こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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元親緑ルート後前提の三親で毛長。死ネタ含みますので苦手な方はご注意下さい。
ですが、内容自体はシリアスではないです。これ始めての戦国設定かもしれないです。いやっほーい。
○前提
①三成は長曾我部軍に所属
②三成と毛利は面識は無し、でも毛利は大谷経由で三成を知っている
③大谷さんは亡くなっても三成大好き
④アニキが女々しい豆腐メンタル。
でよろしくお願いします。
只今手元に3が無いのでストーリーが確認出来ず、
本編との矛盾点多々あるかと思いますが、目を瞑ってくださるとありがたいです。
書いた人:みっしー
*****
石田三成が、長曾我部軍に身を寄せるようになって幾月か経った。
当初は自分のなすべきこともわからぬまま、ただぼんやりと過ごす日々。
そんな自分をあれやこれやとひっぱり回したのが対象でもある長曾我部元親だった。良くも悪くも豪快な男の行動は、休むまもなく無理難題を叩きつけるかの如く、三成にとっては不可解なものが多かった。
だがそれによって、終わりのない思考の渦にとらわれなくなったことには感謝したいと思う。
天下の騒乱も遠い四国までは聞こえてこず、凶王と呼ばれ、戦の只中にいたのが嘘のような日々。ひょっとすると、在りし日の豊臣にいた頃と同じぐらい、静かに過ごせているのかもしれない、と三成は思う。最も当時とは異なり、中仕事の比重がかなりを閉めているのだから一概に比較することは出来ないかもしれない。
現在、三成が世話になっている長曾我部軍は、大将であり、三成を引き入れた張本人でもある長曾我部元親をはじめとして大変気の良い人間が揃っている。そろいも揃って豪快な海の男、という感じであった。だが、同時に長曾我部軍には重大な欠点が存在していた。
実働する人間は数多いものの、内政を補佐する人間が極めて少なかったのだ。これには大将である長曾我部元親本人が内務を半ば放棄し、海に出たり、趣味である謎の機械作りをしていたことも大いに関係はあるのだろう。
今まで国の財政やら何やらが傾かなかったのは奇跡としか言いようが無い、と実情を知った三成は思った。
―どれだけどんぶり勘定なのだ、この国は。
豊臣にいた頃は、半兵衛様が秀吉様の分まであれやこれやと多大かつ膨大な指示を飛ばしていたことを思い出す。自身が有能な副官などとはおこがましくていう事は無いが、任された以上は出来る限り、いやそれ以上の事をやろう。
―見ていてくだされ秀吉様、半兵衛様、刑部…!!あなた方の志は、私が受け継ぎます…!!
今はもういない。亡くしてしまった大切な人々への誓いを胸に、三成は1人決意した。
そうして、長曾我部軍では、内政を嫌がる当主を引きずり回す三成の姿が頻繁に見られるようになったのだった。
「…なぁ石田ー、これ後回しってやっぱ駄目か?」
数多の書簡に囲まれ、若干うんざりした様子の元親が三成に問う。
「馬鹿か貴様。物事の優先順位を考えろ!!こちらを先にしなければ、後の計画全てに支障が出る!!どう見てもこちらからやっておくべきだ!!」
長曾我部元親という男は、不思議な男だった。
内政の仕事は、やれば出来るのに、あまりやらない。
それよりも部下と共に海に繰り出したり、新たな機械を作り出すことに熱中する。
かつて、四国壊滅の際は酷い荒れようだったと聞くが、今ではそれはすっかりなりを潜めていた。
豪快で同時に酷く単純で、他者に対しては面倒見が良い、純粋な男。
こどもがそのままおおきくなったようなおとこだと、三成は思っていた。
かつての主君である秀吉とは全くもって違うこの男だが、それでも嫌いではなかった。
「…こんなに、ちゃんと仕事やれ、って言われんの久しぶりだ。」
ふと、全ての書簡を書き終わったらしい長曾我部が筆を置く。どこか懐かしさを感じさせるその響きは何故か三成の胸に残った。
「…?以前はいたのか?貴様の補佐をする文官が。」
そう尋ねると、長曾我部は滅多に見せない、どこか寂しげな顔で首を横に振る。
「いや。違う。補佐じゃない。…そもそもうちの人間じゃなかった。」
他国の人間がわざわざ世話を焼いていたのだろうか。
だとしたら随分と奇特な存在がいたものだ、と三成は思う。
長曾我部はそんな三成の様子を見て苦笑する。
「…いま思うと、あいつなりの心配…だったのかもな。あの頃は考えもしなかったけど。まぁ全部…昔の話だ。」
そう言って、寂しげに笑う長曾我部にそれ以上問い詰める事も出来ず、三成は問いを飲み込んだ。
―その人間は、お前にとって何だったのだ?
それは、聞いてはいけない問いのように思えた。少なくとも、今は。
ひょっとすると自分にとっての秀吉様の死がそうであったように、未だに受け入れがたい何かが、この男にも秘められているのかもしれないと、そう思った。
その夜、三成は夢を見た。
長曾我部が、誰かと戦っている。
―相手の顔は、わからない。何故だろう、長曾我部以外はおぼろげにしか捉えられない。
剣戟はあまりに長く、このまま決着が着かないのではないかと思うほどの長い間、続いた。
だが、決着が着き、相手の武器が地に落ちる。
そうして相手といくらか言葉を交わしたかと思うと、長曾我部は己の武器を振りかぶり、相手を貫いた。
そして聞こえるのは、声にすらならぬ、獣のような咆哮。
怒りと憎悪と悲しみが全てない交ぜになったような、叫び。
―これは、聞いたことがある。
自分が、かつて秀吉様の死を認識した時と、同じだ。
大切な人を、失った事実が、そしてかつての友がそれをしたという事実が認められなくて、ただ叫んだあの時と。
だが、長曾我部は己で命を奪っておきながらその死を悲しんでいた。
―何故だ?
相対しなければならない理由が、相手を殺さなければならない理由が、あったのだろうか。
―私には、わからない。
三成は、まだそこまで、長曾我部元親という人間を、深く知らない。
だからわからない。彼が何を思って相対し、相手を殺すに至ったのかも。
そう思ったとき、また別な声がした。
『…知りたいか?三成。』
どこか懐かしさを含んだ声に問われ、誰にともなく三成は頷いた。
―私は、知りたい。
『主にとって、良いしらせとは限らなくとも?』
―それでも私は、私という人間を拾った、長曾我部という男が知りたい。
『…ならば、与えよう。…主は対外頑固もの故に、今話しても聞かぬだろうしなぁ』
どこか困ったようなその声には聞き覚えがあった。
『ワシからの最後の手助けじゃ。…息災でな。三成。』
―刑部…?
かつての己の友である男の声に似た声を聞きながら、三成の意識は深く落ちていった。
翌朝、いつものように起床した三成は自分の視界がいつもと異なる事に気がついた。
おぼろげなそれはなにかまでは判断できないが、皆何かを背負っている。しかし全く重そうにはしていない、きらきらとひかるなにかを背負っている。訳が分からない。そう思ったとき、背後から声が掛けられる。
「よう、石田。おはよう。」
「…ちょうそかべ、…おは………」
声に気がつき、振り返った三成は挨拶をしようとして一瞬呆気に取られる。
長曾我部の背後に、緑色の塊がくっついている。それも大きい。というか長い。
「なんだー?何か変なもんでもみたか?」
「…いや…長曾我部、つかぬ事を聞くが、背中は重くないか?大丈夫か?」
すると長曾我部は首を捻るが「…いや、全然ねぇな。」と返答する。
「何かあったか?」
まさか巨大な緑色の塊が見えましたとは言える訳が無い。
「いやなに、姿勢が若干悪いように見えたので、尋ねたまでだ。」
「そうかー?自分じゃ全然気づかなかったぜ。ありがとな。」
そう言って笑いながら長曾我部は去っていこうとした。
『…我に気づくとは、中々だな。』
「……!?」
長曾我部とすれ違う一瞬の間にその声は聞こえた。
慌てて後ろを振り向くと、先の緑の塊は、それまでとは異なり明らかに人の形をしていることが見て取れた。
そうしてソレは三成のほうを見るとニヤリと笑った、ように、見えた。
「……っ…長曾我部ぇぇぇぇぇぇぇ!!貴様!!明らかに取り憑かれているぞおおおおおお!?」
三成の絶叫が、その場に響き渡ったのは言うまでもないことだった。
それからやや後の事。
朝の諸々の雑事を終え、さらには自分と長曾我部が不在時の指示まで全てを終えた三成は、長曾我部の私室にて向かい合い、座っていた。
自室ということもあり、ややだらしなく、あぐらをかいている長曾我部とは対照的に三成は正座の姿勢を崩さず、鋭い目つきで正面を見ていた。
チラリと三成が長曾我部の背後に視線を向けると、やはり、いる。
緑色の塊は、先程よりははっきりとした形が見えてきた。
どこぞの武将であるような甲冑を身につけていることまではわかるが、どういうわけか顔までは見えない。
『ふむ…貴様は確か…まさかこやつに拾われているとはな』
おまけに明らかに三成の事を知っているような口調で話す。だが三成に相手の心当たりは無い。
「石田、顔色悪いぞお前。大丈夫かー?」
更に言うと肝心の長曾我部は取り憑かれている自覚が無い。
即ち、自身の背後にくっついている緑色の武将の存在も声も、知覚出来ていない。
『…というかこやつはいつまで経っても仕事をせぬのか…』
「あ、そうだ。もらい物の餅あるんだけど俺の分お前にやるから元気出せよ。お前飯くわねぇけどこれなら人並みには食べられるだろ?」
そのような事情から、長曾我部と彼に取り憑く幽霊(仮)の全くかみ合っていない言葉を聞かされる三成の脳内は、完璧に混乱し、混乱し、一周した挙句、呆然としていた。
(秀吉様、半兵衛様、刑部…これが私に与えられた試練なのですか……!!)
今はもういない、しかし未だに心に住まう人々に問いかけ、そして一度ゆっくりと深呼吸をし、長曾我部に話しかける。
「…先程も言ったと思うが…貴様、明らかになにかに取り憑かれているかのように、緑色がくっついているぞ…」
「…緑色~?なんだそりゃ…」
『貴様、我を色で語るとは良い度胸だな…』
幽霊(仮)からドスの聞いた声が発せられる。どうやら色で説明されたことが相当不満なようだ。しかし、今の三成から一番わかるのは色なのだから仕方があるまい。
意を決して立ち上がり、長曾我部の背後に回り、件の幽霊を確認する。
「後は…なんというか…薄い。更に…細い。」
「薄くて細くて緑ってなんだそりゃ…植物か?」
『石田…貴様一度自分の体を見直してから言うが良い…!!』
「あとは…頭から何か生えそうな兜を身につけている。」
「生える…!?…そういや姉なんとかといかいう領主が頭から木を生やしてるとか聞いたことあるけど…でも俺面識ねぇぞ…。」
『我をたかが地方領主と一緒にするでないわ!!』
一向に要領を得ない元親と三成の会話に痺れを切らしたのか、幽霊はややイライラした様子を見せ始める。
「…あと意外と短気らしい。…腹でも減っているのだろうか。餅をお供えしてみよう。」
「…石田、幽霊って腹減るのか?あとなんか俺が死んだ人間みたいなんでせめて俺の後ろ側に置いてくれ…。」
そんな呟きに気がつかないのか、いそいそと長曾我部から譲られた餅のうち1つを供える三成に対し、幽霊は一言呟いた。
『…ふん』
そうして三成から姿は見えなくなった。
「しかし本当に心当たりはないのか?」
長曾我部に断りを入れた上で餅を一口頬張ると三成は尋ねる。
そうすると長曾我部は、僅かに表情を曇らせ、そして言った。
「…あるといえばある。」
なんともはっきりしない答えだった。
「はっきりと答えられぬものなのか?」
納得できずに尋ねる三成に、長曾我部はうつむくだけで答えようとはしなかった。
だが、ポツリと言葉を漏らす。
「…お前が見てる、幽霊とやらが本当に俺の思う人間なら…俺はそいつに、毛利に祟り殺されても仕方がない。」
―殺しに来たのか、あいつ。
呟かれた言葉の不穏さに三成は思わず顔を顰める。
「何故、そのように思う。」
そう尋ねると、どこか遠い目をして、長曾我部は言った。
「毛利元就は、俺が殺した男だからだ。」
それは、三成が聞いたことの無いほど、冷たい声だった。
長曾我部はそれだけ言うと、立ち上がり「海に行く」と言った。
「貴様…話はまだ…」
立ち上がり、追いかけようとする三成に対して、左手を広げて制止する。
「これ以上は、踏み込む気持ちが少しでもあるのなら野郎共に聞いてくれ。」
そうして、長曾我部は自身の部屋から立ち去っていった。
その背に、緑色の塊は、見えなかった。
「…何だというのだ…」
踏み込む気持ちがあるのなら、と長曾我部は言った。
―出来ることなら踏み入って欲しくないと、そう思っているのか?
この戦国の時代、生き延びるために人を殺める事は珍しくは無い。
三成とてそうだ。生き延びることに必死で、殺めた人間のことなど振り返ったことはなかった。
だが、先程の長曾我部の表情はまるで―
「殺した事を、悔いているような…」
そんな表情に見えたのは三成だけだろうか。
その毛利という人間は、長曾我部にとってどのような人間だったのだろうか。
調べなければ、いや知らなくては。
踏み込む気持ちがあるのなら、と長曾我部は言った。上等だ、と三成は1人で意気込む。
踏み込まなければ、自分は何も分からないままだ。
あの夢の真相も、毛利なる男の存在も、全てが。
まずは、手始めに長曾我部軍の人間に尋ねるべきだろう。
そう考えて部屋を出ようとした三成は、ふと思い出し、先程長曾我部が座っていた場所の後ろを見やる。さっきはそこに皿に載せた餅を置いておいた。
だが、僅かな間に、皿だけの姿になって置かれていた。
「…餅が好きなのか?」
毛利なる人間の第一の情報を手に入れたものの、どうやって活用するべきなのだろう、と頭を抱える羽目になる三成だった。
仕事をサボってこんなことをする羽目になるとは…と思いながらも三成は自分なりの調査を行った。てっきり周囲から責められると思ったがそんな事は無かった。というよりも「三成さんは日頃から働きすぎなんで、今日1日ぐらいはゆっくりしてください!!」と休養を進められてしまった。
…確かにここ最近は働き詰めだったかもしれない。そういうわけで数日はゆっくりのんびりしても問題ないらしい。三成に関して言えば。
長曾我部がどうなのかは想像にお任せする。
幾人かに尋ねることで毛利元就という男の情報はかなり集まった。
だが、餅が好きなのかどうかと尋ねてもそれに関しては皆、首をひねっていた。
どうやらそこまでは知られていない情報らしい。
昼下がり、夕刻近く、長曾我部は未だに帰って来ず、さてこれからどうするか、と三成が廊下を歩いていると、ふと庭の片隅に緑色の塊が目に入った。
―もうり、もとなり。
長曾我部が、殺した男。
幽霊と言うからには常に長曾我部に憑いているのかと思うがそうではないらしい。
幸か不幸か、この場に長曾我部はいない。問うならば今しかないのではないだろうか。
そう思い、庭に降りる。
石を踏む音で、あるいは近づく気配に気がついたのか、背を向けていた毛利は三成に向き直る。
今度はちゃんと、顔が見えた。
線の細い端正な、だけどどことなく冷たい容貌を持つ男。
それが、毛利元就だった。
「…貴様は、毛利元就の、何だ?」
『…貴様らが幽霊と呼ぶもので相違ないわ。』
意を決して問う三成に毛利は坦々と答える。
冷たい表情、冷たい声。かつて謀将と呼ばれた男は死しても尚その冷たさを多分に含んでいた。
「何故今になって出てきたのだ?」
『…あの男に取り憑いて殺したい、とそう言ったら貴様はどうする?』
どこか嘲笑うような笑みを浮かべて目の前の、死んだはずの男は言う。
「それはさせない…私がいる限りは。」
決して臆せず、三成は言葉を返す。だが、毛利はその答えを聞いて、また笑った。
『たかが人間に何が出来ると…』
だが言いかけた言葉は、三成によって遮られた。
「ならば私からも尋ねたい。幽霊というのは一体何が出来るんだ?」
それは無垢な、子供のような質問だった。
思わぬ問いかけに毛利すらも一瞬絶句する。
「刑部からかつて、幽霊というものは、この世に未練を残したものが至るものだと聞いた。
まず悪意がありそして人に害なす場合は、会話すら出来ぬので、弔い、なんらかの形で屠るしか無いと聞いた。」
唖然とした表情の元就に構わず、三成は言葉を続ける。
「だけれども、お前は私と会話できる。意思の疎通が出来るという事は、貴様は悪意あるものではないということではないか?」
毛利はやや放心したような様子で三成を見つめていたが、ふと気がついたように笑う。
今度は、先ほどのように悪意があるものではなかった。
『…まさかこれほどとはな…大谷も、とんでもない者を育て上げたものだ。』
「?貴様は刑部を知っているのか?」
見知った友の名を聞き、首を傾げる三成を見て毛利は頷く。
『左様。…良くも悪くも、知っていた。』
そういう毛利は先ほどとは打って変わって落ち着いた様子を見せていた。
―こんな顔もするのか。
三成は酷く驚いている自分に気がついた。そうして思ったことをそのまま口にした。
「貴様は、本当は長曾我部に何を伝えたいのだ?」
『…本当に唐突な男よ。』
呆れたような毛利の呟きに構わず、三成は続ける。
「貴様が本当に長曾我部を殺したいほど恨んでいるのであれば、私の言うことに聞く耳など持たぬはずだろう。今この時点で長曾我部軍に身を置く私に。」
それは、ずっと思っていた事だった。
長曾我部を殺したいのであれば、いつでも機会はあったのだ。
なのに、それをしなかった。
毛利が三成を欺いているという可能性が無いわけではなかった。
だけれども、それだけは違うように思えたのだ。
それに根拠など無い。強いて言うならば、石田三成という人間の経験に基づく勘でしかない。
『…本当に、子供というものは扱い辛くて困る。』
憮然とした表情で毛利は呟く。
「私は子供ではないぞ。既に元服している。」
だから子供ではない、と言った三成に毛利は思わず頭を抱える仕草を見せる。
それは幽霊であるのに、ひどく人間らしいそぶりだった。
『…そういう意味ではない…一体大谷はこやつにどのように接していたというのだ…』
そこまで言ったところで、ふと何かに気がついたかのように三成を見た。
「…いや、だからこそ…お前はあやつを慕うのか…」
その様子に違和感を覚えた三成がまた毛利に話しかけようとした瞬間、背後から声が掛けられた。
「石田?…何やってんだ?」
声の主は長曾我部だった。
三成は視線を長曾我部に向けると昼間の経緯があるためか、少々ばつが悪そうな様子を見せながらも三成に歩み寄る。
「…何もねーとこで話してるからもしかしてと思ったんだが…いるのか、ここに。」
三成は頷き、そして答えた。
「…貴様には見えないかも知れないが、確かにいるぞ。」
毛利元就の幽霊はここにいる。
毛利は毛利で硬い表情のまま、真っ直ぐに長曾我部を見つめていた。
「そうか。…いつまでも逃げるな、ってことかもな…」
そうして長曾我部は、見えないはずの毛利を見据えるかのような視線で話し始めた。
「…ああするしか無いって思った。俺自身が決めたことだから、後悔なんてするはずなかったんだ。」
恐らくそれは、三成が夢で見た、あの光景なのだろうということは何となく理解出来た。
あれは、本当に長曾我部と毛利の、最後の戦いだったのだ。
長曾我部は続ける。
「なのに、忘れるっていった俺本人が一番忘れられないなんて、馬鹿げてるって自分でも思った。」
その表情は、困ったような、悲しいような、なんとも言えないものだった。
『…愚かな男よ、本当に…』
そうしてここに来て毛利が初めて口を開く。
ぽつりと呟かれたその声から、少なくとも憎悪は感じられなかった。
「…どこで違えたんだろうなぁ、俺達は。」
長曾我部がそう言うと毛利は言葉を返す。
『初めて会ったときから、我は安芸を守りたいといい、貴様は広い世界が見たいと行った。…最初から交わってなどおらん。』
「会えば喧嘩ばかりで周りを困らせてばっかりだった」
『貴様は事あるごとに安芸の領地…いや領海に踏み込みおって…何度頭を悩まされたことか…』
「しょっちゅう足蹴にされてたなぁ…いや海に落とされたりもしてたか…俺よく生きてたな。」
『図体だけはでかく、頑丈になったが…中身は変わらなかった。どこまでも愚かなままであったな、貴様は』
それは交わらない、会話。
毛利の言葉は、決して長曾我部に伝わらないのだから。
それでも二人は話し続ける。
「そういや、手土産に餅持って行ったら固くなっててどつかれたな…」
『…まぁ、あれはあぶった餅も中々の味だったので今思うと許してやらぬこともない』
「伊達の所でうまい餅を食ったって言ったら半殺しにされそうになった」
『我の知らぬところで美味い餅を食った貴様が悪い』
三成からすると不思議と二人は笑っているようだった。
まるで、相手が何と言うのかを全て理解しているかのように。
それは犬猿と呼ばれた二人に刻まれた記憶。
確かに二人は互いの命を懸けて戦った。
そして長曾我部は生き残り、毛利は死んだ。それは事実だ。
だけれども、昔は他愛もない喧嘩をすることももあったのだろう。
ただ酒を酌み交わすことも、ひょっとしたらあったのかもしれない。
今となっては、全て過去の話なのだけれど。
だけれども、ただひたすらに憎み合っただけではない何かが、この二人にはあったのだということは三成にも理解出来た。
「お前になら…殺されても仕方ないか、って思った。だけど、やっぱり駄目だ。」
ゆっくりと、見えていないはずの毛利を見据えるかのようにして長曾我部は言った。
「俺はこいつの、石田の居場所を作ってやるって決めたから、だから…まだ死ねない。お前のために死んでやることはできねぇよ。」
「長曾我部…」
それが今日一日かけて出した長曾我部の結論なのだろうか。
『それが、お前の出した結論か。』
冷たい声と視線が二人を射貫く。だけれどもそれは一瞬の事だった。
『…今尚腑抜けた面を晒していたならば、祟り殺して連れて行ってやろうかとも思ったが…気が変わった。』
そう言って毛利は、長曾我部と三成に背を向ける。
そうして、言った。
『いつか、彼岸の先で…待っているぞ。』
表情は見えない。
だけれども、まるで軽やかに笑っているかのような、そんな声だった。
言い終わるとその刹那、強い風が吹いたかと思うと、毛利の姿は影も形も見えなくなっていた。
空にはもう、星が輝き始めるような、そんな時間だった。
三成は思う。
ひょっとしたら毛利は、長曾我部のことが好きだったのではなかろうか。
他者からすると、酷く歪んだ愛情で、気付かれぬような感情で、ずっと彼を見てきたのではないだろうか。
だから、彼の心を占めるものも、ひとも、全てが憎くなったのかもしれない。
心に秘める全ての愛を向けられないのならば、心に秘める全ての憎悪を向けられたいと、そう思ったのかもしれない。
一つの国を守り通そうとした男は、代償として、周囲も己も全てを偽り、唯一望んだ相手に殺された。
それが、毛利の望んだ結末。
とてもゆがんだ、あいのかたち。
愛というものは様々な形があるのだとかつて刑部から教えられた。
あの二人は他者から見ると犬猿の仲で、殺し合った存在ではあるが、他者に理解出来ない双方の執着もまた、愛というものだったのではないだろうか。
長曾我部からはあの日聞いた話が全てであるし、もう一人である毛利は既にこの世には居らず、真実を知ることなど出来ない。
だけれども、それでも良いだろう。
この世界には歪んだ愛も、そうでない愛にも満ちている。
愛の形を理解出来るのは当人達だけで、他者には否定する事なんて出来ないのだから。
三成はまだその愛を知らない。だけれども、石田がいるから、まだ死ねないと言った長曾我部の言葉を嬉しく思ったのは、これも愛というものなのだろうか?
答える者は、誰もいない。
だから三成はこれからも考える。
愛というもののあり方を。
あの日見たものが本当に毛利元就の幽霊だったのかは、三成にはわからない。前夜に見た夢も含めて、ひょっとすると幻だったのではないだろうかと思う事もある。だけれども、あれから長曾我部はそれまで以上に、破天荒な様子を見せるし、自分はその補佐で手一杯だ。だけれどもあれから少しだけ二人で過ごす時間が増えた。お互い何をするわけではない。ただそこにいるだけの時間。
あれから毛利の幽霊を見ることはない。
だけれども、おやつにもちが出たとき、半分ばかり取り分けて置いておくと、いつの間にか無くなっている。だから、ひょっとするとたまーに、誰にも気付かれないように来ているのかも知れない。そうしてそういうときは大体において長曾我部が珍しく熱心に仕事をしているときだったりする。
それでも、今でも長曾我部は、後ろを仰ぎ見て、そしてまた前を向く。
三成はそんな彼に並んで歩いた。
「…なあ石田。」
ふと庭を歩いていた長曾我部が口を開く。
「何用だ。」
三成が答えを返すと、長曾我部は笑って言った。
「…ありがとな。」
「…?私は何もしていないぞ?」
毛利の件にしても三成は何もしていない。ただ、毛利と話し、長曾我部と話しただけだ。
「だけど、俺はお前に助けられたんだよ。だから、ありがとう。」
そう言って笑う長曾我部は三成にとっては眩いものなのに、どこか儚いものに見えた。
だから、彼がどこかに行ってしまわないように、自分がその手を繋いでおこうと思った。
後ろを仰ぎ見る君は、今日も何を思うのだろう。
失った過去への追想か、それとも今後を憂うのか。
きっと三成は長曾我部元親という人間の一端しか理解出来てはいないだろう。
ならば、もっと知りたい。彼の事を。もっとずっと深く。
そうして三成は、彼を傍らで支えられる存在になりたいと、強く思うのだった。
○三成には守護霊となって秀吉様と半兵衛様と刑部が常にくっついているよ多分。
最強のセコム保護者。
兄貴には三成に害を及ぼさない限りは何もしないよ。
だけど家康には何か嫌がらせするよ、多分。
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
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