がんかたうるふ 「Happy Birthday」 ジュリオ誕生日こばなし 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ジュリオ誕生日こばなしです。
イヴァン誕生日こばなし→拍手こばなし(もう撤去しましたが)→これの順になっています。





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「Happy Birthday」









ボンドーネ家の現当主の誕生日パーティは、ささやかに、そして質素に行われた。それでもボンドーネ家にとっての質素であって、他の家の誕生日パーティとは規模が桁違いに違っていた。
通常よりも遙かに強い光で照らされた庭の木々、色とりどりの光を浴びてきらめき続ける噴水。歩く邪魔にならぬよう綺麗に刈り込まれた下草を無言で踏みしめながら、ジュリオが探していたのはただ一人の姿だった。
褪せた月の光のような髪を持つ、たった一人の大切な人。
ずっと忙しくしていた彼に、今日なら会えると思ったのに、彼は一向にこの場に姿を現してはくれない。他の幹部連中はそれぞれのプレゼントを持って祝いに来てくれたし、今もまだ館の中でパーティを楽しんでいるだろう。
だがその中に、本当の意味で自分の誕生日を祝いに来ている人間は、どれだけいるのだろうか。
その証拠にジュリオが場の中心にいてもいなくても、パーティは滞りなく進んでいるし、誰かがジュリオを呼びに来ることもない。昔からこの家では当主の存在よりも家格が重んじられる風潮がある。建物が立派であれば、当主がみすぼらし格好をしていても許してしまうようなものなのだが、それに気がついている使用人は少ない。
きっと代々仕えている使用人の方が、家のことを理解しているのだろう。
一度そうイヴァンに言った時、彼はなんと言っただろうか。確か、鼻でせせら笑った後で、ジュリオに言い聞かせるかのように…………
「ジュリオ? どうした?」
「……あ……ジャン……さん……」
「少し疲れたか? 客だらけだもんな、ここは」
「いえ、そうじゃない……です。イヴァンが……あの…………」
「あいつがいなくて寂しいか」
「はい」
いつもは風に任せたままの髪を綺麗に整えたジャンは、背伸びをしてジュリオの頭を撫でてくれた。ジャンの笑顔は冷え切った風で凍え始めている心と体を、一気に暖めてくれる。
ジャンがいたからジュリオは今ここにいることが出来る。
幼い日に籠に入った飴玉と引き替えに彼にもらった幸運は、ジュリオを大切な人に出会わせてくれた。凍りつき、そのまま冥府に旅立とうとした心はジャンに再会することで子供の頃の奇跡を思い出し。
心は常に動く物だという当たり前の事実を、イヴァンが教えてくれた。
彼によって揺らいで、思い悩んで、苦しんで、そして少しずつ距離を縮めて。指を絡め、互いの肌に触れ、身を寄せ合うようになり。時には怒鳴られ、時には一緒に笑い、そして過ごしてきた時間。
彼がいるから様々なことを知ることが出来た、思い出すことも出来た。
「イヴァンに……会いたい……です」
誕生日に思い入れなんてない、でも祝ってくれる人の中にイヴァンがいないのは寂しい。
黒の礼装が似合うジャンの、白手袋に包まれた手に慰められながら、ただイヴァンのことを思う。何故来てくれないのか、どうして自分の側にいてくれないのか。
悲しさのあまり目元がじんわりと濡れ始めた頃、頬に触れていたジャンの手がそっとジュリオの顔の向きを変えた。
「ようやくのご到着だな………あのじゃじゃ馬王子様……いや、今日はジュリオ専属の魔法使い、か」
「…………………………え……………あ………………」
イヴァン?
口はそう呟いたが、心は完全に彼を認識できていなかった。
丁重に撫でつけられた髪、漆黒の礼装の袖には艶やかなカフスが添えられ、黒絹のタイは髪を際立たせる為に光を打ち消し続ける。純白の手袋も、顔が映りそうな程に磨き抜かれた革靴も。彼を包む物全てが、普段はだらしない格好の彼を見事な貴公子へと様変わりさせていた。
見た目だけではなく、立ち振る舞いの全てを。
ネクタイを直す指のわずかな動きなどの小さな振る舞いの一つ一つ。その全てが彼が礼服にただ着られているわけではなく、礼服を着こなした上で完璧な儀礼を身につけていることを教えてくれる。
「いよっ、デイバン一の色男!」
「うっせー! ルキーノのヤツが誕生日によこしたんだよ、着ないともったいねえだろうが!」
ジャンを怒鳴りつけながら、つかつかとこちらに向かって足早に近づいてくる姿は、間違いなくイヴァン。

どうしようもないほどに会いたくてでも会えなかった、大切な人。

何故遅れてきたのか、今まで何をしていたのか、色々聞きたいことはあったのだが。あくまで自然体でこちらに近づいてくるイヴァンの姿を見ていたら、言いたいことを全て忘れてしまった。
「………遅くなったな……悪い」
「イヴァンのやつ、昼過ぎまで熱出して寝込んで……」
「余計なことを言うんじゃねーよ。テメーはさっさとあの赤毛と場をごまかしてこい」
「へいへい、人使いの荒い坊やだことで」
ジャンを押しのけるかのように追いやり、改めてジュリオの前に立ったイヴァンの顔が、ようやくいつもの覇気のある表情に戻る。
「イヴァン………熱…………って」
「もう下がったって。おい、それより行くぞ」
「行くって……今日は俺の…………」
「テメーはこれから過労でぶっ倒れてベッドで横になるって予定になってんだよ。だから行くぞ、早く行かねーとエンジンの音でバレちまう」
余程焦っているのか、イヴァンの手がジュリオの手首をつかみ、そのまま足を進めようとする。体格と腕力の差があるのでジュリオが本気を出せば逆にイヴァンを引きずることは十分可能なのだが、それはやめておくことにした。
手首に触れてきたイヴァンの手が予想以上に熱かったことと、そしてなによりも。

イヴァンがちゃんと来てくれたのが嬉しかったから。

彼に手を引かれるままに、素直について行くことにした。








イヴァンの誕生日の時も、こんな綺麗な空だった。
瞬き続ける星の群れは空に鎮座し、その下で人間は滑稽なほどおろおろしながら踊り続ける。星に笑われそうなほどの珍道中の果てに、イヴァンに連れられたジュリオはようやく目的地らしき場所へとたどり着くことが出来た。
そこにあったのは墓石の群れと、その隅に申し訳なさそうに置かれている石が一つ。
碑名も書かれず、石の表面を覆う苔は中途半端にはがされ、無残な様相を呈している。長年風雨にさらされ、時には心ない人間に踏まれたこともあったのだろう。所々が欠け、すり減っているというのにジュリオはそれから目を離すことが出来なかった。
父の墓は存在している、ボンドーネの土地の中で立派な墓碑を建てられ、手入れだって常に管理人が行っている。

だが母の墓は?

死してからも祖父に責められ、墓の場所すら教えてもらえなかった母は、一体どこの土の下にに眠っているのだろう。
名のない墓碑に花束を供えるイヴァンに、震える声で問うてみる。
「イヴァン………もしかして…………」
「ちゃんと声かけてやれよ、テメーの母ちゃんの墓だろうが」
「……………か………母さん…………」
初めはそっと、次に触れる時は愛おしむように。
もぎとられるように失い、死を悼むことすら許されなかった母の眠りを守る石に地面に膝をつきながら触れてみる。無言でジュリオを真似て座り込んだイヴァンに体を寄せながら、きっとイヴァンがやってくれたであろう苔をはがす作業を今度はジュリオが引き継ぐ事にする。
イヴァンも手を伸ばそうとしていたのだが、手袋に包まれた彼の指先から血が滲んでいるのを見てしまったのだ、そんなことをやらせるわけにはいかない。
「…………これは…………俺の……誕生日……?」
「んなわけねーだろうが」
「………じゃあ……どうして……」
「捜し物のついでだ、本物は……おらよ、ありがたく受け取っとけ」
「…………………これ、は?」
イヴァンがジャケットのポケットに手を突っ込んで出したのは、色あせしわくちゃになった封筒だった。長い時の経過を見た人間に理解させるそれを汚れていない方の手で受け取り、中に入っていた便せんを開くと、最初に目に入ったのはボンドーネ家の家紋だった。
そしてジュリオの目を大きく見開かせたのは、懐かしい、そしてもう見ることが出来ないと思っていた母の字。
性格を現しているかのような柔らかい字で書かれた手紙は『愛しいジュリオへ』という、短いフレーズから始まっていた。
「最初はよ……テメーの母ちゃんの遺品でも見つけてやろうと思ったんだけどよ。ここに墓参りに来たら偶然母ちゃんの昔の友達ってババアが来やがって…………んで、この手紙を預かった」
「……………………………」
「テメーによろしく伝えてくれとさ。母ちゃんは、ずっとテメーの将来のことを心配して、手紙を預けたらしいぜ」
愛する息子に会えなくなる日が、きっとすぐに訪れる。
どんな形であろうとも近い将来訪れる息子との別れを予期した母親は、信頼できる友人がいつか息子と出会える奇跡を信じて、この手紙を託した。その直後に命を失うことになることまでは予期できなかっただろうが、彼女は息子への愛情を手紙の形で残すことを選択したのだ。
そしてそれは長い時を経て、ようやく届くべき人の元へと届いた。
「さっさと読めよ」
「でも……俺…………」
自分にこの手紙を読む資格はあるのだろうか。
血に狂い、殺戮に酔い、人を傷つけることでしか自分を保てない、そんな汚れた存在になってしまったというのに。そんな自分を母は望んだだろうか、今の自分を自信をもって見せることができるだろうか。
手紙を持つ指を握りしめることが出来ず、墓をつかむ指に必要以上に力がこもる。
石の硬い感触が指先を引き裂きそうになった時、それを押しとどめたのはイヴァンの強い力と意志を込めた手だった。ジュリオの代わりに、彼の手が一気に赤く染まっていく。
「イヴァン……俺は……読めない……」
「読め」
「………できない……母さんに…………」
「テメー自身がテメーを否定すんのか? 全部………オレのことも」
全身全霊を込めているのだろう、ジュリオの手を押さえるイヴァンの顔は硬くこわばっている。でもその瞳は二人を見守る夜空よりも優しく、ただジュリオにただ一つのことを求めていた。
過去からの母の思いを、受け入れることを。
「それはテメーの母ちゃんの遺したたった一つのモンだ。全部テメーの爺さんが処分しちまったのに、それだけが遺ってた。その意味をさっさとわかれよ」

それはジュリオのために、遺されていたのだ。

「…………わかった」
震えることすら出来ず、堅く枝のようになってしまった指をなんとか動かし、ゆっくりと便せんを開いていく。時間を越えて届いた母の思いは、ありきたりな、だが世界中の母が子を思う心に満たされていた。

未来を案じ。

幸せを願い。

自分が育てた子を信じる気持ちに。

あの時の自分は母に愛されていた、だが今の母は自分を見たらどう思うだろうか。無言で読み進めながら、唇を噛みしめていたジュリオを救ったのは、結びに書かれていた母の願いの言葉だった。


あなたが今後どのような人生を歩むか、それを知る術は多分私にはないのでしょう。それでも未来のあなたが、他人にはわからない形であっても幸せになれていることを心より願います。
ずっと、あなたのことを見守っています。


どのような形であっても、どれだけ狂った存在になってしまったとしても。
母は自分を見ていてくれる、守っていてくれる。
「………母さん…………ありがとう………」
普通の親子であれば、当たり前の事実なのかもしれない。
だが幼い頃に母と別れ、普通に愛されなかったジュリオにとって、それはようやく知ることが出来た真実であった。母の愛は疑っていなかったが、過去に消えてしまった母が今の自分をも愛せるか、それを知る術などなかったのだから。
イヴァンがこの手紙を探してきてくればければ。
「おい……手紙が濡れてっぞ」
「………………………………ぁ………………」
「泣くなよ、いい年のヤローがよ」
胸から出したチーフで、イヴァンが自分の涙を拭ってくれる。
白手袋の上からでもわかる血に染まった彼の指、そこから届く彼の甘い血の香り。間断なく流れ落ち続ける涙のためにぼやけた歯科医ではイヴァンがどんな顔をしているのかよくわからないが。
きっと彼は笑ってくれているのだろう、それもとびきり輝いた顔で。
「よし、これでオレの誕生日の借りは返したからな」
「イヴァンの……誕生日?」
「覚えてねーのかよ、テメーが泣いて感謝するくらいの誕生日をやってやるって言っておいただろうが」
「覚えてない」
「そうだよな、テメーってヤツは……」
「すまない……でも嬉しい……イヴァン……ありがとう……」
今までの人生で最高の、そしてもっとも幸せを運んでくれたプレゼント。
多分、今この時も母は自分を見守ってくれている。これから自分がさらなる修羅の道に墜ちたとしても、あの優しかった母は困った顔をしながら自分を受け入れてくれるだろう。
母の思いが込められた便せんを丁重に、自分の上着の内側にしまい込む。
人生で迷った時、帰れなくなりそうな狂気にとらわれた時。きっとこの手紙とイヴァンの存在が自分を引き止めてくれる。頬が冷えてしまうほどの量の涙を、文句を言いながら拭き取り続けてくれるイヴァンの頬は、寒風に吹かれ続けた為に、赤く染まりきっていた。
指に滲む赤と頬を染める赤。
「…………おいしそう」
「あぁ!? おいテメー、なにすんだよっ!」
彼の手を寒さから守る手袋を外し、まだうっすらと血が滲んでいる指先を躊躇することなく口に含む。口に広がるイヴァンの味と、途端に目を白黒させておろおろしだす彼の姿を楽しみながら、上着で自分の手を拭いてからイヴァンを一気に抱き寄せた。
「俺を幸せにしてくれて……ありがとう」
「なんだよ、やっぱ覚えてんじゃねーか」
「覚えてない。でも………覚えてる」
「なんだよ、それ」
腕の中で微妙な力でもがくイヴァンの暖かさを味わいながら、彼の誕生日に思ったことを思い出す。

誰かを愛し、産まれた日を祝えるというのはなんて幸せなことなのだろう。

イヴァンも今そう思ってくれているのならいいのだが。
素直にそれを聞いてみると、腕の中で顔を別な意味で赤らめたイヴァンは、そんなこと当たり前だろうと口をとがらせながら言い切ってくれた。








BGM「Happy Birthday」  by LINDBERG
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm8372739


・このこばなしはみっしさんへ捧げさせていただきます。
足かけ2ヶ月弱……リアルタイムで書きましたが、楽しかったです。
そしてジュリオさん、お誕生日おめでとうございます。
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

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