がんかたうるふ クロッシング 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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サイトから移動、ジュリジャンこばなしです。













 *****
「クロッシング」






黒と白のマスの中に詰まっている物の雄大さを、ジュリオは未だに理解できない。
祖父がこのゲームを好んでいたことは知っているし、時には無理矢理相手をさせられたこともある。ルールを覚えている、といった程度のジュリオでは足元に及ばない程祖父はこのゲームにおいて巧者であったし、ジュリオにわざと敗北してくれる程優しい男でもなかった。

だが、一度だけ。

自分の駒が祖父のキングを抑え込んだことがあったのだ。
激昂した祖父はそれから二度とジュリオを付き合わせようとはしなかったが、果たしてあの時自分はどう祖父に勝ったのやら。




「そりゃあの爺さんらしいな……おっと、そっちに来るか」
笑い含みの声で、ジュリオの途切れ途切れの思い出話を聞いていた声にわずかの焦りが含まれる。ジュリオの動かしたポーンの動きが、相手の予想を上回ったのだろう。ここしばらくの苦労のせいか、皺の増えてきた目尻に時折指をやりながら、にやにやしながらこっちを見つめてきた。
「…………ボス?」
「ん? どうした?」
「いえ、次は、ボスの」
手番です。
そう伝えようとした、最後の言葉を飲み込む。
楽しそうに駒を動かしながら、ああでもないこうでもないと考えている姿があまりにも楽しそうで。その邪気のない笑顔は、ジュリオに彼の大切な人をなんと なく思い出させる。どちらも時折突拍子もない事をして周囲を驚かせたり、わがままを言って困らせたりと好き放題やっているようだが、自分の信念を曲げたこ とは一度もない。自分が楽しいことを全力で楽しみ、周りの人間達にもその楽しみを分けようとする。その姿が人々が彼らを愛する要因なのだろう。
ジュリオ用に用意されたミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒーと、皿に綺麗に盛りつけられた巨大なロールケーキをちびちびと食べながら、敬愛すべきカポの様子をただ観察する。というか、相手の手を待つまでの間にはそれくらいしかすることがない。
「ジュリオ……お前ボンドーネの爺さんにずいぶんと仕込まれてたようだな」
「そう、ですか?」
「ちゃんと基礎を教え込まれた奴のチェスだよ、お前のチェスはな。あの爺さん、なんやかんやでお前のことが可愛かったんだろうよ」
「それは、ないです」
「なんでだ?」
「俺は、お爺さまには……」
嫌われていたのだろう、きっと。
孫として何かを与えられたり、愛情を注がれたことは一度もない。誉められるのは誰かの命を絶った時と、祖父に言われたことを忠実に実行した時だけ。その時ですら、ジュリオを卑下することをあの祖父は忘れなかった。
祖父にとってのジュリオは、単なる自分の意思を実行する道具。
それがわかっていたからこそ、彼にとって有益な道具であろうとした。そうすることと、過去のたった一度の出会いだけが、あの頃のジュリオにとって生きる意味であった気がする。
「……そうだな、ちょっとした賭けでもするか」
「賭け、ですか?」
「この次の手で、状況をひっくり返してみろ」
そう言ってカポは、いきなり今までの時間の積み重ねの象徴である並ぶ駒たちをいきなり全てひっくり返す。そして手早く駒を先程とは違う形に並び替えると、ジュリオに一つの駒を手渡してきた。
象牙で作られた、白くて滑らかなポーン。
「これで、な」
「…………無理です」
圧倒的な黒の優位、そして追い込まれた白のキング。
ビショップとナイトが失われてしまっているこの盤面のなかで、ポーン一つで状況を逆転しろなんていう状況をどうやって作ればいいのか。そしてこんな意地悪な状況をとっさに思いつくこのカポは、どれだけ意地悪なのだろう。
ジュリオなりにきっぱりと断ったつもりだったが、このカポには通じなかったらしい。
「そうだな……面白い手を考えてきたら、休みでもやるか」
「ですから、あの……」
「ジャンと一緒にメキシコなんてどうだ?」
「…………」
「この時期のメキシコはいいだろうなぁ…………」
ロールケーキを飲み込みながら、意地悪な男の意地悪すぎる誘惑に必死に耐える。
ジャンと二人で遠くへ旅行、軽く想像するだけで凄まじく楽しい行程になりそうなのはわかる。行き先が国内の何処かなら、ジュリオも少しは喜んでこの賭け に乗っただろう。だが、行き先がメキシコ、それもジャンが一緒となると確実に仕事が絡んでくるのは容易に予想がついた。ボンドーネ家の持っているフルーツ カルテルの権利絡みの件で、ジャンを連れて顔見せしてこいということだろう、きっと。
どうやら仕事絡みの遠出をを休暇と呼ぶことが彼の中では許されているらしい。それよりも、カポの命令として行ってこいと言えばすむのに、この面白オヤジカポ(ジャン命名)は何を考えているのだろうか。
「あの……面白……じゃなくて、ボス」
「なんだ? やる前からギブアップか?」
「はい」
「…………お前、本当に可愛くないな」
「よく、言われます」
「しょうがねえ、やり方を変えるか。ジュリオ、これを家に持って帰って明日までに考えろってジャンに押しつけろ、カポの命令だとちゃんと伝えておけよ」
ずずっと目の前に押し出されてくる駒が大量に乗ったチェス盤。
にやにやと嬉しそうに笑いながら、自分の前に置かれたブランデー入りのコーヒーを飲む彼からは、何の深い意図も感じられない。こういうところがまたジャンに似ているなあと思いながら、ジュリオはあきらめてチェス盤を持ち帰る準備をすることにした。
カポの命令を出されては、ジュリオには逆らいようがない。
今のジュリオに出来る最大限の抵抗は、このボードをさっさと家に持って帰ることと、その前に出されたロールケーキを全部食べることだけだった。








かくして、持ち込まれたチェス盤を前に、金髪の家主は頭を抱えることになったのだが。
「ったく、面倒なこと押しつけてきやがって……」
「……ぁ……ごめんなさ…………」
「この場合の悪人はあの面白オヤジだ」
ジュリオが見たことがない程の硬い表情のまま、ジャンが金色の髪を揺らす。
自分がこんな物を持ち帰ってきたから、そう思い何度も謝罪をしたのだが、ジャンの口から出るのはジュリオに怒っている訳じゃないの一点張り。時折口をと がらせ、だがジュリオがあまり気に病まないように絶妙なタイミングで笑顔を向けてくる姿は、ジュリオを責めている訳ではないことを教えてくれる。
それでも胸の奥でじりじりと広がるこの思いを消し去ってくれる訳ではない。
ジャンに迷惑をかけたという思いだけではない、白と黒の規則正しいマス目、そしてボスの出した宿題が心の底から何かを生み出そうとしている。それが今のジュリオにとってどういう意味を持つかわからないが、きっとそれは昔の記憶というものと密接に関わっているのだろう。
その証拠に、ジャンが駒を一つ動かすわずかな音が、ジュリオの心を小さく、だが確実に揺さぶっていく。
「ほら食えよ、これ結構うまいぜ」
「はい」
そんなジュリオの気持ちを知ってか知らずか。
テーブルの上に大量に積み上げられたチョコレートバーが唐突に目の前に差し出された。安っぽい紙の包装を半分程解き、ジュリオが食べやすいように口元ま で運んでくれたものを素直に口に含む。隣に座るジャンの肩のぬくもりを感じながら食べるチョコレートバーは、溶けてしまいそうな程に甘かった。
ボスのところで食べてきたロールケーキ程精密な味わいはない。だがチョコレートの口を溶かす程の甘みと、甘酸っぱい干し杏の味わいが組み合わせが、量販品とは思えない絶妙な味わいを作り上げている。
これなら確かに当たりといってもいいだろう。
「おいしい、です」
「そっか、1個喰ったらうまかったからまとめて買ってきたんだよ。喰いたきゃまだ売る程あるからな」
こくりと頷き、また一口囓ってみる。
今度は干し杏の甘酸っぱさに堅いナッツの香ばしさが加わる。これならいくらでも食べられそうなので、食事までの間にあと何本か食べてしまおうかとチェス 盤の横に置かれているバーの本数をチェックしようとする。と、震えが来る程真剣な目でジャンが自分を見つめていることに気がついた。
「ジャン?」
「…………で、俺はどうすればあのクソオヤジに勝てるわけだ?」
「ジャンは、チェスのルールは……」
「ほとんど知らねえ。そこら辺はジュリオが教えてくれるんだろ?」
「あ、はい」
ジャンの煎れてくれたコーヒーをすすりながら、ゆっくりとジュリオは説明を始めた。
チェスの基本的なルール、駒の動かし方、特殊なルール、語るべき事はいくらでもあるが、今ジャンが知らなければならないのは、チェスというゲームはどうやれば勝てるのかという部分である。
チェスのルールを理解できていない人間に、このチェスはどうやれば勝てるのかという部分を説明するのは存外に難しい。勝負の要であるキングを奪われそう になっても、チェスというゲームではすぐに負けたことにはならない。何をやってもキングが逃げられない状況になったとき、はじめて敗北したことになるのだ チェスは。
つまり粘り続ければ、負けはしない。
そこまで粘ることができるテクニックがあるということこそ、ゲームの巧者である証拠。今のジャンにそれを求めるのは無理であろうし、彼がこの状況をひっくり返す手をすぐに思いつける訳がない。
さて、自分ならどうするだろう。
ある程度ルールを説明し、実際に自分で動かしてみる段になったジャンの姿を見ながら、ジュリオはジュリオなりに頭の中で駒を動かしていく。どのポーンを動かしても、そのポーンは犠牲になり、綱渡りに近いゲームを続けることになる。
これがポーンを動かして、という制約がなければもう少し状況は変わっただろうに。
「このポーンってやつ、変な駒だな」
「変、ですか?」
「一番弱っちいくせに、一番使えるんだぜ。駒は使い方次第って言うけどよ、こんだけ面白い使い方の出来る駒はないんだろうな」
変な駒、面白い。
ふと、心の奥底でさざめいていたものが一瞬だけ形をなした気がした。
何の飾りもない、質素な駒。
そこに込められているものをジュリオに教えてくれたのは、そしてその逆の価値観を教えてくれたのは誰だっただろうか。
「どうした、ジュリオ?」
「ちょっと、いいですか」
ジャンの手のすぐ横に置かれている、黒いポーンを一つ手に取る。
あの時の自分はこの黒いポーンを手にとって、自分のナイトもビショップも奪ってしまった祖父相手に、必死に考えていた。負けてしまうのはしょうがない、でも自分とチェスを行う時間を確保してくれた祖父の時間を無駄にするわけにはいかない。
あの時も必死で考えて。
祖父にとってこれが少しでも楽しい時間になるように、勝負の時間を少しでも長くしようとして手に取ったポーンは。

誰によって止められただろうか。

「答え、わかりました」
祖父との数少ない思い出、白い記憶の霧の中に消えてしまっていたそれを一つだけ思い出せたことに、ほんの少しの喜びを見いだしながら。ジュリオは小さな声でジャンにそれを伝えた。
「そっか」
ジュリオの出した答え、それを聞いて微笑んだジャンは、だがきっぱりとそれをボスのもとへ持って行くことを拒否した。最初はどことなくきつい眼差しを崩 さないジャンを見ながら驚いたジュリオだったが、彼が代わりに出した『答え』は、ジュリオを満足させるのにふさわしいものだった。









コツリと小気味のいい音を立てて、純白のポーンが優雅に動いた。
「これがジュリオの出した答えだ。あんたの正解はこれだろ?」
一見しただけでは何も状況が動いたように見えない悪手、だが数手うてば状況が一気にひっくり返る。残ったポーンが全て相手に牙を剥き、その牙に黒い駒たちはあっという間にかみ砕かれることになるのだ。
「ガキのジュリオが同じ状況になったとき、こうやってあんたが助けてやった、そうだよな?」
「よくわかったな」
「ジュリオがそりゃあもう嬉しそうに話してたからな……なあ、なんであのクソジジイ、もうジュリオとやらなくなったんだ?」
「あの爺さんなりの孫との遊び方だったんだろうさ。あくまで自分が上だっていう前提での遊びだったが、それなりに楽しかったんだろうよ」
「じゃあなんで」
ジャンの疑問に、鮮やかな琥珀色が満ちたグラスを飲み干しながら、一つの組織を背負う男はゆっくりと口を開きだした。ジャンの手元にも同じ物があるが、険のある目つきを崩していないジャンは、それにわずかも口をつけていない。
「自分より孫と仲良くされて腹が立ったんだろう、あの後俺もしばらくあの家に出入り禁止になったからな。嫌になるほど歪んでいたが、孫と仲良くなる方法を探っていたんだ、やり方は完全に間違っていたが」
「わかっていたなら、さっさとあんたが助けてやれば良かっただろう?」
「できるものならそうしていたがな、俺には俺でそれよりも優先しなきゃいけないことがあの時はあった」
「面倒だっただけだろ」
吐き捨てるようにそう言うと、目の前の男が豪快に笑い出した。
信じることができる好漢であり、上司として立てなければいけない存在であるとわかっている。だが今のジャンにとって、彼は敵でしかなかった。
悠然と座ったままの彼の前に置かれたチェス盤、そこに焼け付くような視線を注いでいると、からかうような響きの男の声がジャンの耳を不快にくすぐった。
「それで、お前の答えはどうなった?」
「あ? 俺の答え? こうに決まってるだろ?」
白いポーンを手に取らず。
ボードに何を置くこともなく。

勢いをつけて、そのままボードをひっくり返した。

見るからに高価そうな駒が部屋の各所へ派手な音を立てて飛び散り、固いボードはテーブルの下でカタカタと音を立てながら踊り続けている。
その音に負けぬ声、負けぬ目線で目の前の男を射貫く。
「相手に決められたルールで勝負するなんて馬鹿な真似はしねえよ。一度全部部壊して、俺のルールで勝負を仕切り直す」
「ずいぶんと豪快だな」
「俺、実はか~な~りむかついててさ。ジュリオを連れて帰ろうと思ったらどっかのおっさんが先にお持ち帰りしてるしよ、ようやく帰ってきたジュリオは宿題付きでただいまのキスもしてくれない、挙げ句の果てにどっかのオヤジのこと思い出してるなんてな」
一気に言った後、大きく息を吸う。
「プライド傷つけられまくりなんだよ」
「………お前にもプライドなんてあったんだなあ……」
全力の抗議に返ってきたのは、しみじみと感慨深げな声だった。
チェスに因んでというわけではないが、今回の件についてそれこそ白黒つけようと、相手の本拠地に乗り込んだはずなのに。返ってきたのは孫の成長を喜ぶ祖父のような声というのは一体どういう事なのだろうか。
張り詰めるような気合いに満ちていた体から、あっという間に力が抜けていった。
「で、他に言うことはあるのか?」
「あんたの馬鹿声聞いてたら、言う気もなくしたよ……」
「そうか。なら明日からルキーノとシカゴの方へ行ってこい、護衛はつけてやるからせいぜいルキーノのやり方を勉強してくるがいいさ」
「はぁ!? 勝負に勝ったらジュリオとメキシコじゃなかったのかよっ?」
「俺のルールでの勝負だ、ボードひっくり返して勝ちました、なんてやり方が通用すると思ってるのか? メキシコには来週からジュリオとベルナルドで行ってもらう」
「ダマしやがったな~っっ!」
「騙すもなにも、お前が勝手に勝った気になっただけだろうが」
ひらひらと手を振りながら、高笑いを返してくる男を再度睨みつけながら、いつかじゃなくてすぐにカポの座を奪って、こいつを引きずり下ろしてやると心に誓うジャンであった。 







BGM「笑顔の理由」 by meg rock

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拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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