がんかたうるふ Diablos Party その8 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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遅くなりました。
8話、一度にアップします。



 *****
 惨劇からしばらく経った後、しがみ付いたままのマリーと背後から付き従うジュリオと共にイヴァンは目的の部屋にやってきていた。先ほどの現場から幾分か離れた、孤児院の子供達に与えられたもう一つの部屋でイヴァンはジュリオと共に子供達からの話を聞き終えたところだった。
「単語を完璧に読めるのはラエル、多少読めるのがマルゴー、後は自分の名前のみ読める、か…」
ベルナルドに言われたように、子供達から聞き取った結果は大体がイヴァンの推測通りだった。

最年長のマルゴーは簡単な単語ならば読めるそうだが文章はほとんど読めない。
ラエルに関しては年齢とは不釣合いながら、昔から知識欲旺盛な彼は、本に連なった文字の意味は分からずともその文面を追いつづけ、またかつての神父様とやらに教えられた結果、読むことだけは文句なしに読めるそうだ。
ただし文章はほとんど書けない。書けても単語だけだということだ。
その聞き取りの過程でわかった事だが神父様への手紙は彼の知る限りの単語を用いて書いたものを、皆で真似して書いたものらしい。
恐らく文章としてはメチャクチャな文法だと思うよ、とはラエル本人の談だ。
しかし、ろくに教育も受けていないであろうラエルがこれだけ読み書き出来るのはマシというものだろう。むしろ正当な教育を受けたらどうなるのかが末恐ろしい程の知的好奇心だ。そんなラエルだからこそこの屋敷にも絵本を持ち込んでいたのだろう。残念ながら悪意ある何者かによってそれは無残な形になってしまったのだが。

悪意、そう悪意だ。
この屋敷に潜む何かが撒き散らす悪意により人々は翻弄されている。
死者となってしまった者はともかく、それ以外の存在で最も悪意の受け皿となってしまった最たる存在は間違いなくここにいる子供達だろう。イヴァンは未だに自分の周囲に集う子どもたちを見やる。
マリーはイヴァンから離れたものの、未だにマルゴーにしがみ付いたままで、マルゴーはマルゴーで先ほどの光景が目に焼きついている為か、その表情には陰りが見えている。同様にあの部屋にいたジョシュアとヴィノもお互いから離れようとしない。まるでそれは傷ついた鳥がお互いを支えあうような、痛々しい光景だった。
イヴァンはそっと、側にいたマルゴーの頭に手を伸ばし撫でてやる。部屋に入ってきてから既に一度怯えるマルゴーを宥めるためにやったそれを、今度は違う意味をこめて。そんなイヴァンにマルゴーは一瞬疑問視を浮かべたような表情を見せる。
「……イヴァン…お兄ちゃん……?」
そんなマルゴーに対してイヴァンは、彼にとっては無意識的だったが、柔らかい笑みを浮かべて言った。
「頑張ったな」
イヴァンの手付きはいささか遠慮というものがないような、ガサツと評されるようなものだったかもしれない。だけれども、その手が誰よりも暖かい事を彼らは知っていた。
「…マルゴーだけじゃない。お前たちみんな、よく頑張ったな」
周囲の子供達にそれぞれ軽く頭に手をやる。皆、最初はキョトンとした表情を浮かべていたが、やがてその表情に変化が訪れ一瞬の後、子供達の目に涙が浮かび始める。
「……こわ、こわかったよ……」
「だれも、きてくれなくて、どうしようかと、おもって…」
皆口々に呟く、言葉と思い。それにイヴァンは耳を傾け続ける。子供達の恐怖心をイヴァンでは無くすことが出来ない。誰でもあの出来事を、無かった事にはできないのだ。だから子供達の思いを受け止める。それで少しでも、彼らの気が楽になるのなら喜んで受け止めるだろう。そしてそれを乗り越えられるよう手助けをする。多くの言葉はいらない。かけられる言葉をイヴァンは多く持たない、そう思ったが故の行動だった。
 その内に、泣いている子供達に気が付いたのか、てとてととイヴァンの方に歩みを進める子供がいた。
「あー!!イヴァンがマルゴー泣かせてるー!!」
「…人聞き悪ぃ事いうんじゃねぇ、アルフレッド」
「だって泣いてるじゃないか!!」
声を大にしてそう宣言したのは、同年代の少年達と比較して一際小柄な、それでいて誰よりも元気の良い少年、アルフレッドだった。こげ茶色の髪に青い瞳が特徴的なこの少年はジェームス、ラエルとよく一緒にいる。ガキ大将といった風情に相応しく、子供らしい好奇心に満ち溢れた彼はいつもマルゴーに怒られているそうだ。
「マルゴーを泣かせる奴は俺が許さないんだぞ!!」
その一方で彼はマルゴーを誰よりも慕っているそうだ。普段の悪戯は好意への裏返し、その証拠であるかのように、マルゴーが泣いている今、犯人と(勝手に)断定したイヴァンに対して敵意をむき出しにしている。まるでそれはお姫様を守ろうとする騎士のように。
そんなアルフレッドに対して、マルゴーは未だ止まらぬ涙を抑えながらも優しく微笑んで言った。
「…アル違うのよ、これはね…嬉しくて泣いてるのよ。…イヴァンお兄ちゃんのせいじゃないから、だから安心してね」
「…うー…マルゴーがそういうなら我慢するぞ…本当は嫌だけど」
不満たらたらといった様子ながらマルゴーの笑顔を前に渋々納得するアルフレッド。本当は嫌だ、という感情が表情にも滲み出ており、それは見ている者が思わず笑い出してしまいかねないそんな表情だった。そんなアルフレッドを見て他の子供達が声を上げて笑い出した。それは、あの惨劇からはじめて、子供達が笑顔になった瞬間だった。



子供達と話すイヴァンを見やりながら、ジュリオは先ほど自分が出くわした状況を彼に話すべきか悩んでいた。イヴァンを守るためとはいえ、隠し事をしてはいけない。それは昨日一日の出来事を経てジュリオが学んだ教訓だ。だから隠し事はしないと決めた。しかし、今この状況において伝えることが出来ない。だがしかし早急に伝えたい、伝えなくてはならない。表面上は無表情を装いつつも、ジュリオの脳内は『イヴァンに早く伝えたい』というその思いで一杯だった。彼が先ほど体験した状況、それは奇妙なものだった。

部屋に入ってすぐにイヴァンは子供達からの聞き取りを始めていた。かなりの人数がいるので時間がかかるだろう、そう判断したジュリオは部屋全体が見渡せる壁際に移動する。対人間、特に対子供という状況においてジュリオは全くもって使いづらい存在である事を自分で自覚していた。適材適所という言葉があるように、また昨日からの出来事でイヴァンに懐いている子供達であれば彼にならば素直に何でも話すだろう。そんなイヴァンを見やりながら背後の壁にもたれかかろうとした時にジュリオはふと違和感に気付く。
何かが、いる。
壁の向こうに、自分以外の『生き物』の存在をジュリオは確かに感じた。おぼろげなソレに気付いた時、ジュリオは瞬間的に意識を、出来うる限りの殺気を『それ』に集中させる。イヴァン、ジュリオ、子供達にシスター、これだけ人間がいる中ではいくらなんでも『それ』も手を出してはこないだろう。だが、万が一という事もある。
イヴァンの護衛であるジュリオは、その万が一の可能性に備えなくてはならないのだ。
ジュリオと『それ』の対峙、それは一瞬だったかもしれない、数分の出来事だったかもしれない。壁の中の『それ』はふと興味を失ってしまったかのようにいなくなり、その気配も消えうせた。当然の事ながら足音などは全く聞こえない。この部屋にいながら存在に気付けたのはジュリオだけではないだろうか。しかし対峙したことは思った以上にジュリオの気力を消費していたらしく、思わず深い溜息が出る。ジュリオとイヴァンの浸かっている、見えぬ道に各種トラップを仕掛けたあの部屋やベルナルドが見つけた部屋などにはさすがの『奴』も入っては来られないだろう。しかしこの屋敷ではそれ以外の場所において完全に『奴』のテリトリーなのだ。それは子供達を含めた他の客人の部屋然り、大広間然り、廊下然りだ。
いずれにしろ、この屋敷で心から落ち着ける場所など存在しないのだ。
ジュリオは改めてその事実を認識し、これからの護衛としての気構えを改めて整えたのだった。

「…ジュリオ、おい戻るぞ」
いつの間にか、子供達との会話を終えたのだろう。イヴァンがわざわざ壁際のジュリオの元にやってきていた。
「……もう…いいのか……?」
「ああ。ベルナルドからの用事は終わったからな。それに…」
一歩イヴァンがジュリオの元に歩み寄り、その間合いが詰められる。
近い、非常に近い。これが俗に言う顔が近いという奴だろうか、表面上は無表情を装いつつも思わぬ近距離にパニックを起こしかけているジュリオの耳元に顔を寄せる。
「…ガキ共には聞かせたくない話もある」
苦々しいという感情がそのまま込められたような声でイヴァンは呟いた。ジュリオからは見えないが恐らくはその表情も同様なものになっているだろう。
「……わかった……」
ジュリオはただ頷いた。自分は多くの言葉を持てないし人の感情の機微にも疎い。だけど、イヴァンの言うことから、感情を読み取る事はなんとなくだけれどもわかるようになっていた。だが、同時にジュリオの胸にはもやもやした感情が渦巻いていた。子供達に聞かせたくなかったのは分かるが、いささか自分との距離が近すぎではないだろうか。不思議なことにイヴァンは今回の仕事が始まってから徐々にジュリオに対しての意識を変化しつつあるらしい。それは精神的距離か身体的距離かいずれか、それともどちらもなのか。それはジュリオにとってはこの上なくありがたいことなのだ。だがいずれにしても自分以外の子供達にも同様の距離感で接しているのならば全力で改めて欲しい。やましい事は何もなく、ただ護衛としての意見だとジュリオは自分に言い聞かせながらそのぐるぐるした感情を持て余していた。世間的には嫉妬と呼ぶその感情の名を、ジュリオは幾度も体験しながらもまだ名をつける事ができなかった。

 そうして徐々に普段の元気さを取り戻す子供達の輪を静かに抜け、出口に向かうイヴァンとジュリオに声が掛けられる。
「イヴァン!!もどるのか?」
その声に進みかけた足を止めいささか下に視線を向ける。そこにいたのは、アルフレッド、ジェームス、ラエルの悪ガキ3人組だった。
「…おうお前らか。…とりあえずみんな落ち着いたみたいだし、仕事もあるから一度戻るぜ」
「…そっか……あの、イヴァンおれさっきこれ見つけたんだ!!」
イヴァンの答えに少々寂しげな様子を見せたアルフレッドだったが、意を決したように背後に携えていた「モノ」を渡す。
慌てた様子でアルフレッドがイヴァンに手渡してきたのは一通の手紙だった。
「…んだこれ?」
真っ白な封筒。一見するとごく普通の手紙にしか見えない。何故アルフレッドがこれをもっているのだろうか。その問いは背後にいたラエルが答えてくれた。
「イヴァンがマリーのぬいぐるみ直してた部屋あっただろ?あそこに妖精さんの机があったんだ。その机の上にあったのをアルが見つけた。」
「…そういやあったな」
探し物を見つけてくれる妖精さん、そこに置かれた妖精さんへの贈り物。そして子供達の願いをこめたいくつもの手紙。
「神父様への手紙と一緒にあったんだ…だけどそれ俺達が書いた奴じゃない。」
そんな封筒は俺達使ってないからね、と付け加え眼鏡を上げながらラエルは呟く。
「ア、アルが見つけて…でもだ、誰が書いたか、わ、わかんなくて…い、一応もってきたけど…こ、怖くて…だ、だからイヴァンに見てもらおうと思って…」
半泣きになりながらも言うのはジェームスだ。
「…教えてくれてすまねぇ。…責任持って預かるぜ」
わしゃわしゃとイヴァンの無遠慮な手がアルフレッドの、ラエルの、ジェームズの頭をがしがしと撫でる。マルゴー達にしたものと比較してはややガサツなものだったが、込められる思いは何も変わらない。
「こ、こども扱いするんじゃないぞ!!」
恥ずかしいのか、照れるアルフレッドをラエルはニヤニヤしながらジェームズはおろおろしながら見守っている。
「わかったわかった…ありがとな」
そんなアルフレッドなど気にも留めず、イヴァンは笑顔のまま彼らの頭を撫でていた。
背後のジュリオが彼にしては珍しく、なんとも言えない表情で見つめていたことに気がつかないまま。



「…ご丁寧に蝋で封までしてやがる」
あれから一応は何事もなく(とはいえジュリオは最大限周囲に気を配っていたが)ジュリオと共に居室に戻ってきたイヴァンは仕事の後、アルフレッド達から託された手紙を改めて確認していた。見た目はごく普通の手紙だ。だがその背面には重々しく蝋で封がなされていた。これは確かに孤児院の子供達には無理な芸当だろう。
「…手紙だけにしちゃ…なんか膨らんでねぇか??」
そして若干硬いものと柔らかいものの触感を感じる。手紙だけにしては若干の重みを感じるその封筒を、明かりに透かそうとした所で隣から手が伸びて手紙を取られる。こんなことをするのは、一人しかいない。思わずイヴァンは声を荒げる。
「…おい…!!ジュリオ!!何の真似だよ!?」
「…貸して、くれ……俺が…開けるから…イヴァンは…見ていて欲しい」
そのあまりに真剣な声と表情に一瞬息を呑む。ジュリオはこの封筒から『何か』を感じ取ったのだろう。
「…わかったよ…」
 今この瞬間において、ジュリオの本能的な直感を当てにするのが最も間違いない。そう判断したイヴァンは、以前なら考えられないほどあっさりとジュリオのその役目を明け渡した。イヴァンから受け取った手紙を、ジュリオは部屋にあったペーパーナイフを使用して慎重に開けていく。(自他共に認める不器用なジュリオだけにその手付きがいささか不安なものであったことを付け加えていく。)

そして中から出てきたものはあまりに2人にとっても予想内で同時に予想外のものだった。
「…刃……だな」
最初に出てきたものは剃刀の刃。刃の部分だけが数枚紛れ込んでいたようだ。
「あっぶねぇ…おい怪我してねぇか!?」
「……なんとか」
ジュリオは手紙の中身を予測していたのだろうか。黒手袋をした上で慎重に開いた結果指先には傷一つついていなかった。そんなジュリオに安堵しつつ、イヴァンは新しく手紙から出てきたものにギョットし目を見張らせる。
「…こいつは…髪の毛……か」
無造作に詰められた少量の毛髪、そして次に出てきたものこそ二人に衝撃を与えるには十分な代物だった。
「………爪………」
薄い布に包まれたそれは、恐らく、いや間違いなく、人間の剥がされた爪だった。乾いてはいるが爪にこびり付いた血が爪の持ち主に降りかかった惨劇を物語っている。ジュリオもイヴァンもラグトリフほど死体の扱いに精通している訳ではない。だが、一つの仮定が2人の脳裏に浮かび上がる。
「…あの死体…爪が無かったよな…」
「………確か………」
子供達の部屋で目撃した無残な遺体の姿が脳裏に浮かぶ。見るに耐えない惨いものであったが必死に思い返す。確かに爪はなかったはずだ。ならばこの爪と一つの線が浮かび上がってくる。
「じゃあこの爪は、あのロスとかいうおっさんのか…?」
見ているうちにあの遺体を思い出し、無意識的にイヴァンは顔を顰める。どんな理由があれ、どんな悪人であれ、あのような死を迎えていい理由は無い。
「………多分………」
ジュリオもまた遺体を思い出したのだろう。珍しくも美麗な顔が歪み嫌悪に表情が歪む。ふと、改めて封筒に目をやったジュリオは折りたたまれた便箋が入っていることに気が付き慎重に取り出す。
「……これは……」
「…何だ、それ…?」
 一見すると普通のものと何も変わらないその便箋に書かれていた。


『おしゃべり好きは嫌われる』


まるで血を連想させるような真っ赤な色で、なおかつお世辞にも綺麗とは呼べない拙い字面でそう記されていた。
「…何なんだよこいつは…!!ふざけやがって…!!」
「……犯人からの……宣戦……布告か……?」
そう恐らくは犯人の残したものだろう。あまりに明確な『悪意』を感じるあまりイヴァンの表情も憎悪に染まる。
「…大体よぉ…この手紙はあの部屋にあったってことは…ガキ共の誰かが開ける、ってことも可能性としてはあったわけだよな…」
「………あるだろうな……」
あの部屋に出入りしていたのは孤児院の子供達が殆どだ。よってあの手紙に気付く者も確立としては子供達が最も高いだろう。何も知らずに手紙を開けてしまい、恐怖に怯える子供が生まれる可能性もあったわけだ。今回は手紙に気付き、不審に思ったアルフレッド達がイヴァンに託したが故に今回子供達は難を逃れた訳だが。
「…あいつらが何したって言うんだよ…!!」
朝の一件といい、先ほどの件といい、孤児院の子供達に降りかかる事象に対しイヴァンは隠せない怒りを露にさせていた。
「…あのロスとかいうオッサンも…どんだけろくでなしだが俺は少ししか知らねぇが、あんなやり方で殺されて良い訳ねぇだろうが…!!」
今のイヴァンは子供達を軽々しく傷つけ、あまりに軽々しく人の心と命を弄ぶ『犯人』に対し怒りを滾らせていた。その単純とも取れる純粋さは彼の短所でもあり、長所でもあった。敵からは狡猾とも称されるイヴァンの今のこの姿を見たものは彼への評価を一変させるのではないだろうか。それほどまでにイヴァンの怒りは類を見ないものだった。
怒りを露にさせるイヴァンに対して、ジュリオは静かに語りかける。
「……ただ殺すだけなら……首か頭か心臓を狙えばいい……一番手っ取り早い…」
自ら組織の暗殺部隊を率いて戦う殺しのプロであるジュリオは何か思うところがあるのか、彼にしては珍しく、静かに語り出した。そんなジュリオを目にしたイヴァンは、必死に怒りを抑えながら、ジュリオの呟きに耳を傾ける。
「……だけど……あの死体は……楽しんで殺された……ように見える」
「……楽しんで、だと…?」
イヴァンの返答にジュリオは短く頷く。
「……犯人は…殺すことを……殺す過程を……」
そこで言葉を切り、イヴァンを見据えながら告げる。
「……人が、苦しみながら死んでいく過程を……何よりも楽しんでいる…」
そんな気がする、とジュリオは呟く。そうでなければ、殺すことにあそこまでの手間隙はかけないだろう、とも思ったがこれはイヴァンには伝えなかった。一見すると無表情極まりないその横顔には、多くの感情が渦巻いている、ようにイヴァンには見えた。
ジュリオの一通りの言葉を聞き終えたイヴァンは先ほどと比べると怒りが収まったのか、皮肉気に笑って言った。
「……とんだイカレヤローがいる屋敷に閉じ込められちまったんだな、俺達は」
電話という文明の利器を使って外部と連絡を取る事は出来る。警察への連絡も可能だし、デイバンにいるジャン達とも連絡を取る事は可能だろう。そういう意味ではこの屋敷は陸の孤島ではない。しかし、吹雪という大自然の脅威により物理的な意味で閉じ込められてしまった今、イヴァン達がこの屋敷から出る事は事実上不可能だった。もちろん外部からの助けが来ることも期待出来ない以上、この屋敷は中から出られない外からも入れない、一種の巨大な密室状態なのだ。
犯人含め、この屋敷からは、誰一人誰も出られないのだ。
「あー…ジャンとルキーノのヤローがうらやましいぜコンチクショー…」
朝の定時連絡を行なった際のふざけた言動を思い出し思わずイヴァンは頭を抱える。
逃避だとは分かっていたが、住み慣れたデイバンが急に懐かしく感じられる。
あの街は、あの街に暮らす愛すべき人々は、元気だろうか。今はただ、思うことしか出来ないのだけれど。
「……俺が……」
 遠くに思いを馳せていたイヴァンに対してジュリオが何かを告げようとした瞬間、2人の部屋をけたたましいノックの音が響き渡る。
「…なんだ…?」
ノック音と同時にイヴァンとその傍らにいたジュリオが身構える。そしてすぐに聞こえてきたのは既に聞きなれてしまった声だった。
『イヴァン!!イヴァン!!イヴァンの部屋だろ!?あけて!!あけろ!!あけろー!!』
『ちょっと!!アル!!ぼくのあしふまないで!!』
『ふ、ふたりともぶつかるよぉ…イ、イヴァンの部屋じゃなかったら、ど、どうするのさ』
アルフレッド、ラエル、ジェームズの三人の声が喧しく聞こえてくる。
「…開けるぞ」
「……わかった……」
何があるか分からないので念のためジュリオが身構えたのを確認してからイヴァンは扉を開ける。やっぱりというか、予想通りの三人の姿がそこにあった。念のため廊下に目を配るが、特に不審な気配は感じられない。とっさにそれだけ確認すると3人に目線を合わせるためしゃがんだ後、イヴァンは話し出す。
「何かあったのかオメーら」
「「「イヴァン!!」」」
扉を開けて出てきたイヴァンに対して三人は不安に怯えた眼差しを安堵のものに変える。
だが、喋る時間すらも惜しいというぐらい慌てた様子でアルフレッドが言葉を紡ぐ。そうやって飛び出してきた言葉は今のイヴァンに衝撃を与えるには十分なものだった。
「マリーがいなくなったんだ!!」
「…何だって…!?」
自分にしがみ付き、泣いていた幼いマリーの姿が目に浮かぶ。
「…なんでまた…あぶねぇのはわかってたんだろ!?」
「それが…ぬいぐるみがなくなったらしくて…一人で飛び出しちゃったらしいんだ」
「マ、マルゴーがね、シ、シスターと探しに行くって。ぼ、ぼくらは危ないから3人でイヴァンのところに伝えてきてって…」
珍しく動揺を露にするラエル、泣きじゃくりながら言葉を発するジェームズ。
「たのむから!!マリーを探してくれよイヴァン!!」
アルフレッドの悲痛な声が響く。その瞬間、イヴァンの傍らにいた筈のジュリオがその身を翻らせ廊下へと飛び出していた。
「…ジュリオ…!?お前…」
イヴァンからは後ろ姿しか見えず、その表情を伺うことは出来ない。
「……いた……」
「…なんだって……」
ジュリオのそれは小さな呟きだったが、不思議とイヴァンの耳に届く。だがそれはあまり望ましい言葉ではなかった。
「……何かが、こっちを伺ってた……」



悪意の一端が、再び彼らに襲いかかろうとしていた。







○大幅に規定字数オーバーでした…ごめんなさい。そしてオリキャラ大活躍。誰得でしょう。次のうずみさんに丸投げでバトンタッチ…ごめんなさい。色々整合性がとか時代背景とは突っ込みどころ満載ですみません。謝り倒しだぁ~…。


BGM 石川智晶「逆光」
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
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