がんかたうるふ あの夏の日、思い出一つ。 下(瀬戸内・パラレル・腐向け) 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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鶴姫視点のすこし不思議な現代パロ。CP曖昧なので瀬戸内で。
最初は毛長で後味悪いホラーとか思ったのですがどうにも結末がまとまらず鶴姫視点のすこしふしぎな話にシフトしてきました。毎度の事ながら始点と終点が全く違う…!!
無邪気な子供に翻弄される大人の話が好きです。

最後に補足説明と後書きあります

書いた人:みっし



 *****



「だから言っただろう。元親と会わせることはまかりならんと」
「…そんなに悪いのか、あやつは」
 声の主は二人居た。
 玄関ホールで、険悪そうな雰囲気をまき散らしながら相対する二人の姿。
 一人は元親の姉であるさやか。一人は、あの毛利元就だった。鶴姫の記憶にある写真よりはいくらか年を経たのか、より大人びて見える。
 二人にはやはり鶴姫は見えていないらしく、周りをうろうろとしてみても二人は視線をよこすことすらしない。
(やっぱり私はお兄さんにしか見えない幽霊みたいなものなんですね…)
 確信はあったが、やはりすこし寂しいものだ。
 だけど、そこにいることがわかっているのに、限られた人としか会えない元親は、もっと寂しいんじゃ無いかと改めて、思う。

「…元親の病の原因がわからぬ以上、お前と元親を会わせることはままならぬ。…お前の父上にも、申し訳が立たぬ故に…」
「……結局父上に義理立てするのだな、お前は。我の意思など意味は無いと」
 苦々しく、毛利が表情を歪めたのが見て取れた。
「それは違う」
「同じ事だろう。…あやつが倒れ、療養に入ってから何度訪れても対応は同じ。…会わせる気が無いんだろう。お前は」
「違う…!私は、お前の事を思って」
 さやかが必死に毛利を説得しようとするも、毛利は首を横に振る。
「…戯れ言を抜かすな…今日はもう、帰る」
 
 そうして学生服姿の毛利は身を翻して去って行く。荒々しく扉を開け放って去って行く彼は、二度とさやかを見なかった。

「…私は、間違っているのだろうか」
 毛利が去った後のホールにてさやかが言う。
「…元親が病を得てから、原因がわからぬと言われ、それでも着実に衰えていくあの子を屋敷の中に隔離したのは、間違っていたのか…」
 力なく、呟かれた声を鶴姫は確かに聞いた。

(…でも病名が明らかになっていない以上は、会わせることも出来なかったのでしょうか)
 伝染性の病気では無いと言われても確信は無い。ましてや毛利は、爵位を持つ家に生まれた令息だ。何かがあってからではいけないと、彼女はそう思ったのかも知れない。弟を守り、そして毛利を守るために彼女は敢えて会わせなかった。
 だが実際には毛利を守るためにしたことが裏目になり、彼女は毛利に恨まれている。

「…あの子は本当に、もう良くはならないのか…?」
 涙ながらに呟かれた声は、弟を案じる姉の声だった。



 誰にも姿が見えないのを良いことに、鶴姫はふらふらと隣の毛利家に行ってみることにした。だが、その最中、誰にも見えないようにこっそりと家を出る毛利を見つけたので思わず後を付けることにする。
 その最中、町並みを見るがやはり見慣れ無い建物ばかりだった。歩く人々の格好も昔のドラマから飛び出してきたような和装や洋装の姿であり、むしろ鶴姫の姿の方が浮いている。
(本当に、過去の世界なんですね…)
 夢だとしたらそれは随分と出来すぎた夢だ。
 
 病を得て、死に近づこうとしている青年。
 彼を守ろうとするとしている姉。
 
 そして、何度止められても青年に会おうとしている元就。

(おおばあちゃんの後悔は、やはりこの時のことなんでしょう)

 そう考えていた所で、毛利がふと誰かに声をかけられて立ち止まる。
 声をかけたのは彼と同じ制服を身に纏った黒髪の青年と銀髪の青年だった。
「元就殿!元気か!」
「なんだ貴様らか…相変わらずだな」
 少々うんざりした様子で元就は呟く。
「…そういう貴様も、変わらぬようだな」
 そう口にしたのは銀髪の青年だった。そして黒髪の青年がふと何かを思い出したかのように口を開いた。
「元就殿は…ひょっとすると…」
 だが、元就はそれをわかっていたかのようにくるりと二人に背を向ける。
「みなまで言うな。我には時間が無い。では」
 そう言うと足早に元就は立ち去ってしまった。
 残された二人の青年は怒るでも無く、呆れるでも無く、ただどこか寂しげに見つめていた。
「…まだ続けているのだな…元就殿」
「…百日はもう過ぎたはずなのだが」
 黒髪の青年は元就が立ち去った方向を見てこういった。

「元親と、会えたら良いなぁ…元就殿」
「…私たちも、会えるものなら、会いたいがな」
 二人は、顔を見合わせて頷いた。

(この方達もお兄さんのお友達…なんでしょうか)

 ふわふわと漂い、彼らの事も気にしながら、鶴姫は立ち去った元就の後を懸命に追う。

 たどり着いたのは、長い石段の上にそびえ立つ神社だった。元就はそこに着いたかと思うと突然裸足になり、手を会わせながら石段を登り始めた。
「…元親が良くなりますように…会えますように…」
 何度もそれを呟きながら、毛利は石段を登り、そして最上段まで行くと降りていく。
 鶴姫はこの光景を見たことがあった。
 これは確か、お百度参りだ。
 神仏に願いをかけて、石段の上り下りを百回ほど繰り返すという。それを百日繰り返せば、願いが叶うという。
 昔、おおばあちゃんから教えて貰ったものだった。

(元就さんは、お兄さんが本当に大切なんですね)
 ただの友人にしては向ける愛がやや重いような気もするが、それだけ仲が良かったのだろう。そう思っておこう。
(……なんでしょう、少しだけ違和感がありますけど気にしない方が良いでしょうね)
 下手につつかない方が良い。
 鶴姫の本能が告げる。だから、深くは追求しないことにした。

 とはいえどうしたら良いのだろう。
 一番良いのは元親が二人と話をしてもらうことだが、体調を考えるとどうにも無理だろう。
 おおばあちゃん、即ちさやかは弟を守らなければという思いでがんじがらめになっている。
 元就さんはとにかくお兄さんに会いたくて、会わせてくれないさやかさんを目の敵にしている。
 …これは俗に言う『詰んだ』という奴でしょうか。
 多分だが、このまま、誤解も何も解けないまま元親が亡くなってしまったのがおおばあちゃんの言う後悔なのではないだろうか。

 本当に、良かったのだろうか。

 弟が死んで、弟の親友もいなくなって、結婚して子供も設けたけれどおおばあちゃんの頭の中にはずっと後悔が渦巻いていたのでは無いだろうか。
 
 これは推測だけれども、でも当たっていると思うのだ。

 おおばあちゃんは色々な人とつきあいがあったから年賀状とかの整理は手伝わされたけれどもその中に毛利という人は一人も居なかった。死んでしまったのか、単につきあいが無くなったのかはわからない。
 だけれども、元親の死が様々な何かを変えたのだと言うことはわかる。
 元親の死は避けられない。
 鶴姫に、そんな能力は無い。
 己の無力さをかみしめながらも、それでも出来ることがあるはずだと思う鶴姫は日が暮れるまでその場で毛利を見守っていた。
 


 夜、元親の部屋に戻ると、彼は鶴姫に気がついたようで「よう」と顔を笑んで見せた。その表情にすこしだけほっとする。だけれども、彼は長くは生きられない。それは既に決まったことだった。
 過去は変えられない。彼は死ぬ。鶴姫がいた未来においてそれは既に定められた過去の話だ。人の生き死にを覆すことなど、出来はしないのだ。
「…おにいさん、手紙は、書けますか?」
「あ?手紙?…書けると言やぁ書けるが…時間がかかるぞ」
 言いながら元親は右手を閉じて開いて閉じる動きを繰り返す。ぎこちないながらも動かせるようだった。
「…あの、お願いです。お姉さんと、元就さんに、手紙を、書いてくれませんか?」
 鶴姫の言葉に元親は、驚いたように目を見開く。
「…なんであんた…その二人の名前を…って幽霊だから何でもありなのか。…そりゃ、幽霊の先輩としてのあんたのお言葉かい?」
 元親は、怪訝な様子ではあったが、鶴姫の言葉を疑ってはいないようだった。どうやらとても単純らしい。ありがたいことに。
「はい!えーと…そんな感じです!あの、でも、ここでちゃんと伝えておかなかったら、駄目なんじゃ無いかって…きっとまだ、なにかあるんじゃないかって…」
 しどろもどろになりながらも、鶴姫は答える。
 元親は少々考え込むそぶりを見せると、静かに頷いた。
「…確かにな。…おれがもう姉さんや元就にしてやれることなんて、それぐらいしかないか。…悪ぃ。そっちのスケッチブックと鉛筆取ってくれるか?」
 言われるまま、即座に鶴姫は机に置かれていたそれらの道具を手に取る。
(うわー…さっきも思ったけどふわふわしてるのに、確かにつかめていて変な感じです!)
 全くもって場違いなことを考えていることなど露程も感じさせず、鶴姫は元親にそれを手渡した。
「…もう、手に取ることもねぇって思ってたんだけどな…」

 そうして元親は時間をかけて手紙の一字一字を確かに書いていく。ようやく二人への手紙が書き終わった頃には長い時間が過ぎていた。

「……あー…疲れた」
「お疲れ様です…」

 鉛筆も何もかも全て投げだし元親は思い切り脱力した体制を取る。そして、じぃっと鶴姫の方を見たかと思うと、また笑みを浮かべて言った。

「なぁ、あんたの名前、なんて言うんだった?」
「私ですか?鶴姫です」

 つるひめ、確認するように元親は呟くと、再度鶴姫の方を向いて言った。

「…良い名前だな。なぁ、鶴姫。ありがとう」

 とても穏やかな笑みだった。

「…何で…お礼なんか言われることしてませんよ」

 だが元親は首を横に振る。

「お前は、少なくとも、俺を救ってくれたよ。…もう死ぬしか無いってわかって、わかったふりして俺は全部諦めたんだ。もう何も、出来ることなんか無いって。…でも、本当はやれることはまだあったんだ。…会えなくたって、やれることはあったのにな。死にに行くためだけの人間じゃ無い。お前は、それを教えてくれたんだよ」

 そうやって笑う元親の顔は、本当に優しくて、穏やかだった。

「…お前が、本当に幽霊なのか俺にはわかんねーけど、幽霊だとしても、お前はきっと成仏できる。だってお前、良い奴だからな」

 そう言って元親は目を閉じた。

「…ちょっと疲れたから、休むわ。じゃあな」

 そう言ったかと思うと、穏やかな寝息が聞こえてくる。



 元親の寝息が聞こえてきたのと時を同じくして、鶴姫は何となくだけれども、自分がやるべき事は、終わったのだろうということを自覚した。

 きっと、元親の言葉を、何らかの形で残すことが、自分のやるべきことだったのだ。

 どうして、自分だったのかはわからないけれど、きっとそうなんだ。



 そう思った時、鶴姫は自分の体が透き通っていることに気がつく。

 これは、どうやら本当にお別れらしい。

 さようなら、お兄さん。
 さようなら、元就さん。

 そして、またお目にかかりましょう。
 さやかさん。いえ、おおばあちゃん。

 妙に冴えた意識の中、鶴姫はそんなことを考えていた。



 目が覚めたとき、何故か周りには心配そうな顔でのぞき込む両親の姿があった。

「…?何かあったんですか?」

 眠いなぁと思いながらそう尋ねると、両親はそれはもう大変だった。母は泣きながら自分を抱きしめるし、父はこの馬鹿が、と言いながらも目尻に涙を浮かべていた。
 はて、一体私は何をしたんでしょうか?
 。

 鶴姫はあの日の夜に眠ってから目覚めること無く、丸二日に渡り眠り続けていたらしい。脳も何も異常なく、ただ眠り続けていただけ。
 医者にも原因はわからないとのことだったが、突然目を覚ましたというのが今の状況らしい。
 今はもう、何ともないのだが念のためと言うことでもう一日入院して帰ることになった。

 そうして鶴姫は曾祖母、即ちおおばあちゃんのベッドの隣に座り、話を聞いていた。



 おおばあちゃんには若い頃に亡くなってしまった弟が居た。その弟には幼なじみで親友とも呼ぶべき存在が居た。弟は元親。その親友は元就という名の存在だった。
 弟が、原因不明の病に倒れ、おおばあちゃんは、弟をお屋敷の離れで療養させていた。伝染性のものではないとは言われたものの、ひたすらに衰弱していく弟を前に、どうして良いのかわからなくなったおおばあちゃんは、自分と使用人、それに医師以外の人間とは徹底的に接触させなかったのだという。
 それでも元就は、何とか弟と会おうと毎日やってきた。でもそれでも会わせる決心がつかなかったらしい。
 弟は弟で、自分の死を自覚してから無気力になっていき、次第に起きている時間の方が短くなっていったという。
 なんとかしてやりたい。でも、どうして良いかわからない。親は既に亡く、後見してくれている親戚もそこまで頼れず、かといって隣人でもある毛利家に迷惑はかけられない。ましてや跡取りである元就を巻き込むわけには行かない。曾祖母はなんとかしなければと思いながらもどうしようもできなかったらしい。
 だがある日をきっかけに少しずつ変わった。

 あの日。
 鶴姫がいた一日にも満たない僅かな時間。
 元親との僅かな間の交流は、彼の中の何かを変えるのには十分な時間だったらしい。
 
 彼は一日一通ずつ、手紙を書き始めた。
 姉や、元就、学友へと。
 今までの事、これからの事、そして、感謝の言葉。

 ありがとう、と。

 最初に渡された曾祖母は、戸惑ったらしい。これを本当に元就へと渡して良いものか。だけど弟の懇願に負けて、結局は手渡した。
 その時の元就の表情が忘れられないのだと言う。
 嬉しくて、泣きたくて、それでもこらえようとするその表情は子供の頃に見知った表情と丸っきり同じだったのだから。
「…それから元親が亡くなるまでの、僅かな間、二人は何度も手紙のやりとりをしていたよ…最初からそういう手段もあったのに、どうして、思いつかなかったものやら…まぁ元就も思い詰めたら人の話を聞かない子だったし、私もそんな余裕が無かったからかねぇ」
 そう言っておおばあちゃんは苦笑する。
 
 ただ、元就さんの気持ちも、鶴姫にはよくわかる。
 きっと直接会って伝えたかった。あの人はそれしか考えていなかったのでは無かろうか。強いて言えば、元気になったお兄さんに、直接会って話したかった。あの人は、ずっとそれだけを願っていた。
 …何故でしょう。普通のようなのにお百度参りの事を知っている分、妙に重い気がするのですが…。
 そう思いつつ、口には出さず、おおばあちゃんの話に耳を傾けた。

 亡くなったのは、夏の始まり。
 元親は、姉に見守られながら眠るように息を引き取った。
 その数日前、彼はおかしな事を口にしたのだという。
『姉さんの子供に、女の子が生まれたら、鶴姫って付けたらいい。俺が、名付け親になってやる』

 俺の恩人の名前だから、とそう言って笑ったのだそうだ。だが曾祖母は子供を産んだものの女の子には恵まれなかった。その子供達の皆男系で女子には恵まれなかった。そうしてひ孫の代になって、ようやく一人の女児が生まれた。
 それが、鶴姫だった。
「…あの子との約束だったから、お前の名前は鶴姫と、名付けさせてもらったんだよ」
 そう言って祖母は、懐かしそうに笑う。
「…私は、何とかしてやりたいと思いながらも、ずっと動けなかった。何も、出来なかったんだ。だから、あの子が手紙を書こうと思ってくれて…本当に良かったと思っているよ。そうでなかったら、私も、元就もきっと後悔していただろうから」
「あの…その元就さんという方は…?」
 祖母は、少しだけ顔を寂しげに歪める。
「…元親が死んだ後、医者になりたいと言い出してね…。家を継ぐ継がないって大騒ぎになって、結局は遠縁の人間を養子にするって言うことで落ち着いて、あの子はお医者様になったよ。…何年前かねぇ。結構前に亡くなった。まぁ一生独身だったようだけれども。…あの子は本当に、元親の事が好きだったから」
 本当にしょうがない、と言う祖母の話に鶴姫は、違和感を感じ、そこでようやく口を開く。
「…あの、おおばあちゃん?その、元就さんは元親さんの事が好きだったというのは…」
 どういうことでしょう、と言う鶴姫に祖母はフフッを笑って言った。
「言った通りの意味さ。元就は元親の事が好きだった。友達の枠を越えた意味でね。…元親も、同じだったようだけれど」
「…………………なるほど」
 ああ、なんだか愛が重いと思ったらそういうことだったんですね。ライクじゃなくってラブだったという奴ですね。そりゃあ好きな方に会うためだったら百日以上お百度参りして、毎日毎日突撃お隣訪問しますよね…って重いです。凄く重いです。
 愛が重いとはまさにこのことですね…。
 内心、呆然としつつ鶴姫は平静を装いながら祖母の言葉に耳を傾ける。
「…本当に、元親からの言葉が無ければ、私はきっと、ずっと後悔したままだった。取り返しの付かないことに対して、やり場の無い思いを抱えていたのだろう」
 そう話すおおばあちゃんの顔はとても穏やかで、どうしてか、あの時見た元親の顔と、よく似ていた。

「じゃあ、今のおおばあちゃんには、どうしてもやり直したい昔の事とかは無いんですか?」
 以前話した内容とは若干異なる内容に戸惑いつつも鶴姫は問いかける。

「…そうだな。後悔が無いわけじゃないけど、今はもう無い。強いて言えば、あの子がもっと長生きしてくれればよかったとは思うけれども、そればかりはどうしようもならないからな…」

 そのおおばあちゃんの答えを聞いて、鶴姫は、自分が過去の一部を変えたのだと言うことを自覚した。



 おおばあちゃんの思いか、それとも早くに亡くなったという元親の未練か、それとも、愛しい人に会いたかったという元就の思いか、いずれにせよ、それらの思いが積み重なって、鶴姫は過去へと呼ばれた。
 かみ合わなくなってしまった歯車を、再び回すための、手伝いをするために。
 
 鶴姫にとっては一日にも満たない、僅かな時間の出来事。だけれどもそれは確かに、過去の流れを変えた。
 少なくとも、おおばあちゃんと、元就さんと、お兄さんの未練は無くなったのだろう。多分。

 何故鶴姫だったのかということだけはよくわからないのだけれども。



 その夏、大往生でおおばあちゃんが亡くなった。アルバムの整理をして気がついた。あの元親と元就が並んで写っていた写真の次にあった、古ぼけた新聞記事が無くなっていた。鶴姫が、過去に飛んだ影響なのかも知れない。
 そして、それから数年後の夏。鶴姫は、高校三年生になっていた。

 花火大会でもあるのか、夕方の電車は多くの人で賑わっていた。とはいえ受験生の鶴姫には無縁のイベントでもある。今日とてこれからようやく帰宅するところなのだから。浴衣の人々に囲まれ、さて最寄り駅まで何駅かとふと思った時、数メートル先にいる青年達に目を奪われた。

 それは色違いの甚平に身を包んだ二人の青年だった。キャラクターのお面を顔に付けているため顔は見えない。目を奪われたのは、青年の一人は見事な銀髪で、もう一人が茶髪だったからだ。

 あの日見た、二人とよく似た色だった。
「花火ー花火ーたのしみだなーでっけーのかなー!」
「うるさいだまれ」
 無邪気にはしゃぐ銀髪の青年を茶髪の少々小柄な青年が諫めている。よくよく見ると銀髪の青年は何故か戦隊物のピンクの仮面を身につけており、茶髪の青年はグリーンの仮面を身につけている。
(赤や青が無いあたり渋いですね…)
 全然関係ないのだが、そんな事を考えていた。

「なーなー出店なにあるかなーりんごあめあるかなーあ、お前イカ焼きの方が好きだっけ?」
「…お前は静かに花火を楽しむ事を考えぬのか!少しは食欲から離れろ!確かにしょっぱい物の方が好きだが!」
 テンション上がりっぱなしの銀髪青年とは異なり、茶髪の青年はやや大人びているらしい。マイペースな銀髪にやや振り回されているようだが、仲は悪くなさそうである。鶴姫は微笑ましく彼らのやりとりを見守っていた。

 そうしているうちに、電車は自宅の最寄り駅に着く。花火大会の会場は、数駅先らしく、あの二人はまだ乗っていた。
 少しだけ気になりながらも、鶴姫は電車を降りる。そしてその時、ふと声が聞こえたような気がした。

『ありがとう』

「!?」
 慌てて振り向くも、電車のドアが今にも閉じようとしている所だった。
 だけど、ドアの向こうで、どうしてだろうか。銀髪と茶髪の青年が自分に向かって手を振っていた。被っていたお面をずらしたせいで僅かにその顔が、表情が見える。満面の笑みで。とても嬉しそうに彼は笑った。

 そのまま電車は次の駅に向けて動き出していった。

 それから何度も電車に乗っていても、あの二人を見ることは二度と無かった。


 それでも、と鶴姫は思う。



 あの日見たものは、幻だったのか、今ではもうわからないけれども、そうであって欲しいと願った自分が見た、幻だったのかもしれないけれども。

 たとえ夢幻でも、あの二人が幸せであったら良いと、そう思う。

 それは、夏の日の出来事。

 たった一つの思い出だった。















○あとがき

わかりづらいですけれども、鶴姫の曾祖母=おおばあちゃん=さやか=元親の姉です。即ち孫市さん。出せなかったけど身分差越えて結婚したのは慶次。どっちにしろおおばあちゃんは家自体解体して身分を一般人に戻してから結婚しています。

 鶴姫が飛ぶ前の時間軸Aでは、元親の死後、元就が後追い自殺しています。最初に鶴姫が見ていた新聞記事はそれです。そしそれが、おおばあちゃんの後悔の原因。自分が何かをしていれば、弟のように可愛がっていた幼なじみも、死ななかったんじゃ無いかという後悔。
 思うように自分の言葉を伝えることができなかった、というのが元親の後悔。
 とにかく会いたくて会いたくて仕方が無かった恋人に一目で良いから会いたかった。言葉を交わしたかったというのが元就の未練。
 
 それらの思いが、たまたま子孫である鶴姫と波長が合ってしまって鶴姫の意識は過去へと喚ばれてます。

 飛んだ後の時間軸Bでは元就は後追い自殺はしていません。結局家は継ぎませんでしたが、医者として病の解明に人生を費やしました。

 元親の思いを伝えさせることで、元就という人間の死を引き延ばし、おおばあちゃんの後悔を無くすということが、鶴姫が過去でやるべきことでした。

 A世界での鶴姫の名付け親はおおばあちゃんですが、B世界では元を辿れば元親に行き着きます。


 過去に飛んで悲劇を変えるという意味ではゴールデンデイズのパロ…?と言った方がいいんでしょうか。


 長々読んでいただきありがとうございました。
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
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