こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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神様の嫁候補となった高校生の元親と、わざわざ近所まで引っ越してきちゃった神様の松永さん、松永さんの眷属である愉快な毛玉コンビ佐吉と竹千代が織りなすぐだぐだライフ。ヤンデレ従兄弟の毛利さんは今回お休みです。前作までを知らなくても読めます。それでもよろしければどうぞ。
書いた人:みっしー
*****
「おつかいをしてきてくれないかね?」
「くれないかね?」
「かねかね?」
「…最後の方、略し過ぎてよくわかんねーぞ…」
それはとある日曜日のこと。回覧版片手に、つい最近、隣人となった松永宅へ赴いたときの事だった。どういう訳か、以前よりも夜勤の回数が減り、家にいることが多くなった母から「時間があるなら松永さんのところに回覧版を届けてちょうだい。」と頼まれ渋々と元親は承諾した。家にいる時間は少ないとはいえ、長曽我部家における家庭内ヒエラルキーの頂点は今も昔も母である。家庭内実力者である母に逆らう人間がいるものか。いや、いない。という訳で、家庭内ヒエラルキー最下位を自負する長男元親はつい最近引っ越してきたナイスミドルなダンディと毛色の違うちびっこ二人が住まう松永宅を訪れたのだった。
つい最近引っ越してきたとは思えないほど既にご近所になじんでいるこの3人が、実は人間ではないということに気が付いているのも知っているのも元親だけだろう。まさか自称神様とその眷属である二匹の毛玉が気まぐれで人間に紛れて生活しているとは思うまい。そもそも神様という存在すら元親だった信じてはいなかった。神様の花嫁(候補)にあるという現実がなければ、きっと信じないに違いない。
さよなら日常、こんにちは非日常。
うっかり左目の眼帯をはずしてしまえば、魑魅魍魎が視界に入る生活が待っている。ただ、こうして見えるようになってからわかったことだが、彼らはみための怖さに反してなにもしないものも多い。ただ見た目は怖い。否定できないぐらいに怖い。いらんオプションを付けた松永を恨みつつ、とりあえずは何事もなく過ごせることを元親は願った。
ちょうど良いところだった、と玄関先で松永に出会うや否や、昔の時代劇のように良いではないか、良いではないか、あーれーと言わんばかりの勢いで元親が引きずり込まれたのである。
「もとちか きた」
「よめ きた」
「よめいり?」
「けっこん?」
がっしりと松永に腰を掴まれ、たどり着いたのは松永邸のリビングだった。リビングでは竹千代と佐吉がなにやら絵を描いて遊んでいたらしく画用紙とクレヨンが散乱している。元親が来たことに気づいた二人は笑顔で駆け寄るが、発言のほとんどはろくでもないものだった。
「…なんでおまえ等俺の顔を見る度に嫁入りの話になんの?」
「そりゃあ、私が常々言い聞かせたからじゃないかね。」
いつのまに準備したのやら、ちゃっかりお茶一式を準備したらしい松永が台所からやってきたところだった。
まぁ座りたまえ、と元親に対してソファに座るよう促す。それを見習ってかちび二人は先に座って同じように促す。
「まぁまぁ」
「どうぞどうぞ」
体は小さいのに一人前であるかのように大人と同じ振る舞いをするその姿はなんとも言えず愛らしいと元親は思う。だが騙されてはいけない。この二人の正体は人外。そしてその本体は毛玉だ。とはいえ今のところ元親に対しては無害な二人に促されるまま、恐る恐る元親はソファに座り、松永から茶を受け取る。
「ちょうど知覧のお茶が手に入ってねぇ。ここの茶は絶品だよ。」
「あまいものあれば」
「もっといい」
そういいながらも佐吉と竹千代も茶をすする。
「…っていうか俺疑問だったんだけどさ…神様とかって、ふつうのメシ食う必要ってあるのか?」
引っ越してきた直後に、長曾我部家に引っ越し蕎麦を持ってきた時から気になっていたのだが、そもそも人外って人間と同じものを食べる必要があるのだろうか。ずーっと考えていた疑問を元親が口にすると、答えはすぐに返ってきた。
「せっきょくてきには」
「たべなくてもいい」
「さきち くろいのしろいのたべる」
「たけちよ くろいのしろいのたべる」
「でもくろいのおいしくない」
「にんげんのごはんおいしい」
「おいしい すごい」
「いうことなし」
「…何となくはわかるが何となくしかわからねぇ…!!」
満面のどや顔で言ってくれる佐吉と竹千代には申し訳ないが肝心の内容が半分程度しか理解できなかった元親は思わず俯き、頭を抱える。するとそんな元親を慰めようとするように松永の手がよしよしと言いながら頭を撫でた。
「…知的好奇心が旺盛なのは良いことだよ、我が花嫁殿。」
「…だから嫁じゃねぇって…。」
未だに頭を撫で続ける松永は満足げだが、撫でられ続ける元親はあまり面白くない。これではまるで子供扱いではないか、とは思いつつも悔しいので口には出せないのだが。
「佐吉と竹千代が糧とするのは、まぁ簡単に言えばの陰の気と陽の気だよ。」
「いんのきとようのき…?」
松永が口にした聞き慣れない言葉に元親は首を傾げる。松永はそんな元親を見て頷く。
「人間に限らず、この世界はすべて陰と陽で成り立っている。佐吉と竹千代はその、陰と陽の崩れたバランスを元に戻すのが主の役割だ。故に彼らの糧は陰の気と陽の気となる。…まぁ彼らの味覚によるとあまり美味しいものではないらしいがね。」
松永の説明にうんうんと佐吉と竹千代は頷いた。
「くろいのまずい」
「しろいのおいしい」
「ほそいのまっくろ」
「ほそいのまずい」
後半は特定人物への罵倒になっているのは気のせいだろうか。そしてその人物に対して多少なりとも心あたりのある元親は恐る恐る佐吉と竹千代に問いかけた。
「…細いのって…まさか…」
「もとちか しんせき ほそい」
「あれ だめ まずい まっくろ」
「…やっぱりかあああああああ!!!元就かああああああ!!」
どこか精神的に不安定な、そして先日神社で毛玉に散々なめに遭わされたらしい従兄弟の元就を思い出す。まぁ元はといえばいきなり松永にカッターナイフを向けた元就が悪いのだが…しかし元を正せば自分が松永とともにいたことが原因ではあるし…、とぐるぐるとまとまらない思考に委ねていると、ふと自分の頭に触れる手に気が付いた。そうして優しく声が紡がれる。
「考えすぎない方がいい。君の従兄弟殿には悪いが、彼は負のものにとりつかれていたからねぇ。あの子たちに頼んである程度『食べて』もらったんだよ。あの日の彼には神社に来たという記憶すら残さずにね。…ただ相当に根深いものだったようだがね。まぁ、君が気にする事ではないと私は思うのだが。」
「ではないと」
「おもうのだよ」
いつのまにか佐吉と竹千代も加わって元親の頭をぽんぽんと叩く。幼児特有の柔らかい手で頭を撫でられるのがとても不思議な感覚だ。
「つんつん ふわふわ?」
「つんふわ?」
一方の佐吉と竹千代は元親の髪の毛の感触が思いの外お気に召したらしく、当初の目的とは違った意味でさわり続けている。かなり柔らかい元親の髪の毛は正直言ってワックスで立てなければ立たない。ワックスで固まった部分のつんつんした触感と後ろの柔らかめの触感がとても気に入ったらしく二人はいつまでもさわり続ける。
「おいおまえ等いい加減に…って何だそれ…」
さすがに触られ続けられるのも落ち着かず、元親が二人の手を掴んで止めると、二人の頭部にあり得ないものがぴょこんと生えていた。―それは、獣の耳だった。佐吉の頭には銀色のとんがった耳、竹千代の頭には金色の丸みを帯びた耳がそれぞれ生えていたのだ。
「な、な、何だそれええええええ!?」
戦慄く元親の指さす方向を見て、二人はようやく今の自分たちの状態に気がついたらしく、顔を見合わせる。
「うーん しっぱい」
「うっかり しっぱい」
腕を組んでうーんと考えている幼児の姿は可愛らしいが頭からは獣の耳、それに加えてよくよく見ればTシャツの裾から銀色のしっぽと金色のしっぽがはみ出ている。
(そうして今気がついたが二人が着ているTシャツにはなぜ「目指せニート」、「働きたくない」と書いているのだろうか。というか誰の趣味だ。)
「ああ、お前たち。またやったのか。」
唯一事情を理解している松永だけは涼しい顔でいつの間にか茶を啜っている。
「また、って…どういう意味だよ!?」
慌てて隣に座る松永に詰め寄ると、彼はごく普通であるかのように言った。
「まだまだこの子たちは未熟でね…、感情が一定の幅を超えると人間の姿を保てなくなる。今のは君の頭を触っているうちに楽しくて興奮したんだろう。」
互いの耳を触って遊んでいた佐吉と竹千代が松永の声に大きく頷く。
「まつなが あたり」
「さすが としのこう」
「…一体そういうところは誰に似たんだい?お前たち。」
あまり主を敬う気配の無い佐吉と竹千代に対し、一見平静を装いつつも松永はあまりに遠慮のない言動に軽くため息をつきながら額に手をやってなにやら考え込む様子を見せる。とはいえ本気で悩んでいる訳ではなく、楽しんでいる様子すらうかがえるのが松永が松永たる由縁なのだろう。
「…俺の頭って…」
毛玉も撫でたくなる頭ってどんな頭なんだ、俺の頭。やっぱり放っておいたら髪の毛四方八方にのびるぐらい癖毛だからあいつらも触ってて楽しいのかな、と元親は結構見当違いの事を考えていた。
「…さて、本題に入ろうか。」
ようやく獣の耳が消えた佐吉と竹千代の頭を撫でて確認していた元親とそんな彼にされるがままで気持ちよさげに目を細めていた佐吉と竹千代に松永から声がかけられる。
そうして話は冒頭に戻る。
先ほどとは対照的にソファに座る松永と、その正面のソファに座らされている元親。そうして元親の足下で正座をしながら元親を見上げる佐吉と竹千代、という構図ができあがっていた。
「…そもそもおつかい、ってなに?」
「おつかいは おつかい」
「むずかしく ない」
「こわくない こわくない」
「だいじょうぶ だいじょうぶ」
「…そこまで言われると逆にこえぇよ!!」
左右から畳みかけるように言われると、なかなかの迫力がある。
「おつかいはおつかいだよ。…そしてこれは、君にしか頼めないことなんだ。」
そう言って松永はいつの間に出したものなのか、球体を手のひらに乗せていた。
大きさはおよそ10センチぐらいだろうか。
色はない。ただ丸いだけの球体だった。
「これを、ある場所まで届けてきて欲しい。それが今回のお使いだ。もちろん用心もかねて佐吉と竹千代も連れていってもらう。」
「あんしん ようじん」
「おしごと おしごと」
松永の説明に同意するかのように佐吉と竹千代はうんうんと頷く。
「もとちか いっしょ」
「おしごと いこう?」
そうして上目遣いで元親の服を引っ張ってくる佐吉と竹千代。見た目だけなら大変可愛らしい幼児である上に上目遣いだ。並大抵の人間なら、これだけでK.Oされるだろう。それぐらい、彼らは大変可愛らしかった。
「…本当に、それだけでいいんだな?」
念を押すように、緊張した面もちの元親が言うと、佐吉と竹千代は心底嬉しそうにわらった。彼らはただ、いろんな意味で大好きな元親と出かけられるのが楽しくて仕方がなかったのだ。そんな3人を見て、松永は「真剣に考える私の嫁は本当に可愛い」としか思っていなかった事は、ただの余談である。
一応、松永宅を出た後に一度自宅に寄り、母からお使いに行くことになったと伝えたところ「松永さんの所は男所帯で大変だものねぇ。あなた暇ならちょうどよかったじゃない。」と笑顔で送り出されてしまった。…休日の息子の人権なんて母の意志一つでどうにかなってしまう危ういもんである。せめて元親がバイトでもしていれば違うのだろうが、元就がそばにいる限りは無理だろう。今日は何やら部屋にこもって調べものでもしているから特に介入されないが、日頃であれば元親に他者が近づく事を厭う元就は、その近づいた他者を、きっと、二度と近づけない程に追いやるだろう。どこまでも、自分に執着する従兄弟を、元親はどうしようもないのだとずっと思っていた。
彼をそう追いやってしまったのは、自分のせいなのだからと。
「もとちか しわ」
「みけんに しわ」
「かんがえごと」
「よくない」
歩きながら、ぼんやりと考えていたそれが表情に出ていたのだろうか。手をつないで歩いていた佐吉と竹千代から指摘されてしまった。
「あ、ああ…悪ぃ。」
夏の日差しはなかなかに眩しく、手を繋いでいるのも暑いぐらいなのだが、なぜか二人は元親の手を掴んで離さなかった。
「おしごと だいじ」
「もとちか だいじ」
「どっちも」
「だいじ」
とのことだかららしい。大事という意味合いがどの程度なのかはわからないがその心遣いは嬉しい。ただ、今は暑かったが。
松永のお使いということで、3人がより向かうことになったのは近所の商店街の裏にある稲荷神社だった。この神社に人はいない。無人の神社なのだが、なぜそこに行かなくてはいけないのかまでは松永も説明はしてくれなかった。
そして3人は今まさに商店街を歩いていた。日曜日ということもあり、今日は定休日の店も多い。それでも佐吉と竹千代は物珍しそうにきょろきょろと見やる。
「そんなに珍しいか?ここ。」
元親にとっては子供の頃からなれ親しんだ場所故にそれほど物珍しさは感じないが、二人は別らしい。
「はじめて はじめて」
「しょうてんがい はじめて」
ぱたぱたと手足をばたつかせてその動きから表情から喜びがにじみ出ている佐吉と竹千代だが、元親はその言動に目を剥く。
「はじめて…って今まで外に出たことは?」
「「ない」」
珍しく発言が被った二人は首をそろえて頷いた。姿形が同じだったらまるで双子のようにも見えただろう。いや姿形が異なっている今でも、彼らはとてもよく似ていた。主に、その振る舞いが。
「さきち たけちよ しゅぎょうちゅう」
「まつなが おやしき しゅぎょう」
「ずーっと しゅぎょう」
「ずーっと ずーっと しゅぎょう」
「だから そと でない」
「いっつも けだま しゅぎょう」
「こんかい とくべつ」
「おつかい とくべつ」
元親の左手を佐吉が、元親の右手を竹千代がつなぎ、二人は交互に話しかける。その表情に他意はないようで、また話を察すると二人は普段は毛玉の姿で人間の姿になることはほとんどなく、何の修行かはわからぬが修行中であり、また滅多に外にも出ていないらしい。出せない理由があるのかまでは元親は聞いていないが、恐らくは修行中という部分が大きく関わっているのだろう。ほかの部分は知らないが、喜怒哀楽によって耳が生えたりしっぽが生えたりする存在は野放しにはできないだろう。
「…そっか、お前等修行してんのかぁ。」
元親がそう言うと二人は同時に頷く。シンクロし過ぎだろうこの二人、と改めて思ったのは秘密である。
「いちにんまえ めざす」
「しゅぎょう そのため」
えいえいおーとそれぞれ空いてる左手と右手を掲げる二人だが、ふと元親は胸に浮かんだ疑問を口にする。
「…なぁ。お前等はなんで、松永と一緒にいるんだ?」
眷属だと、松永は言った。
神を自称する彼の眷属は、どのような経緯で行動を共にしているのかとふと思ったことから生じた疑問だった。
元親の問いに対して二人はうーんと首を捻ると言った。
「…ずっと?」
「…まえから?」
拙い二人の言葉を総合すると、二人は誕生したときから松永の元で育てられた。そうして己が持つ力を学んだ。だけれども人間に関する事はまだまだ勉強中だということだろう。多分。だけれども元親が気になったのは最後の一言だった。
「…神様は、人間が、わからない、か…。」
だけれども松永は違うと、松永は人間が好きな神様なのだと二人は言う。それがなぜかは知らないようだったが。
何で松永は、人間の子供の言うことを真に受けて本当に嫁にしようと思ったんだろうか。今更ながら、不可解だと思う。どうして、なんてそんなことは松永本人でなければわからないのだろうけれど。お稲荷さんまであと少しとなった道を歩きながら元親は考えていた。
数年ぶりに訪れたお稲荷さんは子供の頃に見た姿とあまり変わらない姿を保っていた。近所の町内会の人間がこまめに清掃しているおかげのようだ。よくよく見ればおいなりさんをお供えしている人もいる。小さい社ではあるのだが、昔からある場所であるが故に人々の信仰心も根強いものがあるのかもしれない。
「もとちか こっち」
「こっち こっち」
佐吉と竹千代に手を引かれるままに歩みを進めていく。そうして二人は社の裏手まで引っ張るととある箇所を指さす。
「ここ いれる」
「いれれば おっけー」
「…本当にお前等どこでそんなのおぼえてくんの…?」
ぐっとゆびを立てる二人を見ていると何とも言えない脱力間に襲われながらも元親は松永から預かった球体をその場所に置いた。
―特に、なにも起こらなかったが。
「…本当に、これでいいのか?何も起こってないけど。」
あまりのなにもかわらなさに腕を組んで唸る元親に佐吉と竹千代は頷く。
「おっけー おっけー」
「おこるの たいへん」
「こんかい あいさつ」
「これで おっけー」
どうやらなにも起こらないことこそ良いらしい。
「まぁ、それで良いならいいけどよ…」
なにも起こらなかったことに拍子抜けしつつ、元親は佐吉と竹千代とその場を離れる。結局、松永がなぜ自分を寄越したのかという意図がわからぬまま。
そうして行きとは異なり公園を横切って帰っているさなか、ふと佐吉と竹千代が足を止める。何事かと思って元親も歩みを止め、ふと二人の視線の向く先を見やる。
視線の先にアイスキャンデー屋があった。
「ああ…あそこか。」
夏の間だけ回転する移動販売方式のその店は元親も買ったことがある。しゃれた味ではないが、果物の味がなんとも美味で学校帰りに買い食いしたものだ。今年もそんな季節がきたのか、そう思いながら改めて二人を見ると、足下に涎の海が出来ていた。
「ちょっと待て!?お前らなんでそんなことになんの!?」
「…うまいのか?」
「…よいものか?」
未知なるものへの好奇心と言うか食欲が勝ったらしいふたりはわずかな間で涎を大量に発生させたらしい。
「…しゃーねーか…」
二人の手を引き、アイス屋の前に赴くと「どれがいい?」と尋ねる。
「きいろ!」
「むらさき!」
と元気よく指さす二人に苦笑しながら「レモンとグレープください。」と小銭を渡しながらおっちゃんに頼むと、笑いながら渡してくれた。そうしてそれをさらにふたりに渡す。その瞳は初めて見たらしいアイスキャンデーに夢中だ。店の前で食べるのもなんだろうということで、足芳養に動きながらこう園内に備え付けられていた木陰のベンチに3人並んで座る。
「…これが あいすきゃんでー…」
「…これが…いただきます…」
そう言いながら二人はがぶっとかじりついた。
「!?あまくて つめたい」
「…つめたく あまい!?」
そうしてかじった直後、ボンっと音を立てて獣の耳としっぽが出現した。
「おおおおお!?お前等!?ここじゃ見えちゃいけねぇもんがいろいろ出てるからな!?それわかってるか!?」
「…はっ…うっかり」
「おそるべしうまさ…」
慌てて耳をしまおうとするも、目の前のとけかけアイスキャンデーが気になって仕方ないらしく、目線が完璧に泳いでいる。あわわあわわと慌てふためく二人に対してとっさに目に入ったTシャツのフードを被せる。
「…いいか、これは応急処置だからな。アイスキャンデー食ったら急いで帰るぞ!!いいか!!」
「りょうかい もとちか」
「ありがと もとちか」
そう言いながら二人はすこしだけ安心した様子でアイスの続きを食べていく。
そうして元親は、Tシャツにフードついてて良かったと心底感謝したのだった。もし帽子がなかったら「ファッションです。」で乗り切らなければならなかっただろう。しっぽはまだファッションで何とかなっただろうが、頭はかなり厳しい。そうして元親はそこで、もしかして松永がフード付きの服を着せていたのはそのせいなのか、とふと思ったのだった。
そうして食べ終わった二人に声をかけて一緒に帰ろうとしたときだった。
「…おなか へった」
「…もっと すいた」
ぽつりと佐吉と竹千代が呟いた。空腹時に下手に何かを口にすると、かえって空腹になるようなものだろうか。
「ん?帰って松永におやつでももらうか?」
あの見た目で料理全般が得意なんで詐欺としか思えないが松永の料理の腕は確からしい。作りすぎたから、とかの理由でクッキーやらスコーンやらをよくお裾分けでもらう。
「「それとは ちがう」」
めずらしく二人同時に声を発したかと思うと、ゆっくりと首を元親に向けて動かし、その視線を元親に向ける。
「…たべて いい?」
「もとちか たべて いい?」
そうしてその目は、元就に対して見せたのと同じく、妖しい輝きを放っていた。
「もとちか まっしろ」
「しろいの おいしい」
声はいつもと同じく高い子供特有の声なのに、その口から紡がれる内容が不穏すぎる。そうして、元親の体はというと金縛りにでもあったかのように動かない。動かない上に声すら出ない。二人は本気だ。本気で元親を食べる気だ。動かなくなった元親の姿を見やると二人は顔を見合わせて言った。
「「いただきます」」
―あ、俺マジで食われる?
そう、人生の終わりを覚悟したときだった。
「…人のものに手を出すほど、変な餌は与えていないつもりだがねぇ。」
「…ちっ」
「…ちっ」
突然現れた松永によって首根っこをひっつかまれ、宙ぶらりんにつられる佐吉と竹千代の姿があった。
「まつ、なが…?」
ようやく緊張が解けてきたのか、座っていた体がようやく動くようになってきたことに安堵しながら、それだけを発した。
「すまなかったね。…やはり、まだ外に出すべきではなかったか。」
そう言ってまた松永は屈んで目線を合わせると左手で二人を抱えると右手で元親の頭を撫でた。いつもと変わらない、やさしい手だった。
「…子供扱いすんな。」
「それだけ言えるなら大丈夫そうだね。」
何とも胡散臭い笑みを浮かべると松永はそう言って、とても楽しそうにわらった。
「ひとまずは、戻りながら話そうか。」
そうして松永は自身の右手を元親に差し出した。言われるがままなのは悔しかったけれども、差し出された手に悪意は無かったと思うので元親はそれを受け入れた。
あの子たちには人間のことを教えている最中なんだよ、と松永は言った。人の気を養分にする二人だからこそ人間のことをよく知っているべきだと松永は思い、二人に教えているらしい。力の扱いこそましになってきたが、それ以外はやや微妙なものがあるらしい。
「まぁ最初は二人とも獣同然だったからねぇ。それを思えば今なんて可愛いものだよ」
と松永は涼しい顔で言っていたが、その獣同然の二人にいったいなにをして今に至らせたのかが逆に元親は怖かった。恐らくは並大抵の事ではない。それが顔に出ていたのだろう。松永は「世の中には知らない方がいいこともあるのだよ」と胡散臭さ前回の微笑みで言ったので、恐らくは聞かない方がよいのだろう。うん。
そうして松永は続ける。
「この世の中は陰と陽で成り立っている。どちらかが多すぎてもどちらかが少なすぎても成り立たない。そうして先に行ったように偏りすぎたそれを食べることでバランスを改善させるのがあの子たちなんだがね…」
陰の気はともかく、陽の気に満ちた人間はあまりないらしい。だからしろいのはおいしいと二人は言うが、あれはその存在そのものへの希少性意味していたのかもしれないね、と松永は言う。
「そうして、大変申し訳ないが、君自身が元々陽の気に満ちている。あの子たちを含めた妖には、君は、よい餌なんだよ。」
「…は?」
初耳である。正直その瞬間の元親はとんでもなく情けない顔をしていたとも思う。だけれどもびっくりしたのである。元親の反応すら想定内だったのか、松永はハァと珍しく溜息を吐きながら言った。
「…だからあの社に行ってもらったんだよ。あそこの主は昔からの知り合いだから融通もきくものだから。まぁそれとは別にもう一つ、君が私の嫁になるからよろしく頼むという挨拶もこめて…」
「…ちょっと待てええええええ!!なんつった!?特に後半!?」
「ん?昔なじみの稲荷神に、挨拶にいってもらっただけなのだが…何か不都合でも?」
「不都合っていうか…何で前もっていわねーんだよ!!」
「前もって言ったら恥ずかしがって結局行かないだろう?君は。」
「ぐ………」
元親以上に元親の事を知っているのではないかと思われる松永の言動はきついものがある。事実である分、なおさらだ。
「この地で暮らすのであれば、尚更この土地を守ってきた神に挨拶するのは当然だからね。まぁ君は元々この土地の住人ではあるけれど、念のために行ってもらったんだ。あそこの稲荷神は…まぁ振る舞いはなんだが、人が好きな、奴だよ。うん。」
「今何で目ぇ逸らした…」
一体自分たちが暮らす場所の神様ってどんだけ変わり者なんだろう、と思った瞬間だった。
「もとちか ごめん」
「すっごく おいしそうだった」
「がまんできなかった」
「ごめんね きをつける」
松永の肩でぴょこぴょこ跳ねるのは、松永によって人間の姿から本来の毛玉に変えられた佐吉と竹千代だった。
「お前たちはもう少し落ち着きを覚えなさい。あとこれは私の嫁だから食べるのは私だけだ。これも覚えておきなさい」
「うー りょうかい」
「うー むねん」
「今さらっととんでもないこと言ったぞこのおっさん…」
食べるってなんだ食べるって。物理的な意味で食べるのか、このおっさん。
そんな元親の心を見透かしたかのように松永は笑う。
「さぁねぇ」
それは日頃見せる胡散臭い笑みとは少しだけ異なるものだったのだけれど、それに気づいた人間はこの場にはいなかった。
わからないことばかりだったおつかいを終えて、松永宅に帰宅した後、毛玉がじーっと元親を見ていった。
「…もとちか ふともも」
「もとちか にのうで」
「「おいしそう」」
「お前ら食うなよ!?絶対食うなよ!?」
爛々とした目で自分を見る毛玉に恐怖を覚えたのだった。
そうして。佐吉と竹千代のお絵かきで「おでかけおもいで」としてアイスキャンデーの絵が書かれ続けることになる。そしてしばらくの間、二人のおやつのリクエストがアイスキャンデーだったことは、言うまでもない。
長曾我部家のお隣には大変ナイスミドルなダンディと大変愛らしい幼児が住んでいる。幼児の名前は佐吉と竹千代。その正体は神様の眷属(ただし毛玉)。
基本的に無害だけれども、ちょっとだけ食い意地が張っていて色々食べそうにはなるけれども、元親が大好きであることは間違いない。
○毛玉っほいのターン。
次回は毛利さんがハンカチ噛む話の予定。
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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