだった。
「来客なんて考えてなかったから全然なんもねぇぞ」
 そう言いながら元親はほとんど調味料しか無くなった冷蔵庫を見せる。どうやら魚肉ソーセージとチョコレートは最後の食材だったようだ。
「OK…想定の範囲内だ」
 言うが早いが、にやり笑みを見せた政宗は一体どこから取り出したものか、とあるものを右手で掲げて言った。
「軍資金だ。好きにしろ」
 右手の中には諭吉が二枚踊っていた。
「おおおおお!政宗殿!いいのか!いちまんえんだぞ!」
「軍資金がいちまんえんだと…このブルジョワめ!」
「うっせぇ。お前らにだけはいわれたくねぇよ!」
 というか魚肉ソーセージとチョコレート貪ってる人間に罵倒されたくねぇ、と付け加えながら政宗は元親に声を掛ける。
「まぁ突然押しかけたこっちの責任でもあるしな…お前の欲しい食材買ってこい。徳川と石田と、真田は荷物持ちな。」
「マジかよ…。気ぃ使わなくてもいいのに」
 困惑するような元親にお前がそうでもこっちの保護者に怒られると伝えると元親は納得した素振りを見せる。その一方で幸村は怪訝な顔を見せる。
「?何故、某が荷物持ちなのですか?」
 どうして政宗殿と佐助は留守番なのですか?と問う幸村に政宗は答える。
「一つ、スーパーに男6人で連れ立っていったら目立つ。二つ、徳川も石田も真田も食いもんは何でも食べるけどこだわりも強いから買い物段階から好きなもん選んでこい。反論あるか?」
 なるほど、と頷く幸村の後ろで家康と、そして三成が頷く。
「むぅ…無いな!」
「甘い物…」
 三人とも既に頭は買い物の事しか考えていない。そんな三人を荷物持ちとして引き摺りつつ元親は言う。
「まぁ漁られても困るようなもんはねぇから好きにしてくれよ」
 そう言って、彼らはいなくなった。
 残されたのは政宗と佐助。奇しくも、毛利という存在の恐ろしさを知る二人だけである。
「あのさ…」
 ふと話しかけようとした佐助の眼前に政宗のスマートフォンのメール作成画面が開かれる。
『今から調べたいことがあるから必要以上に喋るな』
 そう言いながら政宗はテレビを付けろ、と示すように指を向ける。佐助は何が何だか分からないまま、言われたとおりにテレビを付ける。
 そうして政宗は、持っていた紙袋から、なにやら不思議な機械を取り出す。あまり見た事のないその姿に佐助は思わず携帯のメール画面で『それ何?』と尋ねた。そうして政宗は答えた。
『盗聴器の探査機』
 その文字の意味に気がついた瞬間、ぞっとしたとかしないとか。
 
 
 
「もーとーなーりー!あそぼー!」
「…元親か」
 小学校からの帰宅途中、長曾我部家の前を通りかかった元就に飛びかかる人影があった。それは今や幼稚園の年長になった元親の姿だった。紺色を基調とした幼稚園の制服は元親にはとてもよく似合っていた。
 元就は6年生になった。元親との付き合いは変わらずに続いている。
 
「何をして遊ぶのだ?」
「じをかく!このあいだのつづき!」
 母親に断りを入れてから毛利家にやってきた元親は笑顔でそう言った。祖母も元親を大層可愛がっているのでとても喜んだ。
 今は元就の自室で画用紙とクレヨンを引っ張り出している。元から絵を描くことを好んでいた元親だが、最近字をかくことを好んでいるらしい元親は何かに付けて字を書きたがった。元就はそんな元親を横目に、カメラの手入れをしていた。祖父から貰った物ではない。これは自分の小遣いを貯めて買った物だった。小学生の自室にしては広い部類に入る部屋だろうが勉強机とベッドと本棚以外はほとんど物のない部屋だった。強いて言うならばいくつかの写真立てが飾られており、それら全てに元親の姿が収められていた。
 
「幼稚園は、楽しいか?」
「んー…たのしいけどもとなりとあそんでるほうがたのしい」
 にかっと笑いながら元親は言う。そうか、と言いながら元就は改めて目の前の元親を見ていた。
 年齢を重ねるにつれ、銀色の髪は目立つようになって来た。その顔立ちも、目の色も周囲の子供とはやはり異なる物で、異なる物とは排除されやすい。きっと嫌な事もたくさんあったのだろうにこの子供はそれを人に伝えない。普段は素直過ぎるほどに素直なのに変な所で気を遣うのだ、元親は。
 自分には懐いている元親が存外に人見知りで寂しがりやだということに元就は気が付いていた。周囲とは異なる容姿がそれに拍車を掛けたせいもあり、元親は同年代の友達がいなかった。
 元から性格が拗くれているという自覚を持つ自分とは異なり、元親の性根はまっすぐで、なにより素直だ。だから余計に辛いだろう。
 
「もとなり?」
 ふと気がつくと、元親の青い目が自分を見上げていた。先ほど書いていた字は完成したのだろうか。
「どうした?」
 日頃の自分を知る人間が見れば恐れおののくこと間違いないような優しい笑みを浮かべつつ元就は問いかける。誰に何と言われようと、元親は別格の存在だったのだ。
「できた。あげる!」
 そう言って満面の笑みを浮かべた元親は両手に持っていた画用紙を渡す。
 それに書かれていたのは元就だった。そしてその絵の周囲には拙い文字で『もとなりだいすき やさしい』と書かれていた。
「あのねー、きょうようちえんでえをかいたの。すきなものをかきなさい、っていわれたからもとなりかいた!」
せっかくだからじもかいた!と得意げな顔を見せる元親が、ただただ可愛かった。
「お前は…相変わらず器用だな。…ありがとう」
「へへ…もとなりうれしい?」
 照れたように笑う元親の頭を撫でる。そして、背一杯の笑みを形作って、言った。
「…嬉しくないはずがないだろう」
 なんの他意もないその言葉が、ただ嬉しかった。
 この子供は、自分の背後にあるものも関係なく、ただ元就という個人を案じてくれる。
 無邪気な笑顔が、ただただ愛おしかった。
 
 
 
 元親宅のガサ入れを初めて数十分。政宗と佐助は頭を抱えていた。
『なんでこんなにでてくんの!?そしてなんで元親は気がつかないのさ!?』
『落ち着け!俺も怖い!なにこの家』
 叫べないがゆえに携帯のメール画面を付き合わせる政宗と佐助だが、これには事情があった。
 
 政宗が持っていたのは世話役に言いつけて持ってこさせたという盗聴器発見器だった。どうやら行くと決まった時点で連絡し。家に入る間際に受け取ったらしい。一体その短時間でどうやって入手したものか。佐助は、元親と比較するのもどうかと思うけど政宗も絶対に普通じゃない、とこっそり思っていた。
 さて捜索を始めるに当たり、正直二人はタカをくくっていた。出るわけないよね、やるだけやってみようぜ、と。
 しかし始めた途端に出るわ出るわ…盗聴器の山が。一番最初はテーブルの裏、テレビ、パソコン、プラモ、果ては文房具など至る所から発見されたのである。これには政宗も佐助もぞっとした。巧妙に隠されたこれらに、元親は気付いてはいないだろう。怖くて寝室の方には行っていないが、多分そちらも酷いのだろう。だが、大事な事なので二回言おう。怖くて見に行けないのだ。
 そうして二人は呆然としたまま、リビングに正座で座り込んで項垂れていた。人は想定外の恐怖を前にしたとき、何も出来なくなると言うが、佐助と政宗は今まさにその瞬間に該当していた。そうしてどれだけの時間が経ったのだろうか。政宗が、ふと思い出したかのように携帯のメール作成画面を開く。
『俺、思い出したわ 元親の奴が前に言ってたこと』
『なにそれ』
『家にいると、なにかしらの作業の手が空いた時とかに毛利から連絡くるんだって偶然ってすげーなーってあいつ言ってたけど全然偶然じゃねーよな!?』
『むしろめっちゃ作為的じゃない!?というか元親はどんだけ鈍感なのさ!知ってたけど!鈍感過ぎてこわいよ!一番怖いのは毛利さんだけど!』
 気付かない元親の鈍感さも怖い。だけれども、一番怖いのはこれだけ仕掛けている件の毛利だ。それは間違いない。というか隣の家に住んでいると元親は言っていたがこれだけ仕掛けてるともう何がなんだかわからない。
『愛が重いってこういうこと言うのかな』
『まちがいねぇな』
 そうして二人は顔を見合わせると深い溜息を吐いたのだった。
 願わくば、買い出し部隊が早く戻ることを願って。だがその願いは案外早く叶えられることになる。思わぬおまけを付けて。
 
 
 
「…何をしている」
「…もとなり」
 帰宅途中の公園で、見慣れた銀髪が見えたので声を掛ける。小学生特有の黒いランドセルと通学帽で隠れてしまいがちだがその銀の色を隠しきれる訳がない。元より元就にとっては見慣れた色だ。人影もまばらになった公園のブランコに座る元親の隣に歩み寄る。元親は顔を上げない。その顔は未だに俯いたままだ。
「何か嫌な事でもあったのか…?」
 元親が小学校に入学して数年が経った。そしてクラス替えがあって数ヶ月たった。家ではいつもと変わらず素直で元気な振る舞いが目立つが、学校には馴染めていないようだということは彼の母から聞いて知っていた。元より人見知りの子供であるから時間がかかるのは仕方がないと思っていたし、また元親自身が騒ぎ立てるのを嫌がったので何も言わなかった。そう、今までは。
「…おれってへんなのかな」
 俯いたまま、元親が言った。
「変、とは?」
 ブランコに座ったままの元親と目線を合わせるべく、元就は彼の目の前にしゃがみ込んだ。
「…かみのいろがへんだとか、めのいろがへんだとか、みんなそういってわらうんだ」
 ぐすっと涙を堪えるような音が聞こえてくる。
「そうじゃないこもいるけど…でも」
 そこで何か堪えきれなくなったかのように、ぽたぽたと涙が落ちる。
「みんなとちがうのって、そんなにだめなことなのかなぁ…」
 ようやく顔を上げた元親は、泣いていた。顔に擦り傷を作って、青い瞳に涙を一杯に溜めて、泣いていた。
 
 それを見た瞬間、元就は自分の中の何かが壊れる音を聞いた気がした。
(元親が泣いた元親が泣いた元親が泣いた元親が泣いた元親が泣かされた元親が泣かされた元親が泣かされた元親が泣かされた元親が泣かされた)
 今まで元親が泣いた場面を見た事がなかった訳では無い。だけれども、こんな理不尽な事が理由で涙を流す元親を見たのは初めてだった。よくよく見ると衣類のあちこちが泥だらけで、鞄にも汚れが付いている。新しく、クラスメートとなった同級生にされたのは明白だった。
 泣きじゃくる元親の頭に軽く触れる。そして頭を撫でた。
 元親の容姿は生まれつきで、彼自身にはどうしようもできないものだった。ただ元就はずっとそれを綺麗だと思って見守ってきた。銀色の髪も青い目も、日に焼けづらい白い肌も、全部。
 そして何より、笑う元親が好きだった。ずっと、ずっと見守ってきた。その成長も、何もかも全部。だけど自分はこんなものを見るために今まで側に居た訳じゃない。こんな元親の泣き顔を見たいわけではない、決して。
「…駄目な訳はない」
 そう言って、未だに泣き止まぬ元親を優しく抱きしめた。
「人と違う事は、悪いことではない。我は、お前が好きだ」
 少しでも元親が落ち着くようにその背中に軽く触れる。幼い身体は成長したとはいえ、まだまだほっそりとしていて柔らかかった。そうして元親は元就の言葉に反応し、僅かに小首を傾げた。
「…もとなりはおれのことすき?」
「好きだ。大好きだ」
 他意無く聞いたであろう元親の問いかけに対して気づけば元就は即答していた。そして、同時に自覚した。
 自分はずっと、元親の事が好きだったのだ。友愛的な意味ではなく、恋愛的な意味で。六才も年下のこの子供のことが好きだったのだと、今更になって自覚した。
「…じゃあもとなりは、いっしょにいてくれる?おれは、ひとりじゃない?」
 ようやく泣き止んだ元親がそう呟く。
 寂しがり屋のこの子供にとって一人になることは酷く恐ろしい事だろう。なにより、自分の存在を肯定してくれる存在の有無は大きい。
「…一人にはさせぬ。我がいる限り」
 そう呟いた元就を見て、元親はまた泣いて、そして笑った。
「ありがとう」
 
 そして元就は決意する。
 この笑顔を守るためなら、なんでもしようと。例え人でなしと罵られようが、元親が無事ならば構わない。
 そう、全てはこの子のため。この子が笑って日々を過ごすため。
 この日から元就は、元親を害するもの全てを排除しようと決めたのだ。
 
 
 
「……………えーと」
「……なんか、人増えてるよね」
 買い出しに行っていた連中が戻ってきた。正直未知なる物が多すぎる元親の家に佐助と政宗の二人だけで過ごすのは色々と怖かったので助かった。だが、正直言って今一番顔を合わせたくない人がいるとは思わなかった。
「ああ、帰り道で会ったんだ」
 そう言って調理中の元親は軽やかに笑う。きっと彼に他意は無い。偶然会って、友達もいるしどうせなら、と思って誘っただけだろう。元親は悪くない。
「おやつに大福くれたでござる!うまいでござる!」
「うまいな…これ」
「夕食前のおやつにしては重いがうまいなこれ!」
 そして、夕食前にも関わらず各種大福を口にする幸村、三成、家康。
 
 さて、ここで問題です。彼らの眼前に置かれた大福は、誰が買ってきた物でしょうか。
「…餓鬼か貴様ら」
 正解は元親の隣で調理に勤しむ、毛利元就が買ってきた物でした。
 
 呑気に大福を頬張る三人とは別に政宗と佐助は気が気ではない。何故ならば、二人は毛利の恐ろしさを、身をもって知っているからである。盗聴器とか、写真とか、セクハラとか転校とかその他諸々を。しかしその二人にしても毛利と会ったことがあるのはほんの数回に過ぎない。
(どどどうするよ…これ…)
(怖いよ…半端無く怖いよこの人…!)
 引きつった笑顔のまま、政宗と佐助は目と目で会話する。言葉にせずとも通じるのは何故だろう。毛利という名の文字通りのラスボスが目の前に居るという恐怖に一人では耐えられそうにないからだろうか。一人じゃなくて、本当に良かった。二人はそう思った。
 
 その毛利は二人に気付いているのか居ないのか、ずっと台所に立って元親の調理の手伝いをしている。単身者用の部屋にも関わらず台所は広めで男二人が立っても狭くないらしい。
「別にあんたも座って待っててもいいのに」
「させっぱなしは性に合わん。知っておろう」
「はいはい…あんたそういう人だよな」
 元親はごく自然に毛利に対して話しかけ、そして毛利もそれに答える。きっと長年そうしてきたのだろう。それを感じさせるだけの阿吽の呼吸が、二人の間にはあった。
 ただ、じとりと背後を見た毛利の目線が明らかに牽制の意を含んでいたのだが。それに気がついたのは政宗と佐助だけだった。
 残る三人は、明らかに大福の虜だった。そして最早、大福をくれた毛利=いい人の評価になりつつある。
 佐助は、食い物で丸め込まれるんじゃないかという、当たらなくても良い自分の予想が当たってしまったことにこの時気がついたのだった。
 
 
 
 それは元親がまだ小学生だったころのことだ。
「元親、これに名前を書け」
「?いいよ」
 自室に遊びに来ていた元親は訳も分かっていないのだろうが、それでも元就の言葉に対して素直に頷いた。年を重ねても消えないその素直さが怖いと思う反面、やっぱり愛おしい。人の感情に鋭いようで、自分に向けられる好意には徹底的に鈍感なところも、自分の外見が他者より整っているという自覚が全く無いところも、どこまでも無邪気に元就を慕うところも全部。その全てが、本当に愛おしい。
 そう、全てが愛おしい。
 だから、彼を守るため、彼を害する存在を排除するために、文字通り何でもやった。
 元親を苛めていた主犯は、その根底に女の子のようだった元親への好意があったことに元就は気がついていた。だが、いくら好意が根底にあったとはいえ、元親を傷つけるような行為を元就が許すはずもない。数日間相手をしてやったら、向こうの方が先に折れて転校した。今からもう数年前のことになる。
 
「なー?書いたけどこれでいいのか?」
 小首を傾げて元親は元就に問う。
「上出来だ」
 元就が頭を撫でると、元親は照れくさそうに首を竦める。
 だいじなだいじな、たからもの。
 元就はふわりととろけるような笑みを浮かべながら元親に語る。
「元親…お前は私のものだ。頭の先から髪の毛から爪から何から足の先まで私のもの」
「うん?」
 訳が分かっているのかいないのか、元親は頷き、元就の言葉に耳を傾ける。
「…お前が私から離れることは許さない、決して」
離れた時は、私が手を下す。
 そう言った元就を元親は不思議そうな顔で見ていた。
「えーと…要は元就とずっと一緒にいればいいってことか?」
「そうだ」
 頷く元就に対して元親は酷く楽しげな笑みを浮かべてこう言った。
「なら大丈夫だって!俺!元就好きだもん!」
 だから大丈夫!元親はそう言いながら笑顔で肯定した。
「なら、良かった」
 笑みを浮かべる毛利が書かせたそれが『結婚誓約書』と書かれた紙であったことに気がつくのはすぐ後の事。だけれどもあまり物事を深く考えない元親は「よくわかんねーけど元就とならいいや」と笑ってそれを受け入れた。
 
 子供の頃からの刷り込みにより、毛利のやることなら間違いないと思っているが故の悲劇であり、喜劇であった。毛利にとっての元親が保護し、愛でて、どこにも行かせないようにしたい存在であるのならば、元親にとっての元就は、いつでも自分を守り導いてくれる、指標のような存在だったのだ。
 元親は確かに元就の事が好きなのだ。ただその感情に、恋愛的なものが含まれるのかといったら本人もわかってはいないだろう。鈍感過ぎるほどに鈍感な彼は、きっとそれを理解出来ない。鈍感というか、精神的に幼い部分がある。それは元就が庇護下においたが故の代償なのだが、それに気付いたからどうというような元就ではない。
 元就はずっと、元親の成長を見守った。明らかに元親にとって害となる、と己が判断した存在は容赦なく切り捨てた。(本人曰く合法で)
 ただ元親が、己に対して笑いかけてくれて、己だけどその瞳に写してくれてばいい。祖父母以外、誰も自分を見てくれなかったあの頃から、元親の存在が救いだった。
 ずっと一緒にいたい。
 元就の根底にあるその思いだけは時を経ても変わることがなかった。
 
 
 
 あれから始まった宴会において、酔った者勝ちと言わんばかりに政宗と佐助は呑んだ。しこたま呑んだ。この状況においては素面で居た方が負け。そう思いながら酒を煽る。双方共に成人していてよかったなーと思った瞬間である。
 だが、家康があるものを見つけ出した瞬間、場の空気が一転することになる。
 
「なぁ元親。これは何だ?」
 三成と共に元親の寝室を漁っていた家康が持ってきたそれは、引き出しのついた箱だった。全体的に和紙が貼られた、いかにも手作りといった感じのものである。
「あれ?それ、持ってきてたか…?」
 持ち主である元親本人は小首を傾げる。そうして居間で毛利の隣に座っていた元親は立ち上がると家康からその箱を受け取る。
「すんげー昔に隣の家のおばさんからもらった奴でよ。綺麗だからガキの頃は宝物いれだーって使ってたんだけど…ここ数年は何もいじってないはずだけどな…」
 それに持ってきた覚えないんだよなぁ、そう言いながらも元親は箱に触れ、そして開いた。
 そこに収められていたのは何の変哲もないただの封筒だった。
「なんだこりゃ?」
「元親がわからんものをワシらがわかるはずないぞ」
「開けてみた方がわかりやすいのではないか?」
 アルコールを摂取していないにも関わらず、炭酸飲料と周りの空気でほろ酔い状態の家康と三成は、ほんのり赤らめた顔で元親に尋ねる。
 それもそうか、と返した元親は何の躊躇もなくそれを開けたのだった。
 
 
 
「けっこんせいやくしょ?」
「ちょうそかべもとちかは、いっしょうもうりもとなりといっしょにすごすことをちかいます…」
「「…なんだこれは」」
 読み上げていく内に怪訝な顔になり、最終的には思わずハモってしまった家康と三成を咎められる人間はいないだろう。
 政宗と佐助はグラスを手にしたままその動きを止め、真田は口の中一杯にチョコレートを頬張ったまま、周囲の空気の変動にようやく気付く。
 元親は「…あ?」と口にしたまま腕を組んで考え込んでいる素振りを見せたまま動かず、そしてそんな中ただ一人だけ悠長に動く存在があった。
 
「随分と懐かしいものが出てきたな…」
 そう言いながら元親の隣に立ったのは他でもない、毛利元就だ。
 そうして、政宗と佐助は気がついた。
 恐らく、十中八九間違いなく、この文書は毛利の手によって作成されたものであることに。更にはこの箱自体を持ち込んだのは毛利なのではないかという疑惑が芽生えたが確証は無い。だがその線は濃厚だった。何故なら相手はヤンデレだ。愛が重いことで有名な存在だ。まぁ気付いたところで二人が何を言えるわけではないのだ。怖いから。
 うーんと考え込んでいた元親はふと、何かに気がついたかのように「あ」と呟く。
「思い出した。これ元就が書け、って言ったから俺が書いたやつじゃねーか」
「思い出したのか?物覚えの悪いお前には珍しいこともあるものだな」
「だって俺あの時は小学校だぜ。さすがに覚えてるっての」
 ふっと毛利は鼻で笑い、元親は少々ふて腐れたかのような表情を見せた。
 二人の周りの雰囲気はとても爽やかで、そしてどこか甘い。だが周りの人間は、主に政宗と佐助は絵も言われぬ恐怖を感じていた。
(やっぱりだったたあああああああ!)
(どんだけガチなの!?小学校の時から目を付けてたとか本当になんなのさあああああ!)
 
 凍り付く周囲をよそに毛利と元親、二人の会話は進んでいく。
「…お前は、あまり変わらないな」
「そうか?でも背ェ伸びたし、顔も結構変わったぞ」
「内面の話だ。肝心な所でうっかりする所は、昔とあまり変わらん」
「…そういう元就も、あんまりかわらねぇよ。昔から優しくて」
 
(優しいのお前にだけだから!他の人間にはきっついから!)
(その人病んでるから!明らかにアンタが自分から離れたらお前も殺して自分も死ぬ、的な愛だから!)
 色々突っ込みたいが突っ込めない政宗と佐助の叫びは脳内限定でそれぞれこだましていたことを誰も知らない。少なくとも家康と三成と幸村は、なんかよくわからないけど二人の世界に入っているという認識でしかなかった。そしてそれはまだ続く。
 
「…もしも、今でもこれに書いたままの変わらぬ思いを抱いていたと言ったら、お前はどうする?」
「…んー。別にいいぞ。元就の事は好きだし、俺も楽しいからな!」
 その瞬間、その場に居た五人は世界の色が変わる瞬間を目撃することになる。
 そして同時に思った。何でわざわざ人前で告白して、それを受けてるんだろう。こいつらは、と。
 
 
 
「…本当に良いのか?後悔は、しないか」
「俺が後悔なんてするわけねーだろ?」
 嬉しさを隠せない反面、どこか不安げに毛利は元親に問いかける。だが元親はそんな不安を一蹴するかのような笑みを見せる。
 それは元就が好きな、あの笑顔だった。
「だって、ずっと元就がいてくれるんだろ?なら大丈夫だ!」
 大人になった今でも変わらない無邪気な、子供の頃と変わらないその微笑みが好きだった。今でも好きだ。
 自身の告白を承諾してくれた事を嬉しく思いつつ元親の言う、好きは友愛としての好きなのではないかとも元就は思う。だから、恋愛としての好意は彼には受け入れてもらえないものなのではないかとも考える。だけれども、今はただこの幸福に浸ろう。
「元親」
「うん?どうした?」
 子供のような笑みを浮かべる彼を見ながら、元就は言った。
「愛しているぞ」
 華やいだようなその笑み裏にある感情に元親が気がついたかどうかは定かではない。
 離れることなど、許さない。
 幸か不幸か、相手がとんでもない鈍さを持つ元親だからこそ成り立っている危うい関係である。
 だが、思いを告げた二人には関係ないのであろう。少なくとも「ずっと二人で」いることで危険性は一気に少なくなるのだから。
 
 
 
 そして、他者を寄せ付けない空気をまき散らす二人を見て一言、幸村が言った。
「破廉恥でござるーーー!!」
 それは最早叫びだったが、その場に居る人間の総意に違いなかった。
 今までの気苦労は何だったんだとか、さっさと告白しておけよ、とか俺らが感じたあの恐怖の日々はなんだったんだ、とかおおむね特定の二人の愚痴ではあったが、件の二人の耳には入っていなかった。
 
 
 幸せの形は人それぞれである。
 これから二人の関係がどんな風に愛を紡いでいくのかは誰にも分からない。だけれどもずっと二人でいるのであれば大丈夫だろう。
 どんな形でも愛は愛なのだから。例えそれがヤンデレととんでもない鈍感人間であっても成り立つものなのだ。多分。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
○あんまりヤンデレにならなくて残念
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
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ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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