こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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次から九州編に。
そして……新刊3冊目が落ちること確定。
いいんだ、ここで連載するから……1ヶ月前から決まっていた予定なら、急に言うなよ旦那……忘れてたじゃないよ……
そして……新刊3冊目が落ちること確定。
いいんだ、ここで連載するから……1ヶ月前から決まっていた予定なら、急に言うなよ旦那……忘れてたじゃないよ……
*****
数日後に九州行きを控えた黒田官兵衛は、準備を部下に任せて日々のんびりと過ごしていた。
いつもならあんたがやれと言われるのだが、今回は火傷をして療養中という大義名分がある。部屋のあちこちに積み上げてある読んでいなかった本を片っ端から片付け、新たな知識を手に入れた事への満足感に浸っていると。
「官兵衛、官兵衛いるのか!」
部屋の外から大きな佐吉の声。
官兵衛が部屋にこもっているので必然的に佐吉は城内のあちこちに文を届けに行ったり、食事を調達したりと忙しい。おまけに九州行きの荷物まで作ってくれているのだ。几帳面な性格なのできっちりと荷物やら途中の道で必要な物やらを計算して考えてくれる上に、まだ元服していないというのにその仕事は確実すぎて。周りの大人たちに話を聞きながら着実に仕事を進めていく姿は、将来彼がどのような大人になるかを周囲に見せてくれるのだが。
それと同時にあちこちで面倒ごとに巻き込まれて、それの解決を官兵衛に求めてくるのだ。さて今度はどんな厄介ごとと共に帰ってきたのやら、ようやく新しい皮膚が張り始めた部分に軟膏を塗りながらそんなことを思っているとおかしな事に気がついた。
足音が一人のものではない。
あの友達の少ない佐吉が官兵衛の元に人を連れてくるとは。軽く驚き、だがだらだらと寝そべりながら佐吉の到着を待っていると、いきなり襖が大きな音を立てて開かれた。一気に差し込んでくる日の光は書物の大敵。なので文句を言おうとして、目についたのは佐吉と同じくらいの背丈の影だった。
先程頼んだ握り飯が入っている籠を佐吉はちゃんと持っており、ただ遊んできたわけではないことがわかる。なので大声を出したり廊下を走った佐吉を叱るのをやめようと思っていたら、籠を官兵衛の方へと突き出しながら胸を張ってこう言ってきた。
「官兵衛、私も友達ができたぞ!」
「友達っていうか……先に襖を閉めろ。何度言えば覚えるんだ……」
「空気の入れ換えは必要だと半兵衞様は言っていた」
「あいつの言うことは聞くのかよ。で、そのガキはどこのどいつだ?」
「ガキではない、儂は徳川家康だ!」
佐吉に手を引かれた同じくらいの背丈の子供……いや、名乗っている名前が正しいのならば青年といったほうがいいだろうか。立てた髪の毛の分だけ佐吉より大きいが、だいぶ年長のはずだというのにこの二人並ぶと同年代の仲良しにしか見えない感じはどうなのだろうか。
黄の戦装束を身に纏い、佐吉以上に威張ってみせる姿は分不相応としかいいようがない。
「徳川家康といえば……半兵衛の奴が人質として大阪城に入るって言ってたな」
「儂は人質ではない、秀吉とは同盟を結んだのだ」
「秀吉様と呼べ!」
「人質だろうが同盟だろうが小生にはどうでもいいんだな……ま、とにかく部屋に入れや」
本が傷むし、廊下で大きな声を出されたら官兵衛が周囲の人間に怒られるのだ。
戦国最強本多忠勝の力を手に入れるために、徳川家を同盟という名目で支配下に置くということは知っていた。その徳川家康と佐吉が何故知り合ったのかのかはわからないが、満面の笑顔の佐吉だけではなく家康もまんざらではないらしい。
二人仲良く手を繋いで部屋に入ってきただけではなく、家康の目は佐吉を宝物のように愛おしんでいる。策謀の中で育ち続け、強い国に従うことで生き延びてきた家康。そんな彼にとって、佐吉のような真っ直ぐな性根の人物はようやく見つけた本音をぶつけ合える存在なのだろう。
つくづく佐吉は身分の高い人間や歴戦の将に好かれやすいらしい。
「佐吉、友達になったんなら茶でも煎れてやれ」
「先程飲んできた。家康は私の煎れた茶を美味いと言ってくれたのだぞ!」
「よかったな……で、小生の茶は?」
「冷めた茶でよければ持ってきた。私と家康の握り飯もあるのだ、一人で食べるな」
佐吉が床に置いた籠には、竹皮に包まれた大量の握り飯と水筒に入った茶が詰め込まれていた。
いそいそとそれを籠から出しながら、佐吉は家康に懇切丁寧に説明をしてやっている。
「これは塩むすびということになっているが、あまり味がついていない。なのでこの漬け物と一緒に食べるのだ。貴様と私の分はこの小さいので、官兵衛のは大きいのだ、覚えておけ」
「なあ佐吉、お前はこの男の小姓なのだろう? だというのに何故呼び捨てにしているのだ」
「官兵衛は官兵衛だ、主ではない。私は官兵衛に色々習うためにここにいるのだ、それに官兵衛もこのままでいいと言っている」
「よくわからぬが……お前たちはそれでいいのだな」
佐吉から受け取った小さな塩むすびにかぶりつきながら、家康はそう独りごちる。
確かに生まれた時から家臣達に傅かれているにはわかりづらいものなのかもしれない。官兵衛は佐吉を小姓だと思った事はないし、互いに得意な部分で支え合ってこの城で暮らしているようなものなのだ。
一応半兵衛から預かったので公式の場では部屋付きの小姓としての扱いをしているが、それは佐吉もちゃんと理解している。
「確かに塩気のない握り飯だな…………だがなかなか美味い」
「官兵衛が部屋を出ようとしないのでな、私が飯を運んでいるのだ」
「包帯をしているが、戦で怪我でもしたのか?」
「違う、火の玉にぶつかったのだ」
「…………大阪城にはもののけがいるのか…………」
おかしな理解の仕方をしているようだが、頭が悪いわけではないらしい。
強き者に従い国を守ってきたというのに卑屈でもなく、なによりただの小姓である三成の言葉を素直に受け止めているのは器の大きな青年である証。自分より立場が下の者の言葉を聞けぬ気位の高い者は例外なく破滅しているし、周囲を見ることができない者は言うまでもない。
彼が成長すれば、きっと面白い男になるだろう。
とはいえ、この年齢で佐吉とそう変わらない背丈というのは大きな欠点ではあるだろう。人は見た目に左右され態度を変える生き物だ。子供のような君主に仕える自分を恥じる者が出てきてもおかしくないはず。
肩を並べて仲良くしている姿は可愛らしいといえば可愛らしいのだが、これでは戦場で馬鹿にされるのは目に見えている。まあ実際に馬鹿にされているのだろうということは官兵衛でなくともわかるのだが。
家康の実際の年齢を知らない佐吉には、家康は自分と同じ年頃なのに君主として頑張っているように見えるのだろう。秀吉を尊敬し、半兵衞の薫陶を受け。官兵衛の側ですごしていることで上に立つ者の苦労を見続けている佐吉には、家康は尊敬すべき存在なのだ。
その証拠に、官兵衛に対する口調よりも遙かに話し言葉が柔らかい。
「火の玉と戦う男か……面白い男なのだな、お前は」
「官兵衛は面白いのではなくおかしな男だ。それよりも家康、貴様はずっとこの城にいるのか?」
「そうなる……らしいな」
「そうか、私と官兵衛はもうすぐ九州に行くのだ。官兵衛の城の工事を見に行くことになっている」
「では儂は佐吉が帰ってくるまで会えぬのだな」
「帰ってきたらまた遊べばいいのだ!」
佐吉にとって家康は『遊ぶ』事ができる友達。
しかし家康の方はどう思っているのやら。見た目は幼いが、その所作は成長しつつある青年のもの。佐吉を見る目に宿るのは、子供を愛おしむ子供のような慈愛と。
その奥に功名に隠された熱情。
昔からおかしな輩に懸想されていたというのは半兵衞から聞いていたが、まさか一国の主の心まで掴むとは。とんでもない子供を預かってしまったことを再度認識しながら、官兵衛は二人の『子供』が仲睦まじそうに肩を寄せ合う姿を気付かれないようにじっと観察し続けたのだった。
三成は最初の頃に比べて、随分動きが良くなった。
官兵衛の鉄鎖が地面を叩きつけた瞬間には官兵衛の死角へ移動し、即座に木刀での一撃を叩き込んでこようとする。しかし官兵衛にとってそれは予測できて当たり前の攻撃、もう片方の腕に絡めておいた鎖で佐吉の非力な一撃を受け止め、そのまま不安定な姿勢になった佐吉の体を地面へと叩きつける。
以前だったら最初の官兵衛の鎖の一撃を食らうだけだったというのに。
「おい大丈夫か?」
「少し痛い……貴様は馬鹿力すぎるのだ」
「そんだけ減らず口を叩けるのなら平気だな」
「いつか貴様に一撃喰らわせてやる……」
「あのな、お前さんが今のまま努力したら、小生なんてあっという間に膾にされちまうぞ」
「それはどういう意味だ?」
大阪城の中庭での鍛錬はいつものことだったが、今日は見学者が一人。
まだ地面に寝転がったままの佐吉を案じながらも、官兵衛の言葉に興味を抱いたのだろう。近くにあった石に腰掛けていた家康は、佐吉に駆け寄りながら官兵衛に疑問をぶつけてきたのだった。
「佐吉は……儂から見ても非力だと思うのだが……」
「私は非力ではない! 背が伸びぬだけだ!」
「つまり背が伸びりゃ、こいつはもう少し使い物になるって事だ。少し長い話になるが……佐吉はともかく家康、時間あるのか?」
「お前たちがいなくなったら儂はただこの城にいるだけだ、逆に話をしてもらった方が暇をつぶせる。そうだな、忠勝」
ずっと家康の側で待機している鋼の巨体が言葉もなく頷くのを確認し、官兵衛はようやく立ち上がった佐吉の体の傷を目で確認しながら二人と忠勝に持論を語り始めた。明日には佐吉と九州に発つのだ、人質としてここに一人で残る家康の望みはできるだけ叶えてやりたい。
城主には絶対服従な者ばかりの大阪城ではあるが、人質に優しくしてやる義務などないという態度を取る者がほとんどだろう。自分たちがいない間家康がどのような扱いを受けるか、考えるだけで気分が重くなる。
「小生は佐吉がどこから打ち込んでくるのかを予測しているから反応できる。だがな、それができない相手ならば姿勢を崩すかもしれんな。確かに佐吉……お前さんは非力極まりないが、早さだけはなかなかのものだ」
「そうなのか!?」
「鍛え続けりゃ、相手が斬られたと思う前に相手の首を刎ねることくらいできるようになるかもしれん。せいぜい鍛える事だな……戦国最強殿がいてくれるんだ、教えてもらうことは山のようにあるだろう?」
「それはいい! 忠勝、佐吉が戻ってきたら稽古の相手をしてやってくれ!」
「………………!!……!」
家康に友達ができたのが嬉しかったのか、嬉しそうに口元を緩める本多忠勝。
まだ体の火傷は癒えきっていないし、体を動かすと皮膚が引き攣れたような感触に違和感を感じてしょうがないのだが。表情をほころばせる佐吉と、愛しい人の自分のできることをしてやりたいと心を砕く家康の姿は何故だろうか。
官兵衛の心をざわめかせて仕方がないのだ。
苛立つというのとは違う。
佐吉に友人が増えるのはいいことだと思っているし、彼を鍛えてくれる存在が増えるのもありがたい。半兵衞から佐吉を育ててくれと頼まれたのだ、彼を誰が見ても優秀だと褒め称えるほどにしなければ意味がない。
ならばどうして、佐吉と家康が仲良くしているだけで胸が焼け焦げるような焦燥感を感じるのか。
「戦国最強に稽古を付けてもらえるのか……」
「忠勝は優しいのでな、きっと大丈夫だ」
「そうか、だが私は官兵衛がいい」
「な、なんだと?」
佐吉は袴についた汚れを手で払いながら、自分より上にある官兵衛の顔を見ながら答える。
「優しいだけでは駄目なのだ。官兵衛は厳しいが、その分だけ私は学んでいると感じられる。だから私は官兵衛がいい」
「そういうものなのか……」
「だが戦国最強と手合わせができるのはありがたい。官兵衛との稽古の合間に、相手をしてもらえればありがたいとは思う……もちろん、家康優先だとは思うが」
控えめに忠勝に願う佐吉の姿に、戦国最強の呼び名を持つ男の顔が笑み崩れた。
鋼の鎧が擦れ合わさる独特の音をたてながら佐吉に向けて手を伸ばし、その小さな頭を注意深く撫でていく。
きっと今の佐吉の言葉は、忠勝を何よりも喜ばせたのだろう。
ただ最強の相手だから稽古を付けて欲しいと言ってくるのではなく、自分の師を尊重した上で忠勝に時間があるときでいいから時々相手をして欲しいと頼んでくる。忠勝にとって一番大切な主君である家康のことも尊重した発言なのだ、それは。
普段は周囲の空気を読まないくせに、こういう時は話した相手を喜ばせる。
佐吉のそんなところが一部の人間を惹きつけるのだろうが。
戦国最強までも味方に付けるとは、佐吉恐るべし。
まだ違和感の残る体で鎖を手に戻しながら、戦国最強に頭を撫でられくすぐったそうにしている佐吉を見ながら。
九州で彼に何を教えるべきか、考える官兵衛であった。
「佐吉は素直でいいな……忠勝、お前も気に入ったのだろう?」
「…………!!」
「そうだな、佐吉は儂の友達になってくれた。それだけでも感謝すべきだ」
今までの『友達』は皆、家康から逃げ出すか勝手に壊れてしまったというのに。
あんなに素直に近づいてきて、友達になろうと言ってくれたのは佐吉が始めてだった。
小さくて可愛らしい佐吉と二人きりで『遊びたい』のだが、それはあの男が決して許さないだろう。
佐吉の師であり守護者であるあの男を、今は敵に回してはいけない。
家康の望みが叶うその時まで佐吉を手に入れるのは少しだけ待つが、それまでにやっておかなければならないことが山のようにあるのだ。
あの澄んだ瞳を汚す日を待ち遠しく思いながら忠勝を後ろに従え歩いていると、幼い頃より側にいてくれる一番の忠臣が心配げに声を掛けてきた。
「どうした忠勝?」
「………………………」
「ああわかっている、佐吉は大切にするつもりだ。
前のように壊して捨てたりはせぬ。
だが……裸に剥いて侍らせるのは楽しいかもしれぬな……」
くすくすと笑いながらそう言うと、後ろから慌てるかのような鎧が鳴る音。
愛おしいと思う者ほど壊したくなる。
そんな自分の悪癖を諫めることなく半ば諦めているであろう忠勝を見ながら家康は思った。
彼も官兵衛のように厳しくしてくれれば、家康がこうなることはなかったかもしれないのに。
しかし、もう家康は人を虐げることで得られる快楽があるということを知ってしまった。愛しい者の悲鳴程耳を喜ばせるものはないのだ、きっと佐吉の泣き叫ぶ声も家康の胸をときめかせてくれることだろう。
「…………戻ってくる時が楽しみだな」
一見無邪気に見える笑みで意気揚々と大阪城の庭を歩きながら。
日の光の明るさに照らし出された影のような、暗い考えに身を浸す家康がそこにはいた。
_______________________________________
久々かんべえさまといっしょ。
ということでこんな感じであんな感じですw
黒権現書いてみたかったの……
いつもならあんたがやれと言われるのだが、今回は火傷をして療養中という大義名分がある。部屋のあちこちに積み上げてある読んでいなかった本を片っ端から片付け、新たな知識を手に入れた事への満足感に浸っていると。
「官兵衛、官兵衛いるのか!」
部屋の外から大きな佐吉の声。
官兵衛が部屋にこもっているので必然的に佐吉は城内のあちこちに文を届けに行ったり、食事を調達したりと忙しい。おまけに九州行きの荷物まで作ってくれているのだ。几帳面な性格なのできっちりと荷物やら途中の道で必要な物やらを計算して考えてくれる上に、まだ元服していないというのにその仕事は確実すぎて。周りの大人たちに話を聞きながら着実に仕事を進めていく姿は、将来彼がどのような大人になるかを周囲に見せてくれるのだが。
それと同時にあちこちで面倒ごとに巻き込まれて、それの解決を官兵衛に求めてくるのだ。さて今度はどんな厄介ごとと共に帰ってきたのやら、ようやく新しい皮膚が張り始めた部分に軟膏を塗りながらそんなことを思っているとおかしな事に気がついた。
足音が一人のものではない。
あの友達の少ない佐吉が官兵衛の元に人を連れてくるとは。軽く驚き、だがだらだらと寝そべりながら佐吉の到着を待っていると、いきなり襖が大きな音を立てて開かれた。一気に差し込んでくる日の光は書物の大敵。なので文句を言おうとして、目についたのは佐吉と同じくらいの背丈の影だった。
先程頼んだ握り飯が入っている籠を佐吉はちゃんと持っており、ただ遊んできたわけではないことがわかる。なので大声を出したり廊下を走った佐吉を叱るのをやめようと思っていたら、籠を官兵衛の方へと突き出しながら胸を張ってこう言ってきた。
「官兵衛、私も友達ができたぞ!」
「友達っていうか……先に襖を閉めろ。何度言えば覚えるんだ……」
「空気の入れ換えは必要だと半兵衞様は言っていた」
「あいつの言うことは聞くのかよ。で、そのガキはどこのどいつだ?」
「ガキではない、儂は徳川家康だ!」
佐吉に手を引かれた同じくらいの背丈の子供……いや、名乗っている名前が正しいのならば青年といったほうがいいだろうか。立てた髪の毛の分だけ佐吉より大きいが、だいぶ年長のはずだというのにこの二人並ぶと同年代の仲良しにしか見えない感じはどうなのだろうか。
黄の戦装束を身に纏い、佐吉以上に威張ってみせる姿は分不相応としかいいようがない。
「徳川家康といえば……半兵衛の奴が人質として大阪城に入るって言ってたな」
「儂は人質ではない、秀吉とは同盟を結んだのだ」
「秀吉様と呼べ!」
「人質だろうが同盟だろうが小生にはどうでもいいんだな……ま、とにかく部屋に入れや」
本が傷むし、廊下で大きな声を出されたら官兵衛が周囲の人間に怒られるのだ。
戦国最強本多忠勝の力を手に入れるために、徳川家を同盟という名目で支配下に置くということは知っていた。その徳川家康と佐吉が何故知り合ったのかのかはわからないが、満面の笑顔の佐吉だけではなく家康もまんざらではないらしい。
二人仲良く手を繋いで部屋に入ってきただけではなく、家康の目は佐吉を宝物のように愛おしんでいる。策謀の中で育ち続け、強い国に従うことで生き延びてきた家康。そんな彼にとって、佐吉のような真っ直ぐな性根の人物はようやく見つけた本音をぶつけ合える存在なのだろう。
つくづく佐吉は身分の高い人間や歴戦の将に好かれやすいらしい。
「佐吉、友達になったんなら茶でも煎れてやれ」
「先程飲んできた。家康は私の煎れた茶を美味いと言ってくれたのだぞ!」
「よかったな……で、小生の茶は?」
「冷めた茶でよければ持ってきた。私と家康の握り飯もあるのだ、一人で食べるな」
佐吉が床に置いた籠には、竹皮に包まれた大量の握り飯と水筒に入った茶が詰め込まれていた。
いそいそとそれを籠から出しながら、佐吉は家康に懇切丁寧に説明をしてやっている。
「これは塩むすびということになっているが、あまり味がついていない。なのでこの漬け物と一緒に食べるのだ。貴様と私の分はこの小さいので、官兵衛のは大きいのだ、覚えておけ」
「なあ佐吉、お前はこの男の小姓なのだろう? だというのに何故呼び捨てにしているのだ」
「官兵衛は官兵衛だ、主ではない。私は官兵衛に色々習うためにここにいるのだ、それに官兵衛もこのままでいいと言っている」
「よくわからぬが……お前たちはそれでいいのだな」
佐吉から受け取った小さな塩むすびにかぶりつきながら、家康はそう独りごちる。
確かに生まれた時から家臣達に傅かれているにはわかりづらいものなのかもしれない。官兵衛は佐吉を小姓だと思った事はないし、互いに得意な部分で支え合ってこの城で暮らしているようなものなのだ。
一応半兵衛から預かったので公式の場では部屋付きの小姓としての扱いをしているが、それは佐吉もちゃんと理解している。
「確かに塩気のない握り飯だな…………だがなかなか美味い」
「官兵衛が部屋を出ようとしないのでな、私が飯を運んでいるのだ」
「包帯をしているが、戦で怪我でもしたのか?」
「違う、火の玉にぶつかったのだ」
「…………大阪城にはもののけがいるのか…………」
おかしな理解の仕方をしているようだが、頭が悪いわけではないらしい。
強き者に従い国を守ってきたというのに卑屈でもなく、なによりただの小姓である三成の言葉を素直に受け止めているのは器の大きな青年である証。自分より立場が下の者の言葉を聞けぬ気位の高い者は例外なく破滅しているし、周囲を見ることができない者は言うまでもない。
彼が成長すれば、きっと面白い男になるだろう。
とはいえ、この年齢で佐吉とそう変わらない背丈というのは大きな欠点ではあるだろう。人は見た目に左右され態度を変える生き物だ。子供のような君主に仕える自分を恥じる者が出てきてもおかしくないはず。
肩を並べて仲良くしている姿は可愛らしいといえば可愛らしいのだが、これでは戦場で馬鹿にされるのは目に見えている。まあ実際に馬鹿にされているのだろうということは官兵衛でなくともわかるのだが。
家康の実際の年齢を知らない佐吉には、家康は自分と同じ年頃なのに君主として頑張っているように見えるのだろう。秀吉を尊敬し、半兵衞の薫陶を受け。官兵衛の側ですごしていることで上に立つ者の苦労を見続けている佐吉には、家康は尊敬すべき存在なのだ。
その証拠に、官兵衛に対する口調よりも遙かに話し言葉が柔らかい。
「火の玉と戦う男か……面白い男なのだな、お前は」
「官兵衛は面白いのではなくおかしな男だ。それよりも家康、貴様はずっとこの城にいるのか?」
「そうなる……らしいな」
「そうか、私と官兵衛はもうすぐ九州に行くのだ。官兵衛の城の工事を見に行くことになっている」
「では儂は佐吉が帰ってくるまで会えぬのだな」
「帰ってきたらまた遊べばいいのだ!」
佐吉にとって家康は『遊ぶ』事ができる友達。
しかし家康の方はどう思っているのやら。見た目は幼いが、その所作は成長しつつある青年のもの。佐吉を見る目に宿るのは、子供を愛おしむ子供のような慈愛と。
その奥に功名に隠された熱情。
昔からおかしな輩に懸想されていたというのは半兵衞から聞いていたが、まさか一国の主の心まで掴むとは。とんでもない子供を預かってしまったことを再度認識しながら、官兵衛は二人の『子供』が仲睦まじそうに肩を寄せ合う姿を気付かれないようにじっと観察し続けたのだった。
三成は最初の頃に比べて、随分動きが良くなった。
官兵衛の鉄鎖が地面を叩きつけた瞬間には官兵衛の死角へ移動し、即座に木刀での一撃を叩き込んでこようとする。しかし官兵衛にとってそれは予測できて当たり前の攻撃、もう片方の腕に絡めておいた鎖で佐吉の非力な一撃を受け止め、そのまま不安定な姿勢になった佐吉の体を地面へと叩きつける。
以前だったら最初の官兵衛の鎖の一撃を食らうだけだったというのに。
「おい大丈夫か?」
「少し痛い……貴様は馬鹿力すぎるのだ」
「そんだけ減らず口を叩けるのなら平気だな」
「いつか貴様に一撃喰らわせてやる……」
「あのな、お前さんが今のまま努力したら、小生なんてあっという間に膾にされちまうぞ」
「それはどういう意味だ?」
大阪城の中庭での鍛錬はいつものことだったが、今日は見学者が一人。
まだ地面に寝転がったままの佐吉を案じながらも、官兵衛の言葉に興味を抱いたのだろう。近くにあった石に腰掛けていた家康は、佐吉に駆け寄りながら官兵衛に疑問をぶつけてきたのだった。
「佐吉は……儂から見ても非力だと思うのだが……」
「私は非力ではない! 背が伸びぬだけだ!」
「つまり背が伸びりゃ、こいつはもう少し使い物になるって事だ。少し長い話になるが……佐吉はともかく家康、時間あるのか?」
「お前たちがいなくなったら儂はただこの城にいるだけだ、逆に話をしてもらった方が暇をつぶせる。そうだな、忠勝」
ずっと家康の側で待機している鋼の巨体が言葉もなく頷くのを確認し、官兵衛はようやく立ち上がった佐吉の体の傷を目で確認しながら二人と忠勝に持論を語り始めた。明日には佐吉と九州に発つのだ、人質としてここに一人で残る家康の望みはできるだけ叶えてやりたい。
城主には絶対服従な者ばかりの大阪城ではあるが、人質に優しくしてやる義務などないという態度を取る者がほとんどだろう。自分たちがいない間家康がどのような扱いを受けるか、考えるだけで気分が重くなる。
「小生は佐吉がどこから打ち込んでくるのかを予測しているから反応できる。だがな、それができない相手ならば姿勢を崩すかもしれんな。確かに佐吉……お前さんは非力極まりないが、早さだけはなかなかのものだ」
「そうなのか!?」
「鍛え続けりゃ、相手が斬られたと思う前に相手の首を刎ねることくらいできるようになるかもしれん。せいぜい鍛える事だな……戦国最強殿がいてくれるんだ、教えてもらうことは山のようにあるだろう?」
「それはいい! 忠勝、佐吉が戻ってきたら稽古の相手をしてやってくれ!」
「………………!!……!」
家康に友達ができたのが嬉しかったのか、嬉しそうに口元を緩める本多忠勝。
まだ体の火傷は癒えきっていないし、体を動かすと皮膚が引き攣れたような感触に違和感を感じてしょうがないのだが。表情をほころばせる佐吉と、愛しい人の自分のできることをしてやりたいと心を砕く家康の姿は何故だろうか。
官兵衛の心をざわめかせて仕方がないのだ。
苛立つというのとは違う。
佐吉に友人が増えるのはいいことだと思っているし、彼を鍛えてくれる存在が増えるのもありがたい。半兵衞から佐吉を育ててくれと頼まれたのだ、彼を誰が見ても優秀だと褒め称えるほどにしなければ意味がない。
ならばどうして、佐吉と家康が仲良くしているだけで胸が焼け焦げるような焦燥感を感じるのか。
「戦国最強に稽古を付けてもらえるのか……」
「忠勝は優しいのでな、きっと大丈夫だ」
「そうか、だが私は官兵衛がいい」
「な、なんだと?」
佐吉は袴についた汚れを手で払いながら、自分より上にある官兵衛の顔を見ながら答える。
「優しいだけでは駄目なのだ。官兵衛は厳しいが、その分だけ私は学んでいると感じられる。だから私は官兵衛がいい」
「そういうものなのか……」
「だが戦国最強と手合わせができるのはありがたい。官兵衛との稽古の合間に、相手をしてもらえればありがたいとは思う……もちろん、家康優先だとは思うが」
控えめに忠勝に願う佐吉の姿に、戦国最強の呼び名を持つ男の顔が笑み崩れた。
鋼の鎧が擦れ合わさる独特の音をたてながら佐吉に向けて手を伸ばし、その小さな頭を注意深く撫でていく。
きっと今の佐吉の言葉は、忠勝を何よりも喜ばせたのだろう。
ただ最強の相手だから稽古を付けて欲しいと言ってくるのではなく、自分の師を尊重した上で忠勝に時間があるときでいいから時々相手をして欲しいと頼んでくる。忠勝にとって一番大切な主君である家康のことも尊重した発言なのだ、それは。
普段は周囲の空気を読まないくせに、こういう時は話した相手を喜ばせる。
佐吉のそんなところが一部の人間を惹きつけるのだろうが。
戦国最強までも味方に付けるとは、佐吉恐るべし。
まだ違和感の残る体で鎖を手に戻しながら、戦国最強に頭を撫でられくすぐったそうにしている佐吉を見ながら。
九州で彼に何を教えるべきか、考える官兵衛であった。
「佐吉は素直でいいな……忠勝、お前も気に入ったのだろう?」
「…………!!」
「そうだな、佐吉は儂の友達になってくれた。それだけでも感謝すべきだ」
今までの『友達』は皆、家康から逃げ出すか勝手に壊れてしまったというのに。
あんなに素直に近づいてきて、友達になろうと言ってくれたのは佐吉が始めてだった。
小さくて可愛らしい佐吉と二人きりで『遊びたい』のだが、それはあの男が決して許さないだろう。
佐吉の師であり守護者であるあの男を、今は敵に回してはいけない。
家康の望みが叶うその時まで佐吉を手に入れるのは少しだけ待つが、それまでにやっておかなければならないことが山のようにあるのだ。
あの澄んだ瞳を汚す日を待ち遠しく思いながら忠勝を後ろに従え歩いていると、幼い頃より側にいてくれる一番の忠臣が心配げに声を掛けてきた。
「どうした忠勝?」
「………………………」
「ああわかっている、佐吉は大切にするつもりだ。
前のように壊して捨てたりはせぬ。
だが……裸に剥いて侍らせるのは楽しいかもしれぬな……」
くすくすと笑いながらそう言うと、後ろから慌てるかのような鎧が鳴る音。
愛おしいと思う者ほど壊したくなる。
そんな自分の悪癖を諫めることなく半ば諦めているであろう忠勝を見ながら家康は思った。
彼も官兵衛のように厳しくしてくれれば、家康がこうなることはなかったかもしれないのに。
しかし、もう家康は人を虐げることで得られる快楽があるということを知ってしまった。愛しい者の悲鳴程耳を喜ばせるものはないのだ、きっと佐吉の泣き叫ぶ声も家康の胸をときめかせてくれることだろう。
「…………戻ってくる時が楽しみだな」
一見無邪気に見える笑みで意気揚々と大阪城の庭を歩きながら。
日の光の明るさに照らし出された影のような、暗い考えに身を浸す家康がそこにはいた。
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久々かんべえさまといっしょ。
ということでこんな感じであんな感じですw
黒権現書いてみたかったの……
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
@3missiy3をフォロー
うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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