こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き終えました
今回のリレーのルール
・キリのいいところと書いている人が判断した段階でバトンタッチ
・どれだけ多くても1回が原稿用紙40枚以内
・へたれてたり、イヴァンべったりだったりするジュリオはなし
・ジュリイヴァでラグベル
・メガネはどんな時でも腹黒
・埋さんがどれだけ(グロ方面で)暴走しても、温かい目で見守ること
今回のリレーのルール
・キリのいいところと書いている人が判断した段階でバトンタッチ
・どれだけ多くても1回が原稿用紙40枚以内
・へたれてたり、イヴァンべったりだったりするジュリオはなし
・ジュリイヴァでラグベル
・メガネはどんな時でも腹黒
・埋さんがどれだけ(グロ方面で)暴走しても、温かい目で見守ること
*****
道が悪いのは覚悟していたが、まさかここまでひどいとは。
縦にも横にも揺れ続ける車の中で時折天井に頭をぶつけながら、流れていく周囲の景色にただ目をやり続けていた。
視界に広がるのは一面の純白。
ルキーノから借りた車の粗末な暖房では、普通なら体の芯まで冷え切ってしまうのだが、今日はコートを着なくても良い程暖かかった。春までの間は枯れ枝と化している木々の隙間から差し込む日の光が暖かかったということもあるが、それ以上に男ばかりが詰め込まれた車内の暑苦しさも起因しているのだろう。
ちょっとでも隙を見せれば車体が横に滑り、どこかに激突してしまいそうになるのを絶妙なハンドルさばきで押さえ込みつつ、ベルナルドは後ろでだらだらとくつろいでいる年若い青年に声をかけた。
「イヴァン、お前が一番年下なんだ。お前が運転すれば良かっただろうに、運転は嫌いじゃないんだろう?」
「そうだけどよ……これからデカいヤマだってのに、運転なんてしてられっかよ。暇つぶしについてきた筆頭幹部サマがやりゃいいんだよ」
「その仕事を回してやったのが誰だか、覚えてるんだろうな?」
「もらっちまったらオレの仕事だ。それにテメーのことだ、オレじゃなきゃダメな理由ってヤツもあるんだろうが。コイツはともかく……ジャンのヤロウにまかせられなかったのは、金勘定の問題だろ?」
「正解だ」
樹から落ちてきたのだろう、タイヤを破裂させてしまいそうな氷の塊を器用に避けつつ、ベルナルドはイヴァンの頭の良さに内心舌を巻いていた。人の能力と心の機微を理解することにかけては天才的なイヴァンである、大体はベルナルドの意図も理解しているのだろう。
だからこそ素直にこの仕事を受けてくれたし、ベルナルドに素直に従ってくれている。
昔なら考えられなかった程の素直さを彼の成長と見て取るべきか、それとも笑顔で見送ってくれた黄金の髪を持つカポの力と見るべきか。どちらにしても人間的にも能力的にも成長する幹部がいるのだ、この組織はまだまだ伸び続ける。
後ろの座席でわずかに距離を開けて並んで座るイヴァン、そしてその隣で先程から一言も言葉を発しない存在に、優しく声をかけてやる。
ついでに自分の隣で暑苦しい程の外套を着込んだ男にも。
「寒くないか、お前たち。もう少し……あと5kmくらいだからもう少し我慢してくれ」
「逆に暑いくらいだ。バケモノに囲まれてんだからよ」
「おや、仲の良いご友人をバケモノ呼ばわりしてはいけませんよ~」
「テメーもバケモノに入ってんだよ、オレの中じゃな!」
「……そんなこと言わないでくださいよ、ねえベルナルド」
「化け物というか……なんというか………仕事なんだ、多少は我慢してくれ……ジュリオも、な」
「わかってる」
言葉少なに答え、一瞬だけ上げた顔をまた伏せたジュリオ。
ただ座っているだけのように見えても、指の先までに力を巡らせ何があっても対応できるようにしているのはさすがと言うべきか。助手席でだらんと体を伸ばしている今回の自分の同行者もきっと、警戒はしているのだろう。
CR-5の幹部が3人揃っての遠出なんて通常はあり得ないこと。
情報は出来るだけ漏れないようにしたが、予想だにしないルートで漏れるものなのだ、行動予定というものは。今回の仕事の内容を考えると出先で襲われる可能性はまず無いと踏んではいるのだが、普段はこういうことに口を挟まない我ががカポが珍しくラグトリフを連れて行けと言って聞かなかったのだ。
ベルナルドとしてはイヴァンが無事に仕事を遂行できるかを見届けるついでに自分の懐も温かくできるだけでも良かったのに、何故ジャンはジュリオだけでも十分だというのにラグトリフまでつけてくれたのだろうか。
まさか自分たちの関係に気がついて……そんなことを考えていると、ようやく山の稜線の彼方に鮮やかな色の屋根が見えてきた。
「ああ、見えてきたな。イヴァン、あれがストラトン氏の邸宅……通称『聖母館』だ」
「気色わりぃ名前……」
「フランスから招いた彫刻家が掘った聖母の像が館中に置かれているそうだ。20エーカーの大森林と煉瓦造りの施設一式、そして鉱山……これだけの資産を一気に売り払うなんて余程の事情があったんだろうな」
「金がねえなら切り売りすりゃいいだけだろ?」
「ストラトン氏は全てをやり直したいそうだ、嫌な事件のあった土地から離れて、な」
「煉瓦を運んでた日雇いのヤロウどもが失踪しちまったって話か」
「それだけじゃない、この森は広すぎて自殺志願の馬鹿者も大勢やってくるそうだ……体の弱い娘さんもいるのに医者が来づらい上に死体がごろごろ転がっている森に囲まれている場所はあまりにもよろしくない。ということで、売却を決めたそうだ」
徐々に、見た目にも鮮やかな赤い煉瓦で作られた巨大な館が近づいてくる。
ただの森林ならば買う価値はあまりないが、そこに高炉にも使える耐火煉瓦を生産できる設備と美術品であふれた館があるとなれば話は別。一刻も早く館を離れたがっている当主から安く買い叩き、欲しがっている人間に手数料込みで売却するだけで、組織を一気に潤す莫大な利益となるだろう。
問題があるとすれば今回の交渉役のイヴァンがきちんと動くかどうかと、今まさにイヴァンの隣で静かに居続けるジュリオがイヴァンをどう支えるか。これからジャンを支えていくことになる若い二人の連携にかかっているのだ。
「つまりよぉ、そのジジイをうまく脅してそこを買い付けりゃいいだけだろうが。最初から思ってたんだけどよ、そういうのはテメーの仕事じゃなかったのか?」
「俺ももう年だ、そろそろ後任を育てないとな。外回りはルキーノがやってくれるからいいが、こういう仕事をあいつに任せるのは……ちょっと、な」
ルキーノは全てにおいて優れた男だが、費用対効果という言葉をいつまでたっても理解しようとしない。どれだけ巨大な利益を上げたとしても、出費が大きければ純粋な利益は減ってしまうのだ。
彼が使う金が将来返ってくるのはわかっているが、使われる金が増えていくたびに、こちらの胃が痛くなっているのも事実。
そんな彼に巨大な金を動かす仕事を任せる事なんて、出来るわけがない。
それくらいなら役員会の反対を受けたとしても、金の重みを知り尽くしているイヴァンに教え込んだ方が精神衛生上的にも、組織の将来のためにもよっぽどためになる。自分で疑問を口にしたが、最初からベルナルドの答えはわかっていたのだろう。
ニヤニヤと笑いながら、
「オレにも当然オコボレくれるんだよな?」
と、運転席のベルナルドに向けて手を差し出してくる。
「おこぼれ?」
「テメーはテメーで、なんか儲け話があるんだろ? オレに面倒なことを押しつけるんだ、勿論少しは分けてくれるよな?」
「お前次第だな……まあ、今の俺がお前に言えることは一つだけだ」
「なんだよ?」
いぶかしげに首をひねりながら、それでも手を引っ込めないイヴァンをぴしゃりと叱責する。
「ネクタイが曲がってるぞ! ストラトン氏の信頼を得るにも、まずは見た目からだ」
「わかってるって」
「それからカフスも。お前の格好で相手はCR-5という組織を見極めるということを忘れるな。ジュリオ、そいつのネクタイを直してやれ」
「コイツになおさせるくらいなら、自分でやるにきまってんだろうが。このバカの不器用ぶり知らねーのか?」
「おや? あまり仲がよろしくないと思っていたのですけど、ネクタイの結びっこをするくらいには仲良しなんですね~」
なにげない、本当に自然なラグトリフの一言で車内が一気に静まりかえった。
ぱくぱくと口を開いてはいるが言葉を発することが出来ないイヴァンの肩を、無言でジュリオがぽんと叩く。それが合図だったかのように、一気にまくし立て始めるイヴァンをその場にいる全員が無視し、大きな雪の粒が舞い始めた空をベルナルドはじっと見つめた。
あまり雪が強くならなければいいのだが、そうなると設備の見学がしにくくなる。
「だーかーらー! オレはこんなヤツにネクタイを結んだことなんてねーし、こいつにネクタイを結ばせたりなんでできるわけねーだろうが! オレには自殺願望なんてねえんだよ、首締められて死にてーヤツがこいつにやってもらえばいいんだよ! おい聞いてんのか、そこの腹黒メガネ!」
「イヴァンさん……腹黒メガネってどっちのことですか? ボク? それともベルナルド……?」
「………………ど、どっちも………じゃ、ねーけど………よ…………」
「ボクみたいな虫も殺せない男を腹黒だなんて。ベルナルドは腹黒ですけど、可愛いところもあるんですよ」
「テメーののろけなんて聞きたくねえんだよ……」
ラグトリフとイヴァンの陰険漫才を聞きながら、そっとジュリオの様子をのぞき見る。彼のことだ、自分に見られていることなどわかっているのだろうに、目線を向けて威嚇することもせずただ自分の膝に目をやり続けている。
イヴァンの護衛兼助手としてついて行けと命令した時は素直に従ったが、彼は今何を考えているのだろうか?
それがイヴァンの今回の仕事にとってプラスになることであることを祈りながら、ベルナルドはゆっくりとアクセルを緩め始める。
ちらつき始めていた雪が、少しずつ勢いを増し始めていた。
数日分の着替えを入れたトランクが、ベッドの上にそっと置かれた。
館についてすぐ当主への挨拶と周囲の設備の見学。そしてかなりの数になっていた他の購入希望者との歓談などを行い、これから数日滞在することになる自室に案内された頃には、後数時間で日が沈むという時刻になっていた。
子供のように小柄だが、朗らかで客に対する礼儀を理解し尽くしている可愛らしいメイドが頭を下げながら部屋を出て行ったのを確認し、ベルナルドは礼儀と遠慮を取り払った声で今回の同行者を呼んだ。
「ラグ、行ったぞ」
「………可愛らしいお嬢さんでしたね~」
「確かに、こんなところに置いておくのは勿体ないな……どこかいいところに紹介してやりたいくらいだ」
「うちのブタさんのお給仕をやってくれませんかね」
「それは無理だろ」
メイドが出ていった側とは逆のドアから入ってきたラグトリフは、ベルナルドの部屋を遠慮なしにじろじろと見続けていた。今回はベルナルドの使用人として同行してもらっているので、ベルナルドとは内ドアでも外ドアでも繋がっている昔ながらの使用人の寝泊まり部屋を向こうが気を利かせて用意してくれたのだが。
これが非常に都合が良かった。
内ドアで繋がっているということは、ラグトリフの来訪を誰にも見とがめられることがない。先に部屋に案内されていたイヴァンとジュリオは部屋が足りないということで同室にされていたが、最高級ホテルのスイートにも勝るとも劣らない部屋で二人なのだ、礼は言っても文句は言えないだろう
互いに目を合わさずどうしていいかわからないといった様子の二人を部屋に置き去りにしてここに来たのだが、さてあの二人は今頃何をしているのやら。
「いい部屋ですね~ ボクの部屋よりずっと広いですよ」
「どうせあっちの部屋にはほとんどいないんだろう? クロークを確認したらエキストラベッドもあった……その…………別にこっちで寝ていっても構わないんだ……が」
「いえいえ、そこまで甘えるわけにはいきませんよ。あっちのベッドもなかなか寝やすそうでしたよ」
「そうか………」
煉瓦の赤で覆われた外見とはちがい、館の中は乳白色を基調としてシンプルな内装だった。木のぬくもりと暖かみを重視した家具類も、住む人間が落ち着いて日々を過ごすことを考えて置かれているように見える。
前の客が忘れていったのだろうか、窓際のミニテーブルにはやりかけのチェスまで置かれていた。曇り始めてはいるが、まだ差し込んでくれる冬の鋭い光を受けて輝くガラス製のチェスボード。
白の方がかなり優勢だが、まだ巻き返しは十分可能だろう。
「相手の意図は読めないが……とりあえずはこう、だな」
窓際までつかつかと歩いて行き、黒のクイーンを無造作に動かす。
次に来る客がこの続きを行ってくれれば面白いのだが、そう思いながら白の駒を次は誰がどのように動かすかを考えていると、いつの間にか後ろに暖かいぬくもり。
というか、暑苦しさと締め上げられる痛み。
後ろからラグトリフが抱きついてきている、そう理解した時にはもう逃げられないくらい強く体をホールドされてしまっていた。彼とのつきあいはかなり長い、おまけに現在は公私にわたって親しすぎる程に親しく付き合っているのだ、それこそ恋人と呼んでもいい程に。
それなのにこの男が何を考えているのか、何をしたいのかが今でもさっぱりわからなかった。
「ラ、ラグ!?」
「楽しそうですね」
「な、何がだ?」
「今回のお仕事ですよ。先程随分と楽しそうでしたし、今もチェスボードと仲良くしてらっしゃいましたよ」
窓際で後ろから抱きしめられ(ているように見える)構図は、誰かに見られるとかなりまずいことになるのだが。きっとラグトリフは自分が楽しいと思っている理由を説明しなければ、解放してくれることはないだろう。
せめて窓際から逃げだそうともがくが、腕力の差は歴然としており。
「楽しいと言えば楽しいな……これだけの大きな仕事は久しぶりというのもあるし……イヴァンが成長したのも確認できたしな。ピロータ氏が事前に来ていたのには驚いたが」
「影響力のある方なんですね」
「イヴァンのことをべた褒めしてくれたようだしな、これで余程のポカをやらない限りは俺たちに有利に話は進むだろう」
「でもそれだけではないんでしょう?」
ラグトリフが何を言わせたがっているのかはわからない。
窓の下を雪にまみれながら走っていくのは、妻の命日には毎年呼んでいるという近隣の教会で運営している聖歌隊の子供たちだろうか。ほとんどが孤児院で暮らしているメンバーの子供たちを招待し、ごちそうを振る舞い歓待するのが、当主なりの慈善事業だと話には聞いていたが。
彼らの一人が目線を上に上げないことを、それこそ神に祈るしかない。
耳をくすぐる吐息のくすぐったさに身をよじりつつ、ベルナルドは何を言えばラグトリフが満足するのかを考えながら言葉を紡いでいく。
「どうせ新しい場所の移るとしても家具は持って行くだろうが、この館にある聖母像を全て移設するのは費用の面でも大きく負担になるだろう? ならばこの聖母像は俺個人で一部を買い取らせてもらって『価値を理解してくれる客』に売るのも悪くないだろうと思ってな」
「そんなこと考えてたんですか。相変わらずあくどいですねえ」
「あくどいと言うな。イヴァンのお目付という名目だが、俺だって久々に取れた休みだ。残してきたジャンのことは心配だが……たまには俺もお前と一緒にゆっくりしたい、それにこの土地について調べてみた時に気になったことがいくつかあってな」
「気になること、ですか」
「多すぎるし、少なすぎる……買い取ることが決定する前に、俺なりの答えを見つけたい。楽しいわけではないが、疑問を残したままというのは俺の性格的に納得できないんだ」
今自分なりに楽しいと思っていることについて全て口にしてみたが、はたしてラグトリフは納得してくれるのだろうか。恐る恐る首を後ろにひねり、彼の表情を確認しようとするがフードの奥に隠された顔をうかがい知ることは出来なかった。
代わりに何故か、体を強く後ろへと引きずられる。
「ラグ?」
「まだ夕食までには時間がありますよね?」
「?」
「ベルナルドがあまりにも可愛いことをいうので、ちょっと発情しちゃいました♪」
「………は、発情?」
疑問符だらけの言葉しか発することが出来ない今の状況はどうなのかと頭の片隅でだけ冷静に考えながら、確実に自分をベッドに引きずっていこうとしているラグトリフに形だけの抵抗をし、ベルナルドは最後に窓の下を一瞥し。
そこに広がっていた光景に目を疑った。
「あいつら……何をやってるんだ?」
「どうしました?」
「いや……あれがな………」
「おや、ほほえましい光景ですね~ でもこれからは大人の時間ということで」
「あっさりと流すな! それから……夕食の時間までには……」
「盛っている犬じゃないんですから、ささっと終わらせちゃいましょう。先にシャワーでも浴びますか?」
ささっと終わらせると言っている割には随分と楽しそうだな。
そう言いたい気持ちを抑え込みながら、ベルナルドは視界から失せかけている下の光景をもう一度だけ目に焼き付け。
イヴァンは後で説教。
その言葉を脳に刻み込んだ。
____________________________
ということで、ここでみっしさんにバトンタッチ~
BGM「夢迷宮~光と闇のダンス」 by Yoko
縦にも横にも揺れ続ける車の中で時折天井に頭をぶつけながら、流れていく周囲の景色にただ目をやり続けていた。
視界に広がるのは一面の純白。
ルキーノから借りた車の粗末な暖房では、普通なら体の芯まで冷え切ってしまうのだが、今日はコートを着なくても良い程暖かかった。春までの間は枯れ枝と化している木々の隙間から差し込む日の光が暖かかったということもあるが、それ以上に男ばかりが詰め込まれた車内の暑苦しさも起因しているのだろう。
ちょっとでも隙を見せれば車体が横に滑り、どこかに激突してしまいそうになるのを絶妙なハンドルさばきで押さえ込みつつ、ベルナルドは後ろでだらだらとくつろいでいる年若い青年に声をかけた。
「イヴァン、お前が一番年下なんだ。お前が運転すれば良かっただろうに、運転は嫌いじゃないんだろう?」
「そうだけどよ……これからデカいヤマだってのに、運転なんてしてられっかよ。暇つぶしについてきた筆頭幹部サマがやりゃいいんだよ」
「その仕事を回してやったのが誰だか、覚えてるんだろうな?」
「もらっちまったらオレの仕事だ。それにテメーのことだ、オレじゃなきゃダメな理由ってヤツもあるんだろうが。コイツはともかく……ジャンのヤロウにまかせられなかったのは、金勘定の問題だろ?」
「正解だ」
樹から落ちてきたのだろう、タイヤを破裂させてしまいそうな氷の塊を器用に避けつつ、ベルナルドはイヴァンの頭の良さに内心舌を巻いていた。人の能力と心の機微を理解することにかけては天才的なイヴァンである、大体はベルナルドの意図も理解しているのだろう。
だからこそ素直にこの仕事を受けてくれたし、ベルナルドに素直に従ってくれている。
昔なら考えられなかった程の素直さを彼の成長と見て取るべきか、それとも笑顔で見送ってくれた黄金の髪を持つカポの力と見るべきか。どちらにしても人間的にも能力的にも成長する幹部がいるのだ、この組織はまだまだ伸び続ける。
後ろの座席でわずかに距離を開けて並んで座るイヴァン、そしてその隣で先程から一言も言葉を発しない存在に、優しく声をかけてやる。
ついでに自分の隣で暑苦しい程の外套を着込んだ男にも。
「寒くないか、お前たち。もう少し……あと5kmくらいだからもう少し我慢してくれ」
「逆に暑いくらいだ。バケモノに囲まれてんだからよ」
「おや、仲の良いご友人をバケモノ呼ばわりしてはいけませんよ~」
「テメーもバケモノに入ってんだよ、オレの中じゃな!」
「……そんなこと言わないでくださいよ、ねえベルナルド」
「化け物というか……なんというか………仕事なんだ、多少は我慢してくれ……ジュリオも、な」
「わかってる」
言葉少なに答え、一瞬だけ上げた顔をまた伏せたジュリオ。
ただ座っているだけのように見えても、指の先までに力を巡らせ何があっても対応できるようにしているのはさすがと言うべきか。助手席でだらんと体を伸ばしている今回の自分の同行者もきっと、警戒はしているのだろう。
CR-5の幹部が3人揃っての遠出なんて通常はあり得ないこと。
情報は出来るだけ漏れないようにしたが、予想だにしないルートで漏れるものなのだ、行動予定というものは。今回の仕事の内容を考えると出先で襲われる可能性はまず無いと踏んではいるのだが、普段はこういうことに口を挟まない我ががカポが珍しくラグトリフを連れて行けと言って聞かなかったのだ。
ベルナルドとしてはイヴァンが無事に仕事を遂行できるかを見届けるついでに自分の懐も温かくできるだけでも良かったのに、何故ジャンはジュリオだけでも十分だというのにラグトリフまでつけてくれたのだろうか。
まさか自分たちの関係に気がついて……そんなことを考えていると、ようやく山の稜線の彼方に鮮やかな色の屋根が見えてきた。
「ああ、見えてきたな。イヴァン、あれがストラトン氏の邸宅……通称『聖母館』だ」
「気色わりぃ名前……」
「フランスから招いた彫刻家が掘った聖母の像が館中に置かれているそうだ。20エーカーの大森林と煉瓦造りの施設一式、そして鉱山……これだけの資産を一気に売り払うなんて余程の事情があったんだろうな」
「金がねえなら切り売りすりゃいいだけだろ?」
「ストラトン氏は全てをやり直したいそうだ、嫌な事件のあった土地から離れて、な」
「煉瓦を運んでた日雇いのヤロウどもが失踪しちまったって話か」
「それだけじゃない、この森は広すぎて自殺志願の馬鹿者も大勢やってくるそうだ……体の弱い娘さんもいるのに医者が来づらい上に死体がごろごろ転がっている森に囲まれている場所はあまりにもよろしくない。ということで、売却を決めたそうだ」
徐々に、見た目にも鮮やかな赤い煉瓦で作られた巨大な館が近づいてくる。
ただの森林ならば買う価値はあまりないが、そこに高炉にも使える耐火煉瓦を生産できる設備と美術品であふれた館があるとなれば話は別。一刻も早く館を離れたがっている当主から安く買い叩き、欲しがっている人間に手数料込みで売却するだけで、組織を一気に潤す莫大な利益となるだろう。
問題があるとすれば今回の交渉役のイヴァンがきちんと動くかどうかと、今まさにイヴァンの隣で静かに居続けるジュリオがイヴァンをどう支えるか。これからジャンを支えていくことになる若い二人の連携にかかっているのだ。
「つまりよぉ、そのジジイをうまく脅してそこを買い付けりゃいいだけだろうが。最初から思ってたんだけどよ、そういうのはテメーの仕事じゃなかったのか?」
「俺ももう年だ、そろそろ後任を育てないとな。外回りはルキーノがやってくれるからいいが、こういう仕事をあいつに任せるのは……ちょっと、な」
ルキーノは全てにおいて優れた男だが、費用対効果という言葉をいつまでたっても理解しようとしない。どれだけ巨大な利益を上げたとしても、出費が大きければ純粋な利益は減ってしまうのだ。
彼が使う金が将来返ってくるのはわかっているが、使われる金が増えていくたびに、こちらの胃が痛くなっているのも事実。
そんな彼に巨大な金を動かす仕事を任せる事なんて、出来るわけがない。
それくらいなら役員会の反対を受けたとしても、金の重みを知り尽くしているイヴァンに教え込んだ方が精神衛生上的にも、組織の将来のためにもよっぽどためになる。自分で疑問を口にしたが、最初からベルナルドの答えはわかっていたのだろう。
ニヤニヤと笑いながら、
「オレにも当然オコボレくれるんだよな?」
と、運転席のベルナルドに向けて手を差し出してくる。
「おこぼれ?」
「テメーはテメーで、なんか儲け話があるんだろ? オレに面倒なことを押しつけるんだ、勿論少しは分けてくれるよな?」
「お前次第だな……まあ、今の俺がお前に言えることは一つだけだ」
「なんだよ?」
いぶかしげに首をひねりながら、それでも手を引っ込めないイヴァンをぴしゃりと叱責する。
「ネクタイが曲がってるぞ! ストラトン氏の信頼を得るにも、まずは見た目からだ」
「わかってるって」
「それからカフスも。お前の格好で相手はCR-5という組織を見極めるということを忘れるな。ジュリオ、そいつのネクタイを直してやれ」
「コイツになおさせるくらいなら、自分でやるにきまってんだろうが。このバカの不器用ぶり知らねーのか?」
「おや? あまり仲がよろしくないと思っていたのですけど、ネクタイの結びっこをするくらいには仲良しなんですね~」
なにげない、本当に自然なラグトリフの一言で車内が一気に静まりかえった。
ぱくぱくと口を開いてはいるが言葉を発することが出来ないイヴァンの肩を、無言でジュリオがぽんと叩く。それが合図だったかのように、一気にまくし立て始めるイヴァンをその場にいる全員が無視し、大きな雪の粒が舞い始めた空をベルナルドはじっと見つめた。
あまり雪が強くならなければいいのだが、そうなると設備の見学がしにくくなる。
「だーかーらー! オレはこんなヤツにネクタイを結んだことなんてねーし、こいつにネクタイを結ばせたりなんでできるわけねーだろうが! オレには自殺願望なんてねえんだよ、首締められて死にてーヤツがこいつにやってもらえばいいんだよ! おい聞いてんのか、そこの腹黒メガネ!」
「イヴァンさん……腹黒メガネってどっちのことですか? ボク? それともベルナルド……?」
「………………ど、どっちも………じゃ、ねーけど………よ…………」
「ボクみたいな虫も殺せない男を腹黒だなんて。ベルナルドは腹黒ですけど、可愛いところもあるんですよ」
「テメーののろけなんて聞きたくねえんだよ……」
ラグトリフとイヴァンの陰険漫才を聞きながら、そっとジュリオの様子をのぞき見る。彼のことだ、自分に見られていることなどわかっているのだろうに、目線を向けて威嚇することもせずただ自分の膝に目をやり続けている。
イヴァンの護衛兼助手としてついて行けと命令した時は素直に従ったが、彼は今何を考えているのだろうか?
それがイヴァンの今回の仕事にとってプラスになることであることを祈りながら、ベルナルドはゆっくりとアクセルを緩め始める。
ちらつき始めていた雪が、少しずつ勢いを増し始めていた。
数日分の着替えを入れたトランクが、ベッドの上にそっと置かれた。
館についてすぐ当主への挨拶と周囲の設備の見学。そしてかなりの数になっていた他の購入希望者との歓談などを行い、これから数日滞在することになる自室に案内された頃には、後数時間で日が沈むという時刻になっていた。
子供のように小柄だが、朗らかで客に対する礼儀を理解し尽くしている可愛らしいメイドが頭を下げながら部屋を出て行ったのを確認し、ベルナルドは礼儀と遠慮を取り払った声で今回の同行者を呼んだ。
「ラグ、行ったぞ」
「………可愛らしいお嬢さんでしたね~」
「確かに、こんなところに置いておくのは勿体ないな……どこかいいところに紹介してやりたいくらいだ」
「うちのブタさんのお給仕をやってくれませんかね」
「それは無理だろ」
メイドが出ていった側とは逆のドアから入ってきたラグトリフは、ベルナルドの部屋を遠慮なしにじろじろと見続けていた。今回はベルナルドの使用人として同行してもらっているので、ベルナルドとは内ドアでも外ドアでも繋がっている昔ながらの使用人の寝泊まり部屋を向こうが気を利かせて用意してくれたのだが。
これが非常に都合が良かった。
内ドアで繋がっているということは、ラグトリフの来訪を誰にも見とがめられることがない。先に部屋に案内されていたイヴァンとジュリオは部屋が足りないということで同室にされていたが、最高級ホテルのスイートにも勝るとも劣らない部屋で二人なのだ、礼は言っても文句は言えないだろう
互いに目を合わさずどうしていいかわからないといった様子の二人を部屋に置き去りにしてここに来たのだが、さてあの二人は今頃何をしているのやら。
「いい部屋ですね~ ボクの部屋よりずっと広いですよ」
「どうせあっちの部屋にはほとんどいないんだろう? クロークを確認したらエキストラベッドもあった……その…………別にこっちで寝ていっても構わないんだ……が」
「いえいえ、そこまで甘えるわけにはいきませんよ。あっちのベッドもなかなか寝やすそうでしたよ」
「そうか………」
煉瓦の赤で覆われた外見とはちがい、館の中は乳白色を基調としてシンプルな内装だった。木のぬくもりと暖かみを重視した家具類も、住む人間が落ち着いて日々を過ごすことを考えて置かれているように見える。
前の客が忘れていったのだろうか、窓際のミニテーブルにはやりかけのチェスまで置かれていた。曇り始めてはいるが、まだ差し込んでくれる冬の鋭い光を受けて輝くガラス製のチェスボード。
白の方がかなり優勢だが、まだ巻き返しは十分可能だろう。
「相手の意図は読めないが……とりあえずはこう、だな」
窓際までつかつかと歩いて行き、黒のクイーンを無造作に動かす。
次に来る客がこの続きを行ってくれれば面白いのだが、そう思いながら白の駒を次は誰がどのように動かすかを考えていると、いつの間にか後ろに暖かいぬくもり。
というか、暑苦しさと締め上げられる痛み。
後ろからラグトリフが抱きついてきている、そう理解した時にはもう逃げられないくらい強く体をホールドされてしまっていた。彼とのつきあいはかなり長い、おまけに現在は公私にわたって親しすぎる程に親しく付き合っているのだ、それこそ恋人と呼んでもいい程に。
それなのにこの男が何を考えているのか、何をしたいのかが今でもさっぱりわからなかった。
「ラ、ラグ!?」
「楽しそうですね」
「な、何がだ?」
「今回のお仕事ですよ。先程随分と楽しそうでしたし、今もチェスボードと仲良くしてらっしゃいましたよ」
窓際で後ろから抱きしめられ(ているように見える)構図は、誰かに見られるとかなりまずいことになるのだが。きっとラグトリフは自分が楽しいと思っている理由を説明しなければ、解放してくれることはないだろう。
せめて窓際から逃げだそうともがくが、腕力の差は歴然としており。
「楽しいと言えば楽しいな……これだけの大きな仕事は久しぶりというのもあるし……イヴァンが成長したのも確認できたしな。ピロータ氏が事前に来ていたのには驚いたが」
「影響力のある方なんですね」
「イヴァンのことをべた褒めしてくれたようだしな、これで余程のポカをやらない限りは俺たちに有利に話は進むだろう」
「でもそれだけではないんでしょう?」
ラグトリフが何を言わせたがっているのかはわからない。
窓の下を雪にまみれながら走っていくのは、妻の命日には毎年呼んでいるという近隣の教会で運営している聖歌隊の子供たちだろうか。ほとんどが孤児院で暮らしているメンバーの子供たちを招待し、ごちそうを振る舞い歓待するのが、当主なりの慈善事業だと話には聞いていたが。
彼らの一人が目線を上に上げないことを、それこそ神に祈るしかない。
耳をくすぐる吐息のくすぐったさに身をよじりつつ、ベルナルドは何を言えばラグトリフが満足するのかを考えながら言葉を紡いでいく。
「どうせ新しい場所の移るとしても家具は持って行くだろうが、この館にある聖母像を全て移設するのは費用の面でも大きく負担になるだろう? ならばこの聖母像は俺個人で一部を買い取らせてもらって『価値を理解してくれる客』に売るのも悪くないだろうと思ってな」
「そんなこと考えてたんですか。相変わらずあくどいですねえ」
「あくどいと言うな。イヴァンのお目付という名目だが、俺だって久々に取れた休みだ。残してきたジャンのことは心配だが……たまには俺もお前と一緒にゆっくりしたい、それにこの土地について調べてみた時に気になったことがいくつかあってな」
「気になること、ですか」
「多すぎるし、少なすぎる……買い取ることが決定する前に、俺なりの答えを見つけたい。楽しいわけではないが、疑問を残したままというのは俺の性格的に納得できないんだ」
今自分なりに楽しいと思っていることについて全て口にしてみたが、はたしてラグトリフは納得してくれるのだろうか。恐る恐る首を後ろにひねり、彼の表情を確認しようとするがフードの奥に隠された顔をうかがい知ることは出来なかった。
代わりに何故か、体を強く後ろへと引きずられる。
「ラグ?」
「まだ夕食までには時間がありますよね?」
「?」
「ベルナルドがあまりにも可愛いことをいうので、ちょっと発情しちゃいました♪」
「………は、発情?」
疑問符だらけの言葉しか発することが出来ない今の状況はどうなのかと頭の片隅でだけ冷静に考えながら、確実に自分をベッドに引きずっていこうとしているラグトリフに形だけの抵抗をし、ベルナルドは最後に窓の下を一瞥し。
そこに広がっていた光景に目を疑った。
「あいつら……何をやってるんだ?」
「どうしました?」
「いや……あれがな………」
「おや、ほほえましい光景ですね~ でもこれからは大人の時間ということで」
「あっさりと流すな! それから……夕食の時間までには……」
「盛っている犬じゃないんですから、ささっと終わらせちゃいましょう。先にシャワーでも浴びますか?」
ささっと終わらせると言っている割には随分と楽しそうだな。
そう言いたい気持ちを抑え込みながら、ベルナルドは視界から失せかけている下の光景をもう一度だけ目に焼き付け。
イヴァンは後で説教。
その言葉を脳に刻み込んだ。
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ということで、ここでみっしさんにバトンタッチ~
BGM「夢迷宮~光と闇のダンス」 by Yoko
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
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