こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
以前書いた「神様の花嫁」の続き。『神様と花嫁』シリーズとしてぼちぼち開始~。
神様の1人である松永さんと、人間でありながら彼の花嫁に選ばれた高校生の元親のぐだぐだライフ。
書き方によってはR18に持って行けるのに何故にいつもこのノリなのか。それはえろすーんが書けないからです。他に理由など無い…!!でも目指せ雰囲気えろ。
6月新刊として発行予定なので書き練習として投稿してみました。
書いた人:みっしー
*****
長曾我部元親、ごく普通の男子高校生。
先日、神様とやらの嫁になることが決まりました。
「夢、じゃあ無いんだよなぁ…」
平日の夕方、元親は自室で1人大の字になって寝転がっていた。今日は珍しく母親が非番で自宅にいるため、日頃行っている家事の免除を言い渡されたのだ。そのため、こうして自室でぐだぐだしている。
脳裏に浮かぶのは、昨日体験した奇妙な出来事だった。
学校で見つけた奇妙なメッセージ。
不思議な毛玉。
幼い頃の自分とよく似た子供。
そして、松永と名乗る男との出会い。
修羅場だったよなぁ…とぼんやり考えながら、元親は昨日の事を思い返していた。
「…離れろオッサン。」
「おやおや、10年も離れていた伴侶に対しての発言とは思えないねぇ。さすがの私も傷つくよ?」
「絶対嘘だ…!!」
元親は何やかんや、自分に触れようとする松永を何とか避けようとするが、どうにも上手く行かない。それに加えて元親の不機嫌の要因となっているのは松永の言動だった。
―このオッサン、絶対におもしろがってやってる…!!
彼が自分に好意を抱いているというのも間違いではないのかもしれない。だけれども、こちらが狼狽える様を見ておもしろがっているのも事実であるように見受けられるのだ。毛を逆立てる猫の様な元親を見ても松永は全く狼狽えること無く、口元には薄く笑みを浮かべている。非常に余裕のある態度を見せつけられ、元親は更に反抗心を露わにした。
「大体なんだよ!!この左目!!余計なものをつけるんじゃねぇよ!!つか人の左目どういう風に扱ってたんだよ!!」
松永言う所の「おぷしょん」を付けられ、戻された元親の左目は色が変わったばかりではなく、狭間のもの、わかりやすくいうと人に在らざるものを映し出す様になっていたのだ。右で見た視界と全く違う左目の視界に脅える元親は慌てて眼帯を着ける。視界が遮断されれば問題はないようで、右目の視界はいつもと同じ世界を映し出していた。
だが、ハッキリいって不気味なことこの上ない。
喚く元親に松永は表情を変えず、笑みを浮かべたまま言う。
「ふむ…これでも傷一つ付けないように大事にしていたのだがねぇ…。君の左目は実に愛らしい姿を取ってくれていてね。あの子達とも実に仲良くなってくれていたよ。」
そう告げる松永の足下で金と銀の毛玉、佐吉と竹千代が嬉しそうに跳ねる。子供のような高い声だが性別はあまり感じさせない。聞きようによっては不気味と感じられる声で彼らは歌うように元親に言った。
『ひだりめ おむかえ』
『もとちか がっこう』
やがて、松永からの手を避ける事も忘れたように動きを止めた元親は一つの推測に思い至る。
「学校に来た、あのガキの頃の俺に似たアレが…俺の左目…!?」
幼い頃の自分とよく似た子供。
自分を、この神社に導いた存在。
明らかに人ではないような雰囲気を持った謎めいた子供。
自分が神社に着くのを見計らったように消えてしまった、子供の姿が思い浮かぶ。
そうして、妙に優しい手つきで元親の頭を撫でる松永は言った。
「ご名答。君の左目を核にして10年前に作らせてもらったんだ。本物には及ばないまでも大変可愛らしかったよ。」
『ひだりめ かわいい』
『ひだりめ なかよし』
非常に胡散臭い笑みを浮かべる松永と同意するように跳ねる金銀の毛玉を見て、元親は思わず頭を抱える。
「変態だ…変態がいる…!!」
10年以上前から幼児の自分(中身は左目)を侍らせておくとは何たる変態ぶり…!!
このオッサン、思った以上に本気でヤバイ。いや、そもそもカミサマってこんな奴ばっかりなのか??
今更ながら松永の本気を思い知り、恐れおののく元親だが、気がつけばその体は松永に抱きすくめられていた。
「ギャー!!オッサン離せ!!」
慌てて体をじたばたと動かすが意外にもガッシリと抱きしめられており、抜け出すことは敵わなかった。松永が嫌だ、というよりも自分が誰かに抱きすくめられているという状況を改めて認識した元親は恐怖心を露わにして暴れる。
「…つれないねぇ、本当に。」
「違う!!それもあるけどそっちじゃなくて…俺もあんたも下手すりゃやられる…!!」
ふて腐れたような態度を見せた松永だが、元親の態度を見て僅かながら変化を見せる。
「それは一体どういう」
ことかね、と伝えようとした松永の言葉は突然投げられた何かによって遮られた。
「…ふむ。」
「………あっぶねえ……!!」
間違いなく松永に向けて投げられたのは、鋭利な針を持つ、コンパスだった。
それを難なく指で挟んで止めた松永は、己にそれを投げつけた輩を確認するために横を向き、そして出会った。
「…元親から離れぬか。この不審者が。」
冷ややかな視線と共に、涼しい顔をしてその場に立つのは、元親の従兄弟である毛利元就だった。
「…学校から突然いなくなるからどうしたのかと思えばこのような不審者に誑かされおって…」
いつもと変わらない冷たい印象なのだが、怪しげな目の輝きを放つ元就はなにかが違った。
ゆらり、と動くと改めて松永と、おまけに松永と密着し腰まで抱き寄せられた元親に向き直る。
「も、元就…?」
元親は、この同じ年の従兄弟が嫌いでは無かったが、彼が自分に寄せる異常なまでの独占欲には困惑していた。
毛利元就は、長曾我部元親の周囲に近寄る他者を毛嫌いする。そうして、元親を、というよりも松永を睨み付ける元就から発せられた言葉はある意味予想の範囲内の言葉だった。
「まぁ良い。…その不審者を滅せば、貴様は戻るのであろう。元親。」
「それ犯罪ぃぃぃ!!落ち着け元就!!」
二つ持っていた鞄の内、恐らく日頃から元就が使用している方の鞄の底からあっという間に何かを取り出そうとする。そうして鞄から出てきた右手には、一体いつから保管していた物か、大きめのカッターナイフを握りしめていた。元親はそれを見つけた瞬間松永の腕から抜け出て元就の元に駆けよろうとする。
だが今尚、元親を離さぬ松永によって、抜け出せず、もがく羽目になった。
「ふむ…このまま君が離れていってしまうのは、わたしとしては頂けないねぇ。」
『いただけない?おいしくない?』
『はなればなれ?おいしくない?』
要は自分が気に入らないから離したくないらしい松永の言動と、空気を読まない毛玉達の声に元親は思わず頭を抱える。
「頼むから空気を読んでくれおっさん…!!あいつは、思い詰めたらなにをやりだすか全くもってわかんねーんだよ!!」
自分達がこうして騒いでる間にも元就の思考回路はとんでもない結論に至り、どんな行動に至るかもわからない。その根底にあるのは、元就自身が抱く元親への執着心だ。
元親は、それがずっと怖かった。
正確に言うと、執着心故に第三者への攻撃へと至る元就が、だ。
そうして、俯いていた元就は手に持っていた自身の鞄と元親の鞄をドサッと地面に置くと、右手を真っ直ぐに掲げる。
「…貴様のような見るからに外道のような男に元親は断じて渡さぬ…!!」
そういう元就の姿からもやや常軌を逸した、鬼気迫るものが感じ、思わず元親は臆する。
だけど、止めなくてはならない。
決してそれを行ってはいけない。それを行うと、死に繋がる。
何故か咄嗟にそれが元親の脳裏を駆け巡る。
思わず松永の腕からやっとの思いで抜け出し元就に駆け寄る。
だから気がつかなかったのだ。
「初めて会った存在に刃物を向ける人間も、無粋極まりないと思うがねぇ…」
相変わらず松永は悠長に、しかし僅かながらも呆れた様子で呟いたことを。
「元就!!やめろ!!」
今なおカッターナイフを構えたままの従兄弟と僅かな距離を置いて元親は相対する。
「元親?…何故止める。」
邪魔をするな、と言いながらも元就は松永へ刃を向けることを止めない。
「…そんなことやって、お前に何の得があるんだよ!!落ち着け!!」
必死になって元就を説得しようと試みるが、元就はゆっくりと首を横に振った。
「…こやつが生きていれば、必ず貴様に害を為す。…だから今、ここで滅す。」
僅かな間に、松永を己の敵と認識してしまった元就は最早、元親の話すら聞く耳を持たない。目の前の存在を滅する事しか、今の元就の頭には無いに違いない。
「元就…!!俺の話を聞いてくれ!!」
どうしたら、元就を止められるのか、元親がそう思った時だった。
『もとちか もてもて?』
『もてもて さされる?』
いつのまにか、元親の足元に毛玉コンビが近寄ってきていた。
ぴょこぴょこと飛び跳ねる姿は可愛らしいが、話す内容は不穏そのものだ。
「…なんだコイツらは」
その一瞬。元就の視線と意識が松永から毛玉に向いた瞬間、元親は信じられない物を見た。
「え…」
元就の手から、カッターナイフが消え失せたのだ。
「何だと…!?」
驚いたのは元親だけではない。元就もだ。己の手にあったはずのカッターが突如として無くなり、僅かだが慌てた様子を見せる。
「だから言ったではないかね。…無粋、だと。」
そう言いながら薄く笑みを浮かべる松永の手のひらから少し浮いた状態でソレはあった。間違いなく先ほどまで元就の手にあったはずのカッターナイフと先ほどのコンパスだった。
そうして彼は訳が分からないというままに動きを止める元就を目で制しつつ、元親を背後から抱き寄せると、とても楽しそうな声音で言った。
「さて、佐吉と竹千代?―やってしまうがいい。…まぁ、ほどほどにね」
松永がそう言うや否や、元親は体の向きを強引に変えられ、松永に正面から抱き寄せられる格好になる。それに対して抗議の声を挙げる間もなく毛玉達の声が聞こえて来た。
『おしごと りょうかい』
『おしごと たのしみ』
『わくわく』
『うきうき』
「何……!!」
珍しく慌てる元就の声が聞こえて来たかと思うと、それはすぐに止んでしまう。
聞こえるのは、楽しそうにはしゃぐ毛玉の声だけだ。
「…一体、何してんだよ!!元就は!?どうなったんだ!?」
元親の問いかけに松永は何ともないように答えた。
「ああ…君の従兄弟殿は、色々と黒い物に侵されていたからねぇ。…まぁ色々と処理を。」
「色々って何!?さっきからなんか背後でグキとかバキとかグシャとか聞こえるのは気のせいか!?」
そう、音から伝わってくる背後の状況はあまり良いものではなかった。音だけで判断するなら年齢制限を設けられたホラー映画並みだ。まさか死んでしまうのではないかを慌てふためく元親を宥めるように松永は元親の背中を軽く叩く。
「何、案ずる事はない。…死にはしないから安心したまえ。…さて、では行こうか?」
当然のように告げられた言葉に元親は首を傾げる。
「…?行くって…どこへ?」
そうして松永は、なんてことないように、ごく普通に告げた。
「私の花嫁になるのだから、天界に行くに決まっているだろう?」
「は…?」
天界、ってどこですかそれ。
現状について行けず、ぽかんとする元親に松永は続ける。
「人間の世界からは近くて遠い場所…になるかな?気軽に行き来は出来ないかもしれないな。…どうかしたかね?」
松永の言っている意味をゆっくりと頭の中で反芻する。
近くて、遠い場所。
それは即ち、自分の今までの日常からかけ離れた場所に行かなくてはいけないと言うことだろうか。
父とも、母とも、友達とも。…元就とも離れて。
駄目だ。
それはまだ駄目だ。
だから元親は咄嗟に思ったことを口にしていた。
「おおお…俺一人っ子だから嫁に行くなら味噌汁が冷めない距離がいい!!」
―やってしまった、いやむしろ言ってしまった。
何をやってるんだ自分は、馬鹿か。いや馬鹿なのは認めよう。むしろうっかりすぎる。
元親の答えを聞いた松永は、ふむと言いながら腕を組んでしばしの間考え込む。
「…物理的な距離というのは、人間にとって大事なものなのかね?」
「大事!!めっちゃくちゃ大事!!」
訝しむような松永に対して元親は全力で頷く。
「ふむ…では少し、考え直すかね。…君も、少し休むと良い。」
そう言って松永は自身の額で元親の額に軽く触れる。とても近い。近すぎる距離だったが不思議と元親の心に嫌悪感は生まれなかった。
そうして松永は小さな声で、だけれども優しい響きを持って呟いた。
「―おやすみ、私の花嫁」
そうして、元親の意識は完全にブラックアウトした。
気付けば家の、それも自室に帰り着いており、時刻は夜の20時を過ぎていた。
慌てて階段を下りてリビングに駆け込めば、元就がいつもと同じ涼しげな様子でソファに座ってテレビを見ていた。
「なんだ貴様。ようやく目が覚めたのか。」
それは、あの夕方見たような、静かな狂気にゆだねた彼の姿とは異なり、元親がよく知るいつもの元就の姿だった。…内面にどれだけのものを抱えているかはこの場合は置いておいて、だ。
「えーっと…俺、どんだけ寝てた?」
何食わぬ顔を装いながら元就の隣に座る。
元就が見ていたのは海外ドキュメンタリー番組だ。そういえば元就は昔からこの手の番組をとても好んでいたことを思い出す。
元就は少々呆れたような様子を見せ溜息を吐きながら言った。
「…我が帰ってきた時にはもう寝ておったわ。…お陰で夕飯はまだ食べておらぬ。どうしてくれようかと思っていた所よ。」
やれやれといった様子の元就の言動に元親は違和感を感じる。
元就の話しぶりだと、夕方のあの神社での出来事を全く覚えていないようだ。だから、もう一度尋ねた・
「…えーっと…お前、委員会あって、俺は先に帰ったんだよ、な?」
何を当たり前のことを、と言いたげな表情で元就は言った。
「貴様がメールをよこしたのであろう。『調子が悪いから先に帰って寝る』と。だから我も帰ってきたまでだ。鞄まで置いていきおって…何事かと思ったわ。…ところで夕飯はまだか。」
「…そうか。いや悪かったな。」
自分の記憶では放課後、元就を待っていた教室で不思議なものに出会い、そしてあの神社に行ったはずだ。元就もなんらかの理由で自分の所在に気がつき、追ってきたのだろう。だが、彼の脳内からはあの神社での出来事に関連する事象が全て消え失せているようだった。元親との記憶の明かな食い違い。
これが、松永によって行われた行動の結果なのだろうか。
…いや、ひょっとすると全て夢だったのかもしれない。
そう思い、リクエスト通りに夕飯でも作るかと席を立ったときだった。
「そういえば元親。我の文房具を知らぬか?」
背を向けた元親に、元就から声が掛けられる。
「文房具?何で?俺しばらくお前からは借りてねぇぞ?」
「そうか…いや、コンパスとカッターがどうにも見当たらなくてな。…どこかで落としたのかもしれぬ。」
元就の言動に、思わず元親の背を冷たい汗が伝う。
―コンパスと、カッター。
それはどちらも夕方、元就が松永に向かって投げつけた物ではなかっただろうか?単なる偶然かもしれない。だけれども奇妙なまでに一致した符号が、偶然ではないと元親の本能に告げていた。
「…俺も知らねぇな。つか、お前なんでそんなにもちあるいてんの?邪魔じゃね?」
「備えあれば憂い無しであろう。色々と」
一体何のための備えなのかは怖くて聞けなかった。
そうして何事も無く、夜は明けた。
何度夢だと思おうとしたことだろう。だけれども、失ったはずの左目の存在が、確かに今はあることが、昨日のあれは事実なのだと証明していた。
「…どうすりゃいいんだか…」
思わず自室で1人、ぼやく。
突然神の嫁などと言われても納得出来るはずもない。だけれども昨日見たあれは紛れもない事実であり、松永と名乗ったあの男も、そして毛玉達から嘘は感じられなかった。しばし悩んで悩んで、考えて、そして決めた。
「…まぁ、俺が悩んでもしょうがねぇよな!!」
そうして勢いよく布団から起き上がる。
元親は、元就が絡まなければ基本的に非常に思い切りの良い、単純な性格であった。
だから悩むのは最も嫌う行為である彼が、悩むの面倒くさいとぶん投げるのも無理はなかった。
そうして元親は部屋を出て階段を下り、リビングに行こうとしたその時、ちょうど通りがかった玄関先でチャイムが鳴った。母は買い物、元就は二階の奥の自室にいる以上、自分が出るしか無いだろう。そう判断した元親は、ドアスコープをのぞきもせずにドアを開けた。
「はい?どちらさ、ま…って」
そうしてすぐに、開けた事を後悔した。
「やぁ、今日も麗しいね。私の花嫁は」
胡散臭いまでに清々しい笑みと共に割烹着に身を包んだ昨日の男、松永。軽やかに手までふるその姿はどう見ても、胡散臭い。
「もとちか よめ」
「よめ うるわしい」
楽しげにキャーキャーいいながらぱたぱたと松永の足元を動き回る黒髪の子供と銀髪の子供。姿形こそ違えど、その姿はどことなく昨日の毛玉、佐吉と竹千代を彷彿とさせる。
「………ええええええええ!?何で!?何でだ!!」
ここが玄関先であるにも関わらず元親は絶叫する。
だが、すぐに我に返る。
神様を自称し、不思議な力を使う彼ならば、元親の自宅を調べることなど造作もないことだろう。
「なに、今日はただの挨拶だよ。…佐吉に竹千代、出しなさい」
「りょうかいした まつなが」
「はあくした まつなが」
そう言った二人はどこに隠し持っていたのかどんと山もりの蕎麦を持ち出した。
「…なんで、そば」
「まつなが つくった」
「そば うまい」
元親の呟きに蕎麦を抱えながらもくるくる回る佐吉と竹千代はとても楽しげだ。だが悲しいかな、彼らは人間の感情には基本的に疎い生き物のようだということを元親は再確認した。
「…いや味の感想は聞いてねぇし」
呆れたように呟きながらも蕎麦を受け取り、棚に移した元親は改めて三人に向き直った。
真っ白な割烹着に身を包んだ中年。
足元で楽しそうにはしゃぐ二人の幼児。
…犯罪者だと思われなくて良かったなぁと元親は思った。
「ふむ、人間は引っ越したときに引っ越し蕎麦を渡すものだと聞いたので作ってみたのだが…間違っていたかね?」
「へ?引っ越し?」
そう元親がつぶやくと蕎麦一式を渡し終えた佐吉と竹千代は長曾我部家の隣家を指さし、こういった。
「まつなが ひっこし」
「よめ となり」
「みそしる さめない」
「まつなが そっけつ」
うんうんと腕を組んで頷く佐吉と竹千代の発言を聞くと、思わずぽかーんと間の抜けた顔をしてしまう。…確か隣にはつい昨日まで鈴木さんご一家が住んでいたはずなのだが一体どうしてしまったのだろうか…。いやそれよりも、混乱して言った一言が原因でこんなことになるとは思わなかった。すみません、鈴木さん。
元親は、昨日までは確かにいたはずのお隣さんに向けて心の中で手を合わせた。
「元親…なんだ一体騒がしい。」
そうして、ようやく玄関先での物音を聞きつけたのか二階から元就が降りてきた。その顔は非常に不機嫌だ。おそらく趣味の時間を邪魔されたからだろうと元親は推測する。
「あ ほそいのだ さきち」
「ほそいのだな たけちよ」
佐吉と竹千代は指をさして二階から降りてきた元就を見る。
その視線にただならぬものを感じた元親は瞬間的に寒気を覚える。
「なんだそこの小さいの…細いからどうしたというのだ。」
傲慢とも取れかねない発言の元就を前に元親はおろおろするが、佐吉と竹千代が投下した爆弾はもっと凄いものだった。
「ほそいの おいしくない」
「でもほそいの アレよりはまし」
ねー、と仲良く同意する元毛玉コンビを見る元就の目がヤバイ。
アレは確実に視線だけで人を殺せる目だ。だが毛玉コンビは焦らない。もとい動じない。
「やっちゃう?」
「やっちゃう?」
そうして二人の目が妖しく輝いた瞬間、これは本格的にやばいと判断した元親は二人を咄嗟に首根っこ掴んで止める。
「…もとちか じゃました」
「…つられた くるしい」
右手に佐吉、左手に竹千代。首根っこを捕まれた二人は非常に居心地悪そうに元親を睨んでくる。
「…頼むから、人んちの玄関でホラー映画も真っ青なグロ展開は勘弁してくれ…」
小声での呟きは恐らくは背後の元就には聞こえなかったが、毛玉コンビと松永の耳にはきちんと届いたようだ。昨日のアレ。音でしか聞こえなかった物の、かなり惨憺たる有様が垣間見えていた。元就自身は無傷で今自分で背後にいるものの、何が起こっていたのか分からない以上、あまり多用しないでほしかった。
「むー おねがい りょうかい」
「うー たけちよ むねん」
そう呟く二人を見届けて元親は二人を床に降ろす。そして背後からは元就が、呆然とした様子で彼らを見つめていた。
「元親、今のは…」
「い、いやー…最近の子供って何するか、わかんねーからよー。いや、まぁお前がなんともなくて良かった!!」
余計な推測が為される前に、ここはもう勢いで誤魔化すしかない。そう思った元親は勢いそのままに捲し立てる。そうして元就が口を開こうかとした瞬間、二人の間に割っている存在があった。物理的な意味で。
「…隣に引っ越してきた者でね。松永久秀という。よろしく頼むよ。この子達は訳あって私が預かっている子供達で同居人だ。」
「たけちよ」
「さきち」
ぺこりとおじぎをする二人は可愛らしいが、中身を知っているとかわいさ半減するな…と元親は思っていた。そうして、関心が元親から目の前の松永に向いたらしい元就は、改めて尋ねた。
「…貴様は元親とは知り合いか?…初対面の人間とは思えぬが。」
それは、見る者が見れば、焦りの感情を大いに含んだ感情だと言うことが理解出来ただろう。最もこの場で理解していたのは松永だけだったが。元就の感情を最も理解していた松永だからこそ、こう言った。
「いやなに。古い知り合いだよ。昔から良くしてもらってるんだ。この子達もね。」
それは元就にとっては爆弾を投下されたようなものだった。
元親は、自分の真横で相対する二人の間に、火花が散ったのを、目撃した。
「…どうにも貴様とは初めて会った気がせぬわ…何であろうな…この腹の底から沸き立つような腹立たしさは…!!」
元就は声を荒げることさえないが、怒りが隠せないことはその場にいる誰もが理解出来た。
「奇遇だねぇ。…私も、君のように腹に一物買ってる人間は、得意じゃないよ。」
対する松永も表面上は笑顔だが目は笑っていない。
長曾我部家の玄関先では、未だかつて無い修羅場が迎えられようとしていた。
「もとちか もてもて?」
「もてもて さされる?」
可愛らしく、小首を傾げて聞いてくる毛玉コンビだが、昨日と同じ言動は全くもって愛らしくない。
「…頼むから、お前ら少し黙ってくれ…」
玄関先で頭を抱える元親が、この場を唯一壊せるような母親の帰還を望むのも無理はないことだった。
○神様が引っ越してきたよ、編。
これから始まるぐだぐだたいむ。
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
@3missiy3をフォロー
うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
@uzumi1250をフォロー
ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
カテゴリー
カウンター